建設業の担い手不足はどう解決する?人材確保・育成の取り組みを解説【2025年最新】
建設業で問題化している担い手不足は、年を追うごとに悪化しています。では、どのような対策で人材の流出や、新たな人材確保に取り組むべきなのでしょうか。
そこでこの記事では、建設業の担い手不足の最新情報を紹介したのち、企業が実施できる人材確保・育成の取り組みの具体例について紹介します。
目次
建設業における担い手不足の現状
出典:日本建設業連合会「建設業入職・離職者数の推移」
建設業界では今、担い手不足に悩む企業が増え続けている状況です。
まずは日本建設業連合会が公開している「建設業入職・離職者数の推移」の資料をもとに、建設企業の人材がどのような状況なのか、実際のデータを示しながら解説します。
建設業における入職者数の推移
建設業における入職者数は、過年度と比較して減少傾向にあります。
調査が実施されている2001年時点で約500万人もの入職者がいましたが、最新の2023年時点では278.8万人と、約半分にまで減少している状況です。
特に2007年以降は、入職者数が400万人を下回り、2014年には300万人以下の状況が継続しています。もちろん微増する年などもありますが、データの全体を通してみると、今後も入職率は減少していくものだと予想されます。
建設業における離職者数の推移
前述した入職者数に対して離職者数は、2012年以降、入職者数を下回っている状況です。よって、近年では徐々に建設業で累計した人材が増していると言えます。
ただし、入職者数に対する離職者数が9割以上である点に注意しなければなりません。
ある程度経験を積んで転職をする人もいれば、若手人材の流出なども多い状況です。あわせて、2025年問題により、近年では団塊の世代の離職が増加しているなど、メインで働く人材の流出が激しいことにも注意しなければなりません。少子高齢化が激化している現代では、離職者数が入職者数を下回っていたとしても、担い手不足が加速する懸念がある状況です。
なお、rakumo株式会社が実施した建設業の実態調査によると、企業課題のなかでも担い手不足に関する悩みを抱えている企業が84.0%もいるとわかりました。企業経営を継続するためには、何よりもまず、担い手不足を解消するための施策検討が重要です。
担い手不足の原因
建設業界で担い手不足が問題化している背景には、次のような原因が関連しています。
- 高齢化社会である日本における高齢人材の一斉離職
- 少子化による新規人材数の不足
- 建設業のイメージである「3K」の払拭が難しい点
- 増税に対する技術分野企業の低賃金問題
少子高齢化によって人が減っていくのはもちろん、建設業の「きつい、汚い、危険」というイメージの定着により払拭が難しいこと、また国内の度重なる増税および、忙しい仕事であるにもかかわらず給与が増えにくい(大手、中堅企業以外の場合)問題など、複数の課題が重なり合っています。
とはいえ、各種問題は一企業が対応できる範囲は非常に狭いことに注意が必要です。後述している対策のように、別の解決策を考えなければなりません。
担い手不足により建設業界で起こること
担い手不足が加速している建設業界では、今後、業務負担や売上、経営の継続における問題が発生すると考えられます。実際に懸念されている問題について、具体例を挙げながら解説します。
1人当たりの業務負担が増加する(残業時間の増加)
離職者数が増える一方で、新入社員や中途採用者が現れない状況が続くと、そのしわ寄せがすべて既存の従業員にのしかかります。
例えば仕事量を100%とした場合、11人体制のチームで1人がいなくなると、新たな人材がやってくるまで、1人分の作業量を残りの人たちで対応しなければなりません。つまり、一定期間は110%の業務負担が続くと言えるでしょう。
しかし、担い手不足の影響を受けた場合、新たな人材が現れにくいため、その負担を解消するのが困難です。建設従事者の残業時間が増えることはもちろん、精神面にも影響を及ぼすかもしれません。
対応人数に合わせて受注数を減らさなければならない
担い手不足で人材が不足すると、その分だけ対応できる業務数にも限界が生まれます。
例えば、1人当たり年間2業務に対応できた場合、10名なら20業務への対応が可能です。しかし、1名が離職すれば18業務、2名が離職すれば16業務と受注数が減少することにより、当初予定していた売上を確保できなくなります。その結果、次のような問題が発生するかもしれません。
- 売上減少により社内システムの維持費をまかなえなくなる
- 間借りしている事務所の支払いが困難になる
- 人件費の確保が難しくなる
- 余剰金を確保しづらくなる(既存の余剰金が減ってしまう)
「受注数を減らす=身動きを取りづらくなる&事業拡大が難しくなる」という状況が生まれるため、早めの解決が求められます。
企業経営の難易度が上がる
建設業界では、特定の資格をもつ人材がいなければ、受注できない業務が複数あります。特に、規模や受注額の大きな業務の受注には専門資格が必要です。
しかし、担い手不足により社内人材が不足すると、それらの仕事を受注できなくなり、結果として企業経営自体に問題が発生します。
取りたい仕事があっても仕事を取れないのはもちろん、受注額が減るため社員の待遇改善に力を入れることができません。さらには建設企業のなかでも待遇の良い一部の企業に人が移動するなど、悪循環ができやすくなります。
担い手不足のために建設業でできる対策
建設業界の担い手不足の問題を回避し、うまく経営難を乗り切りたいという場合には、組織改革や人材確保に力を入れることが重要です。
既存の人材で効率化を目指す組織改革
どんなに努力をしても人材が集まらず、人が減る一方だとお悩みなら、既存の人材で業務を回せるように、次のような組織改革に取り組むことで、課題を解決できる場合があります。
- 人員配置の見直し
- クラウドサービスの導入
- 工事管理システムの導入
- 自動化ツールの導入
- BIM/CIM業務への対応
例えば、利益獲得に力を入れるために、企業が得意とする分野にチームを編成しなおすのはもちろん、新技術の導入で効率化を図るのがベストです。現在社内にある無駄な作業、売上につながらない業務をリストアップし、解決するためのアイデアを検討してみてください。
担い手不足を解消する人材確保
これから人材の獲得に力を入れていきたいなら、採用活動の手法を検討することが重要です。以下に、採用活動の方法をまとめました。
- 自社サイトに採用ページを設ける(社内インタビューページも)
- 採用サイトに登録する
- 教育機関への訪問をおこなう
- 大卒人材にこだわりすぎない
また近年では、国が外国人労働者の採用に力を入れているなど、人材確保の対策はいくつもあります。もちろん人材の選別は重要ですが、とにかく応募者の母数を増やしたい場合には、上記のような対策が効果を生みます。
まとめ
建設業で担い手不足の問題が続くと、人手不足倒産はもちろん、既存の従業員へのしわ寄せなど、さまざまな問題が発生します。
そのなかでも、うまく担い手不足の問題を解決したいなら、新技術の導入といった組織改革はもちろん、計画的な人材確保に力を入れることが重要です。国でも、担い手不足問題を解消する予算や補助金が確保されているため、できることからスタートしてみてはいかがでしょうか。