国土交通省発表、令和6年11月は住宅着工7か月連続減、二極化進む新設住宅市場
令和6年11月の新設住宅着工は、持家が増加する一方で貸家と分譲住宅が減少し、全体では前年同月比1.8%減の65,037戸となりました。これは7か月連続の減少となります。床面積でも5,105千㎡(同0.3%減)と7か月連続で減少しており、住宅市場の調整局面が継続している状況です。季節調整済年率換算値は775千戸(前月比0.5%減)となり、こちらも2か月連続で減少しています。
目次
利用関係別の詳細分析
■持家部門の動向
・着工戸数:19,768戸(前年同月比11.1%増)で2か月連続の増加
資金別内訳:
・民間資金:18,109戸(同11.1%増)2か月連続増加
・公的資金:1,659戸(同11.5%増)2か月連続増加
・投資予定額:5,901億円(同16.7%増)
持家は戸数・金額ともに好調で、実需の底堅さを示しています。特に投資額の伸びが着工戸数の伸びを上回っており、住宅の高額化傾向が見られます。
■貸家部門の状況
・着工戸数:26,717戸(前年同月比5.5%減)で2か月連続の減少
資金別内訳:
・民間資金:24,829戸(同6.1%減)2か月連続減少
・公的資金:1,888戸(同3.3%増)2か月連続増加
・投資予定額:3,449億円(同1.7%増)
戸数は減少しているものの投資額は増加しており、1戸当たりの投資額の上昇が見られます。
■分譲住宅市場の特徴
総戸数:18,146戸(前年同月比7.3%減)7か月連続の減少
・マンション:7,895戸(同2.9%増)4か月ぶりの増加
・一戸建住宅:10,124戸(同14.5%減)25か月連続の減少
投資予定額:
・分譲全体:3,853億円(同7.0%増)
・マンション:2,063億円(同32.0%増)
・一戸建て:1,777億円(同12.5%減)
マンションと一戸建ての明確な二極化が進行しています。
投資予定額を見ても、マンションは2,063億円(同32.0%増)と好調である一方、一戸建ては1,777億円(同12.5%減)と低迷が続いています。
地域別の市場動向
三大都市圏では、それぞれ特徴的な動きが見られます。首都圏では総戸数が前年同月比5.4%減となり、特に分譲住宅の落ち込みが顕著です。中部圏においては総戸数が同11.2%減と大幅な減少となり、持家を除くすべての区分で減少が見られます。一方、近畿圏では総戸数が同6.4%増と、三大都市圏で唯一の増加を記録し、特にマンションが同32.3%増と大きく伸長しています。
■首都圏の特徴
・総戸数:前年同月比5.4%減
内訳:
・持家:0.6%増
・貸家:3.2%減
・分譲住宅:10.3%減
・マンション:2.5%減
・一戸建:17.9%減
首都圏では、分譲住宅の減少が顕著です。
■中部圏の状況
・総戸数:前年同月比11.2%減
内訳:
・持家:12.0%増
・貸家:33.3%減
・分譲住宅:12.6%減
・マンション:14.9%減
・一戸建:11.8%減
持家以外のすべての区分で減少が見られます。
■近畿圏の動向
・総戸数:前年同月比6.4%増
内訳:
・持家:10.9%増
・貸家:1.1%増
・分譲住宅:10.4%増
・マンション:32.3%増
・一戸建:8.2%減
三大都市圏の中で唯一、全体的な増加傾向を示しています。
建築工法別の分析
プレハブ工法:7,248戸(前年同月比8.0%減)
・18か月連続の減少
ツーバイフォー工法:7,243戸(同10.3%減)
・6か月ぶりの減少
これらの動向からは、住宅市場全体における構造的な変化が進行していることが示唆されます。
市場の特徴と今後の展望
現在の住宅市場は、投資額の増加と戸数の減少という相反する動きが見られ、また地域間格差や住宅タイプによる二極化が一段と鮮明になってきています。特に、マンション市場の回復傾向と一戸建市場の継続的な低迷、そして持家の堅調な推移という明確な差異が表れており、こうした市場構造の変化は今後も続くものと予測されます。引き続き、これらの動向を注視していく必要があります。
■投資額と戸数の関係
・戸数の減少に対して投資額は増加傾向
・1戸当たりの投資額の上昇が継続
・高額物件へのシフトが進行
■地域間格差の拡大
・近畿圏の好調
・中部圏の全般的な低迷
・首都圏の分譲住宅市場の弱さ
■住宅タイプによる二極化
・マンション市場の回復傾向
・一戸建市場の継続的な低迷
・持家の堅調な推移
出典情報
国土交通省リリース,建築着工統計調査報告(令和6年11月分),https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001269.html