クレーンの種類15選!現場別まとめ|必要な資格や最新デジタル技術
目次
トレンドワード:クレーンの種類
「クレーンの種類」についてピックアップします。クレーンは大型の荷物を移動する目的で使われるため、建設現場だけではなく港湾施設や鉄道といった現場でもよく見られます。本記事では、使用される現場別にクレーンの主な種類をご紹介します。最新デジタル技術での遠隔施工の事例や、必要な資格についてもチェックしましょう。
クレーンとは|役割やメリット
クレーンとは、重い荷物や建築資材を持ち上げたり水平に移動させたりするための機械のことを指します。主に建設現場、工場、倉庫、港湾など、重量物を扱う場面で使用されることが多いです。
クレーンには形状や用途によってさまざまな種類があり、作業内容に応じて適切なタイプが選ばれます。垂直方向だけでなく横方向にも荷物を移動できるため、狭い場所や複雑な現場でも柔軟に対応可能です。
ただし作業効率や安全性を向上させられる一方で、正しい使用方法や適切な管理が重要です。目的に応じたクレーンを選び、効果的に活用することがポイントとなります。
クレーンの種類①土木・建設現場
ここでは「土木・建設現場」で使用される主なクレーンの種類をご紹介します。
トラッククレーン
トラッククレーンとは車両にクレーン装置を取り付けた移動式クレーンで、建設現場での汎用性が高いのが特徴です。設置や撤去が容易で、短期間の工事や狭い場所での作業に適しています。
車両としての走行性能とクレーンの機能を兼ね備えており、迅速に現場へ移動して作業を開始できます。運転席は、道路走行用とクレーン運転用に分かれているのが特徴です。
ユニック車(トラック搭載型クレーン)
ユニック車はトラックに小型クレーンを搭載した車両で、荷物の積み込みや荷降ろし作業に特化しています。建設現場では、資材や機器を効率よく運搬する際に活躍します。
旋回や伸縮が可能で、小型ながらも高い機動性を持つのが特徴です。操作が比較的簡単で狭い場所でも活用できる一方、大型の荷物や高所作業には不向きです。
レッカー形トラッククレーン
レッカー形トラッククレーンは、主に車両や重量物の移動や引き上げに使用されます。車両としての機動力と、強力なクレーン性能を組み合わせた設計が特徴です。
特に交通事故現場での車両撤去や、重機の引き上げ作業などに適しており、「レッカー車」と呼ばれることもあります。コンパクトで小回りが利く一方で、吊り上げ能力はラフテレーンクレーンなどに比べて限定的です。
ラフテレーンクレーン
ラフテレーンクレーンは不整地での作業に特化したクレーンで、4輪駆動により悪路でも高い走行性能を発揮します。狭い場所での作業に適しており、主に都市部の建設現場や短期間の工事で利用されます。
機動性に優れており、短時間で作業を行えるのが特徴です。ただし吊り上げ能力や高さに制限があるため、大規模な工事には向いていません。
オールテレーンクレーン
オールテレーンクレーンは、舗装道路と不整地の両方での走行が可能な高機能なクレーンです。長距離移動にも対応しつつ強力な吊り上げ能力を持っているため、大規模な建設現場や橋梁工事でオールマイティに使用されます。
作業範囲が広く、クレーンアームの伸縮性能も高いのが特徴です。一方で車両価格や運用コストが高く、操作に熟練を要する点がデメリットです。
クローラークレーン
クローラークレーンは履帯(クローラー)で移動するクレーンで、軟弱地盤や悪路での作業に最適です。大型の吊り上げ能力を持ち、高所作業や重量物の移動を得意とします。
不整地や軟弱な現場でも活躍できるため、基礎工事や大型建設プロジェクトで広く使用されています。固定式なので設置や移動には時間がかかる一方で、安定性が高く長時間の作業にも適しています。
ケーブルクレーン
ケーブルクレーンは、ワイヤーロープを使用して重量物を吊り上げて長距離を水平に移動させるクレーンです。主にダム工事や大規模土木工事で使用され、大量の資材を効率よく搬送する際に活躍します。
主な種類としては、固定ケーブルクレーン、片側走行ケーブクレーン、複線式(H型)ケーブルクレーンがあります。地形や設置環境に応じた柔軟な配置が可能で、作業範囲が広いのが特徴です。一方で設置に時間やコストがかかるため、長期工事での採用が一般的です。
クレーンの種類②港湾施設
ここでは「港湾施設」で使用される主なクレーンの種類をご紹介します。
フローチングクレーン(浮きクレーン)
フローチングクレーン(浮きクレーン)は台船や船舶の上に設置されたクレーンで、海上や港湾での重量物の持ち上げや海洋プラントの建設に使用されます。大型船の積み下ろし作業でも活躍し、吊り上げ能力が非常に高いのが特徴です。
移動式のため、作業現場へ柔軟に対応できます。一方で運用には専門的な操縦技術が必要で、天候や波の影響を受けやすいという制約があります。
ジブクレーン(タワークレーン)
ジブクレーンは、アーム(ジブ)が回転・上下することで荷物の吊り上げや水平移動を行うクレーンです。港湾施設では、貨物船への積み下ろし作業や資材の移動に使用されます。ビル建設用のジブクレーンは、タワークレーンと呼ばれることもあります。
シンプルな構造で操作性に優れており、比較的狭い範囲での作業にも対応可能です。固定式や移動式があり、用途や設置場所に応じた柔軟な選択が可能です。
橋形クレーン(ガントリークレーン)
橋形クレーンは橋のような形状で、レール上を移動する構造により荷物を上下や水平に動かせるタイプです。港湾では、貨物の積み下ろしや倉庫内での荷役作業に使われます。
広範囲をカバーでき、大量の荷物を効率よく扱えるのが特徴です。高い安定性と吊り上げ能力を備えていますが設置には広いスペースとインフラが必要で、初期コストが高い点が課題です。
アンロ一ダ
アンローダは、船舶からばら積み貨物(穀物、石炭、鉱石など)を荷卸しするための専用クレーンです。主に港湾施設で使用され、ホッパーやコンベアと連動して大量の貨物を効率的に処理します。
クレーン部分は掴み具やスコップ型のグラブバケットを備えており、安定した荷卸し作業が可能です。一方で専用用途であるため、他の作業には適用しづらいという制約があります。
クレーンの種類③工場・倉庫
ここでは「工場・倉庫」で使用される主なクレーンの種類をご紹介します。
天井クレーン
天井クレーンは工場や倉庫の天井に設置されたレールを走行するクレーンで、大型設備や重量物の移動に使用されます。主に製造ラインや組み立て作業で活躍し、作業効率を向上させます。
上下・前後・左右に荷物を動かせるため、広範囲をカバーできるのが特徴です。安定性が高く大型設備の移動に適していますが、設置には天井の構造が強固である必要があり、初期投資が高額になる場合があります。
テルハ
テルハは小型で簡易的な天井クレーンの一種で、作業エリアが限られた工場や倉庫で使用されます。特定の作業スペース内での荷物の移動や配置に適しており、少量の荷物を効率的に運ぶことが可能です。
操作が簡単で省スペース設計であるため、設置コストが低いのが魅力です。一方で吊り上げ能力や作業範囲には制限があり、大規模な作業には不向きです。
スタッカー式クレーン
スタッカー式クレーンは自動倉庫などで使用されるクレーンで、パレットやコンテナを高い棚に正確に収納・取り出しすることが可能です。垂直方向と水平方向の動きが可能で、狭いスペースを有効活用できるのが特徴です。
作業が自動化されており労働力を削減できるため、大規模な物流倉庫や工場で広く採用されています。ただし、導入コストやメンテナンスコストが高い点が課題です。
クレーンの種類④鉄道
ここでは「鉄道」で使用される主なクレーンの種類をご紹介します。
ロコクレーン(鉄道クレーン)
ロコクレーン(鉄道クレーン)は鉄道車両に搭載されたクレーンで、線路上の作業に特化した設備です。主に線路の保守点検や修理、レールや枕木などの交換作業、脱線した車両の復旧作業に使用されます。
鉄道車両としての走行能力を持ち、作業現場まで直接移動できるため、迅速な対応が可能です。また、線路上での安定した作業が行えるよう設計されています。
最新のクレーン技術|AIやデジタル技術活用
ここでは、最新のクレーン技術についてご紹介します。AIやデジタル技術を活用することで、遠隔施工も実現しようとしています。
竹中工務店|移動式クレーンの遠隔操作システム
竹中工務店らは、移動式クレーンの遠隔操作システム「CRANET(クラネット)」を開発しました。約70km離れた専用コックピットから移動式クレーンを遠隔操作し、材料の移動・積み込み・積み下ろし作業等を支障なく実施できることを確認しています。
これによりオペレータが建設現場に出向く必要がなくなり、事業所内で身体に負担をかけず快適に作業を行えます。また指導教育でも活用できることから、建設技術の次世代への伝承や建設業界の魅力向上にも貢献できるのがメリットです。
鹿島建設|タワークレーンの遠隔操作と自動運転
鹿島建設は、タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo(タワリモ)」をダム工事に導入して自動運転を実現しました。
秋田県で施工中の成瀬ダム堤体打設工事において、「TawaRemo」、「自動運転システム」、「スマートG-Safe」の3つのシステムを組み合わせてコンクリート打設を行った結果、従来よりも生産性が約20%向上しました。
自動運転には、最適な運搬ルートを記憶させて再現できる「ティーチングプレーバック方式」を用いています。これにより人が運転する場合と比べて習熟度・身体的疲労度・天候等に左右されるリスクが減少し、長時間連続での繰り返し作業が可能になった点が特徴です。
東洋建設|クレーン作業安全支援システム
東洋建設らは、小型AIステレオカメラを活用した「クレーン作業安全支援システム」を共同開発しました。具体的には移動式クレーンの先端にAIカメラを設置し、クレーン操縦者へ吊荷への作業員の接近を通知するシステムです。
吊荷の3次元位置を把握できることで、クレーンの吊荷が地面から離れた(地切り)状態を検知可能となるのが特徴です。危険と判定されると、判定前後の作業の映像が動画ファイルとしてクラウドへ保存されます。
クレーン操作に必要な資格や免許
ここでは、クレーン操作に必要な資格や免許についてご紹介します。遠隔施工等の技術が進んでいますが、まだまだ最終的には人間の判断で操作を行う必要があります。
玉掛け技能講習
玉掛け技能講習は、荷重1トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリック、揚貨装置による玉掛作業に従事する際に必要な資格です。東京都・静岡県で実施されており、受講資格は不要です。
講習では、荷物の重心の見極めや、安全な吊り上げ作業に関する知識を学びます。修了すると、つり荷の作業に直接関わることが可能になります。クレーン操作には不可欠な役割で、資格を持つことで安全な現場作業を実現し、労働災害の防止に貢献します。
【公式サイト】(一社)労働技能講習協会 玉掛け技能講習
クレーン運転特別教育
クレーン運転特別教育は、つり上げ荷重が5トン未満のクレーンやホイストを操作するために必要な教育です。講義と実技を通じて、基本的な操作方法や点検・保守の知識を学びます。
この教育を修了すると、特定の中小型クレーンの操作が可能となります。比較的簡易な教育内容で短期間で取得可能なため、現場での即戦力として求められる資格です。東京、埼玉、静岡、神奈川、千葉、栃木、茨城、群馬で実施されています。
【公式サイト】(一社)労働技能講習協会 クレーン運転特別教育(学科教育)
クレーン・デリック運転士
クレーン・デリック運転士は、つり上げ荷重が5トン以上のクレーンやデリック(櫓型クレーン)を操作するために必要な国家資格です。試験は学科と実技で構成され、安全作業に関する知識や高度な操作技術が求められます。
資格取得により大型クレーンの運転が可能となり、特に建設現場や工場など、大規模な荷物移動が必要な作業に従事できます。受験資格は不要で、一定の条件を満たすと免除される科目もあります。
【公式サイト】㈶安全衛生技術試験協会 クレーン・デリック運転士〔クレーン限定〕の紹介
移動式クレーン運転士免許
移動式クレーン運転士免許は、車両に搭載されたクレーン(移動式クレーン)を操作するための国家資格です。具体的には、つり上げ荷重が5トン以上のトラッククレーン、ラフテレーンクレーン、クローラクレーン、フローチングクレーンなどの移動式クレーンを運転する際に求められます。
試験では学科と実技があり、合格後は幅広い現場で活躍可能です。この免許を取得することで、建設業界や物流業界での就職やキャリアアップに役立ちます。受験資格は不要で、一定の条件を満たすと免除される科目もあります。
【公式サイト】㈶安全衛生技術試験協会 移動式クレーン運転士のご紹介
まとめ
本記事では、クレーンの15種類について使用される現場別にご紹介しました。最近ではAIやデジタル技術を用いて効率化を図っている事例もあり、さらなる発展が期待されます。ただしまだまだ人間の技術が求められる場面は多いため、資格取得で適切な技量をを身に付けることは大切です。