AIを活用したコンクリート打継面評価技術を開発-打継面処理程度の即時・定量評価を実現-

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、ダムなどのコンクリート構造物の施工において、AI画像認識技術を活用し、コンクリート打継面をタブレット端末のカメラで撮影した画像から定量的かつリアルタイムに把握することができるコンクリート打継面評価技術を開発しました。本技術の適用により、構造物の施工品質を左右するコンクリート打継面の処理※1程度が、大型の特殊計測機材を使用せずに、タブレット端末で即時に確認できるため、品質管理の高度化や省力化が図れ、建設工事の更なる生産性向上が見込まれます。
目次
概要
コンクリートダムの施工では、コンクリートを垂直方向に打ち継いで堤体を構築していき、供用時にかかる水圧に耐える構造とするために、打ち継いだコンクリートを一体化していくことが重要となります。コンクリートの打ち継ぎ工程では、先行して打設したコンクリートの表面にレイタンス※2と呼ばれる脆弱な薄層が発生することがあり、新たにコンクリートを打設する前にレイタンスを除去するなどして水平打継面処理を行います。この打継面処理が不十分だった場合、コンクリートの一体化が困難となり、ひび割れや漏水などの要因にもなり、施工管理においては打継面処理程度の評価・判定が極めて重要となります。これまでは監督員や施工管理者が目視で打継面処理程度を確認・評価していましたが、評価結果にばらつきが生じる可能性があり、属人性を解消しつつ定量的な評価を可能にする新たな品質管理手法が求められていました。
そこで当社は、タブレット端末のカメラで撮影した打継面の画像を基に、AI画像認識技術を活用して打継面処理程度を定量的かつ即時に評価することができる技術を開発し、ダム建設現場でその効果を確認しました。
評価手順(図1参照)
①タブレット端末に搭載されたカメラでコンクリート打継面を撮影。
②撮影した画像を任意の大きさの格子(メッシュ)に分割し、AI画像認識により格子ごとに打継面の処理程度を「良(浅め・中間・深め)」、「不良」と色分けして判定。
③分割したすべての格子での判定結果を1秒程度で撮影画像上に重畳表示※3。
特長
タブレット端末を用いて現地でリアルタイムな評価・判定が可能
施工管理者などが携帯するiPadなどのタブレット端末に事前にインストールされたアプリケーションを使ってAIが撮影画像の自動解析を行い、打継面の処理程度を即時に評価・判定します。これにより、処理程度の定量的な評価が建設現場でリアルタイムに行えるだけでなく、判定結果や位置情報等を端末内に保存できるため、トレーサビリティも確保できます。
事前の深層学習によりAI画像解析の高精度化を実現(図2参照)
本技術の開発にあたって事前に行ったAI深層学習では、打継面処理程度の評価・判定において、これまでに当社が開発したラインレーザーによる光切断法を活用して得られた約10,000ケースのデータ(平均粗さ〈Ra〉、撮影画像、天候など)を使用しています。これにより、撮影画像から推定した平均粗さを基に打継面処理程度の定量的な評価が可能となりました。また、評価区分については、対象となる建設現場の要求水準に合わせた区分に変更でき、格子ごとに「良」・「不良」の判定や処理程度を色別で分類した表示が可能です。
専用計測機材が不要で他のコンクリート工事にも適用可能
本技術はタブレット端末上のシステムであり、専用の計測機材や画像解析用の機材は不要です。そのため、運用にかかる手間を大幅に軽減でき、ダム工事だけでなく他の工種でのコンクリート打継面処理程度の評価・判定にも適用が可能です。
今後当社は、ダム建設現場で本技術の実証を継続し、データ蓄積やアプリケーションの機能改善により生産プロセスのDXを推進することで品質管理の高度化を実現するとともに、建設現場での検査等に要する時間や手間の削減など更なる生産性向上を図り、建設現場における働き方変革に取り組んでまいります。


※1打継面の処理
打継面の処理とは、先行打設して硬化したコンクリートに対して、新しいコンクリートを打設する際に、コンクリート表面のレイタンスや緩んだ骨材をハイウォッシャーなどで除去する処理。
※2レイタンス
レイタンスとは、コンクリートを打設した後にコンクリート表面に形成される、セメントや骨材などの微細な粒子が含まれた脆弱な薄層。
※3重畳表示
重畳表示とは、コンピュータのグラフィックス技術のひとつで、複数の画像を重ねて表示する方法で、背景の画像の上に、透明度を持った別の画像を重ねる処理。

DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。
出典情報など
出典:大成建設株式会社,AIを活用したコンクリート打継面評価技術を開発-AI画像認識により打継面処理程度の即時・定量評価を実現-
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250331_10412.html,参照日2025-03-31