竹中工務店、スギCLTの木目美を保つ透明度高い準不燃材料を開発 国土交通大臣認定を取得
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、カシュー(社長:戸次強)、長瀬産業(社長:上島宏之)、ナガセケミカル(社長:荒島憲明)との共同開発により、画期的な準不燃材料の実用化に成功しました。この新素材は、スギCLTに特殊な透明難燃化塗料を塗布したもので、このたび国土交通大臣より準不燃材料としての認定を取得しました。
目次
従来の課題を克服
建築物の内装材として木材を使用する場合、建築基準法で定められた内装制限への対応が必要です。これまでは、木材表面に難燃化塗料を塗布する方法が一般的でしたが、従来の塗料に含まれる無機系難燃剤には透明度が低いという欠点があり、木目の美しさを長期的に保つことが困難でした。
革新的な塗装技術の開発
今回開発された準不燃材料は、この課題を解決する技術を採用しています。無機系難燃剤を含まない水ガラス系塗料を使用することで、従来にない高い透明性を実現しました。さらに、木材との親和性に優れた下塗り塗料と、高い耐水性を持つ上塗り塗料を組み合わせることで、耐久性も大幅に向上させています。
優れた特長と性能
■高い透明性
・ガラスに匹敵する透明度を実現
・木材本来の質感と木目の美しさを保持
・表面の艶の程度を調整可能
■確かな耐久性
・温度・湿度の変化に対する高い耐性
・屋内用塗料として十分な耐久性を確認
・防火性能の長期維持を実証済み
■柔軟な施工方法
・工場での事前塗装が可能
・建設現場での施工にも対応(「燃エンヌール」工法)
・3層構造の特殊塗装システムを採用
技術的な特徴
開発された塗装システムは、3層構造となっています。火災時には中間層の水ガラス系塗料が発泡することで防火機能を発揮します。この技術により、スギCLTの魅力を損なうことなく、準不燃材料としての性能要件を満たすことが可能となりました。
環境への貢献
開発チームは、この新素材の普及を通じて建築物の内装における木材活用を促進し、脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています。
用語解説
■CLT(Cross Laminated Timber)
繊維方向が直交するように積層接着した木質パネルです。1990年代にヨーロッパで開発され、現在は建築材料として主に建物の床や壁に使用されています。
■準不燃材料の定義
所定の加熱試験において、以下の要件を満たす材料を指します。
・加熱開始から10分間、燃焼しないこと
・防火上有害な変形・溶融・亀裂その他の損傷を生じないこと
・避難上有害な煙またはガスを発生しないこと
■内装制限
建築基準法に定められた規制で、火災の拡大や煙の発生を遅らせることを目的としています。建物の用途・規模・構造等の条件に応じて、壁や天井等の仕上げ材には燃えにくい材料を使用することが求められます。
今後の展開と期待される効果
本技術は、木材の自然な風合いを活かしながら高い安全性を実現する画期的な解決策として、今後の建築業界に大きな影響を与えることが期待されています。
性能検証について
開発段階では、厳密な耐久性試験を実施しました。30℃高湿と10℃低湿の環境を100回繰り返す試験を行い、塗膜の耐久性を確認。さらに、耐久性試験後の試験体でも準不燃材料としての性能が維持されていることを実証しています。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,スギCLTの木目を生かして難燃化を実現する準不燃材料を開発-準不燃材料の国土交通大臣認定を取得、天井や壁の仕上げに適用可能に-,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/01/01/