大成建設、360度カメラとAIで建設現場を見える化、デジタル進捗管理で効率化を実現

大成建設株式会社(相川善郎社長)は、建設業界のデジタル化を推進する「生産プロセスのDX」の一環として、画期的な工事管理システムを導入。360度カメラで撮影した映像をAIが分析し、建設現場の状況を自動的に図面化できる「工事進捗確認システム」の本格運用を開始しました。

現場管理の課題と新システムの必要性

これまでの建設現場では、工事の進み具合を確認するために、担当者が実際に現場まで足を運ぶ必要がありました。特に高層ビルのような大規模な建設現場では、上層階まで移動するだけでも大変な時間と労力がかかっていました。また、工事で使用する様々な資材の管理も、すべて人の目で確認する必要があり、とても手間のかかる作業でした。

システム開発から実用化までの道のり

大成建設は2022年に、この課題を解決するためのシステム開発に着手しました。現場を360度カメラで撮影し、その映像をAIが分析して、工事の進み具合や資材の置き場所を自動的に図面に表示できるシステムを作り上げたのです。さらに、30か所以上の建設現場で試験運用を重ね、現場の声を取り入れながら改良を重ねてきました。

使いやすさを追求した新システムの特長

1.簡単な操作性

以前のシステムでは、スマートフォンに専用アプリをインストールする必要がありましたが、新システムでは360度カメラだけで撮影できるようになりました。これにより、誰でも簡単に使えるようになっています。

2.自動図面化機能の充実

建設現場の柱や壁に、位置情報を持つ2次元コードマーカーを設置しておくことで、撮影した場所の正確な位置情報が自動的に記録されます。システムは16種類の工事の進み具合と、24種類の資材の位置を自動的に判別し、図面に反映することができます。

3.情報連携の強化

新システムは、大成建設が開発したデジタル情報基盤「T-Basis X」と連携できます。これにより、Wi-Fi環境を通じて様々なセンサーや情報機器とつながり、より詳細な現場管理が可能になりました。

実証された導入効果

1.時間の大幅削減

30か所以上の建設現場での試験運用で、1日あたり1時間以上の時間短縮効果が確認されました。延べ600日、1,800階を超えるフロアでの使用実績があり、その効果は実証済みです。

2.コミュニケーションの改善

現場の状況を図面で簡単に確認できるため、関係者間での打ち合わせがスムーズになりました。また、報告書作成にもシステムのデータを活用でき、書類作成の手間も大幅に削減できています。

今後の展開

大成建設は、このシステムをより多くの建設現場に導入していく計画です。システムを使用して集めたデータを分析し、さらなる機能の向上も目指しています。建設業界全体のデジタル化を推進し、より効率的な建設工事を実現するよう取り組んでいきます。

システムに関する補足情報

・工事進捗確認システム:

工事の進み具合や資材の保管状況を自動で図面化できるシステムです。

・T-Basis X:

2020年に開発された建設現場向けのデジタル情報基盤です。Wi-Fi環境を利用して、様々な機器やシステムをつなぎ、現場の情報を一元管理できます。

このように、建設現場のデジタル化は着実に進んでいます。人の目に頼っていた作業をAIと最新技術で効率化することで、建設業界全体の生産性向上が期待されています。

出典情報

大成建設株式会社リリース,360度カメラ画像とAIを用いた「工事進捗確認システム」の本格運用開始-現場状況の遠隔確認と図面の自動作成により施工管理業務効率化を実現-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250127_10305.html