国土交通省調査、2月建設受注、海外工事の落ち込み響き総額は3.3%減少も民間工事は堅調維持

令和7年2月における建設業界大手50社の受注総額は1兆2,799億円を記録しました。これは前年同月と比較すると3.3%の減少となり、3ヶ月ぶりのマイナス成長となりました。国内工事は民間工事が微増したものの、公共工事の落ち込みが響き、海外工事も大幅に減少したことが全体の減少要因となっています。

国内工事の詳細分析
国内工事の受注総額は1兆2,590億円で、前年同月比1.3%減となりました。
民間工事は8,434億円(前年同月比0.5%増)と3ヶ月連続のプラス成長を維持しています。
業種別に見ると以下のような特徴が見られます。
・製造業: 3,150億円(前年同月比7.7%増)
工場・発電所関連の受注が1,867億円と大きく貢献しています。
・非製造業: 5,284億円(前年同月比3.3%減)
特に注目すべき業種の動向
・金融業・保険業: 578億円(前年同月比122.2%増)
著しい伸びを記録しました。事務所・庁舎関連の受注が540億円を超え、主要な牽引力となっています。
・卸売業・小売業: 398億円(前年同月比333.0%増)
驚異的な伸び率を示しました。倉庫・流通施設を中心に受注が急増しています。
・運輸業・郵便業: 537億円(前年同月比54.7%減)
大幅に減少しました。鉄道関連工事の減少が影響しています。
・不動産業: 1,624億円(前年同月比14.7%減)
住宅や商業施設関連の受注が減少しています。
公共工事の機関別分析
公共工事は3,685億円(前年同月比7.9%減)と減少に転じました。発注機関別の内訳は以下の通りです。
・国の機関: 2,637億円(前年同月比17.6%減)
・独立行政法人: 228億円(前年同月比31.5%増)
・政府関連企業: 667億円(前年同月比39.4%減)
・国: 1,742億円(前年同月比9.5%減)
地方の機関: 1,048億円(前年同月比30.7%増)
・都道府県: 196億円(前年同月比100.6%増)
・市区町村: 511億円(前年同月比40.7%増)
・地方公営企業: 117億円(前年同月比19.6%減)
・地方その他: 224億円(前年同月比14.6%増)
工事種類別の傾向
工事種類別に見ると、建築工事は8,355億円(前年同月比4.9%増)と好調である一方、土木工事は4,444億円(前年同月比15.7%減)と大きく落ち込みました。
■建築工事の内訳
・事務所・庁舎: 2,486億円(前年同月比61.5%増)
・住宅: 2,329億円(前年同月比93.4%増)
・工場・発電所: 2,329億円(前年同月比93.4%増)
■土木工事の内訳
・道路: 230億円(前年同月比50.4%増)
・鉄道: 548億円(前年同月比30.4%減)
・治山・治水: 310億円(前年同月比32.1%減)
海外工事の状況
海外工事は208億円と前年同月比56.7%の大幅減少となりました。これは3ヶ月ぶりの減少です。特に建築分野が80億円(前年同月比78.6%減)と大きく減少し、土木分野も127億円(前年同月比22.8%増)と増加はしたものの全体をカバーするには至りませんでした。
地域別の受注動向
地域別で見ると(令和7年1月のデータ)、関東が5,462億円と最も多く、次いで中部(1,424億円)、近畿(1,362億円)となっています。特に北海道(80.4%増)と中部(76.1%増)で大きな伸びが見られました。一方、中国(18.5%減)や北陸(12.1%減)では減少しています。
今後の展望と業界動向
令和5年度通年では前年度比8.8%増と好調だった建設受注ですが、令和7年に入り一部に減速感が見られます。しかし、金融業や卸売・小売業からの発注増加など、業種による差が明確になっています。
建築工事の堅調さと土木工事の減少という対照的な状況は、民間設備投資に回復の兆しがある一方で、公共投資には一部慎重な姿勢が見られることを示唆しています。特に事務所・庁舎や住宅関連の受注増加は、企業の設備投資意欲や住宅需要に回復傾向があることを示しています。
今後は、国の経済対策や地方創生関連の予算執行状況、また民間企業の設備投資計画などが建設工事受注の動向に影響を与えると考えられます。引き続き業種別、地域別の動向を注視する必要があるでしょう。
出典情報
国土交通省リリース,令和7年2月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果,https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001289.html