竹中工務店、鉛フリー放射線遮蔽ボードが国土交通大臣認定取得、医療施設の施工効率を向上
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、吉野石膏(社長:須藤永作)と共同で開発した放射線遮蔽ボード「RadBoard®-X」について、1時間耐火間仕切壁としての国土交通大臣認定を新たに取得したことを発表しました。この革新的な建材は、すでに鹿児島大学病院新外来診療棟(A棟)の透視検査室に採用され、その実用性が実証されています。
目次
環境負荷を大幅に低減する画期的な放射線遮蔽材
RadBoard®-Xは、病院や研究施設などで放射線を使用する専用室の壁材として開発された特殊建材です。γ線やX線に対して高い遮蔽性能を持ちながら、従来の遮蔽材料で使用されていた鉛を一切使用しないことが最大の特徴となっています。製造過程における二酸化炭素の排出量は、従来品と比較して60分の1以下という画期的な削減を実現し、使用後のリサイクルも可能な環境配慮型製品として注目を集めています。2018年の製品化以来、すでに11件のプロジェクトでの採用実績があり、その実用性は高く評価されています。
二つの機能を一つに統合し、建設効率を向上
これまでの放射線室の建設には、放射線遮蔽ボードと耐火ボードを別々に設置する必要があり、二重構造となっていました。この構造により、以下の問題が発生していました。
・壁の厚みが増すことによる室内有効面積の減少
・建設コストの上昇
・部屋のレイアウト検討時の制約
今回の耐火認定取得により、RadBoard®-X単体で放射線遮蔽と防火性能の両方の基準を満たすことが可能となりました。これは、医療施設の建設における大きな技術的進歩といえます。
製品ラインナップの拡充でさらなる選択肢を提供
製品の多様化も進んでいます。
・2018年発売時:15ミリメートル厚のみ
・新規追加:12.5ミリメートル厚版
必要な放射線遮蔽性能と耐火性能に応じて、12.5ミリメートル厚版の2枚張りや、12.5ミリメートル厚版と15ミリメートル厚版の組み合わせなど、より細かな要求に対応できるようになりました。
この製品改良により、従来の工法と比較して建設コストを10%以上削減できる見込みです。また、壁を薄くすることで放射線室の有効面積を広げることが可能となり、医療機器の配置にも余裕が生まれます。
導入事例:鹿児島大学病院新外来診療棟
RadBoard®-Xの実用化第一号となった鹿児島大学病院新外来診療棟(A棟)は、最新の医療設備と環境技術を結集した大規模施設です。建物の概要は以下の通りです。
設計:鹿児島大学施設部
施工:竹中工務店
構造:SRC・S・RC造、基礎免震
規模:地下1階、地上8階、塔屋1階
建築面積:4,674.68平方メートル
延床面積:28,844.08平方メートル
工期:2020年3月~2024年1月
製品仕様と性能
RadBoard®-Xは、その優れた基本性能により、さまざまな医療施設での採用が期待されています。
【12.5ミリメートル厚版】
重量:約38キログラム
遮蔽性能:鉛当量1.2ミリメートル
平面寸法:幅910ミリメートル×高さ1,820ミリメートル
【15ミリメートル厚版】
重量:約47キログラム
遮蔽性能:鉛当量1.5ミリメートル
平面寸法:幅910ミリメートル×高さ1,820ミリメートル
共通仕様として、含水率は3%以下、ホルムアルデヒド放散量は0.1ミリグラム/リットル未満(F☆☆☆☆)を実現しています。
今後の展開
竹中工務店は、この革新的な建材を活用し、医療施設や研究機関の新築工事からリニューアル工事まで、幅広い用途での普及を目指しています。環境への配慮が強く求められる現代において、鉛フリーで低炭素な建材の実用化は、建設業界における持続可能な発展への重要な一歩となることが期待されています。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,鉛フリー放射線遮蔽ボード「RadBoard®-X」が耐火間仕切壁(1時間)国土交通大臣認定を取得-鹿児島大学病院新外来診療棟(A棟)の透視検査室に適用-,https://www.takenaka.co.jp/news/2024/12/01/