大成建設、ジャッキ方式の規格統一で建設・解体作業を効率化 建築現場の生産性を飛躍的に向上へ
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、超高層建物の建設作業を機械や自動システムで行うための重要な技術「ジャッキ方式」を改良し、新しい基準として確立しました。このジャッキ方式は、建設と解体の両方で使えるように工夫されており、建設現場の機械化を進めるための基盤となる技術です。
技術の特徴とメリット
この技術の最大の特徴は、これまで別々に使用されていた建設用と解体用の機械設備を統一したことです。建設時に使用する「テコアップシステム」と解体時に使用する「テコレップLightシステム」のジャッキ装置を共通化することで、作業効率の向上とコスト削減を実現しています。
開発の経緯
大成建設は2010年、環境に配慮した超高層ビル解体工法「テコレップシステム」の開発に成功しました。この技術は、高さ100メートルを超える建物でも、騒音や粉じんを最小限に抑えながら安全に解体できる画期的なシステムでした。その後、2020年には鉄筋コンクリート造や鉄骨・鉄筋コンクリート造の建物にも対応可能な「テコレップLightシステム」へと進化させました。
さらに2021年には、この解体技術で培ったノウハウを活かし、建設現場向けの「テコアップシステム」を開発。建物の本設柱を利用して1フロアごとに上昇させながら工事を進められる効率的なシステムを実現しました。
従来の課題と改善点
しかし、これらのシステムにはいくつかの課題がありました。解体用の「テコレップLightシステム」では、建物の柱の形状や寸法に合わせてその都度部品を製作する必要があり、工期やコストの面で改善が求められていました。一方、建設用の「テコアップシステム」では、ジャッキアップ後の柱継ぎ足し作業時に必要な昇降フレーム部の付け替えが複雑で、より簡単な方法が望まれていました。
技術革新の内容
これらの課題を解決するため、大成建設は両システムの部品を規格化。解体用システムには様々な柱サイズに対応できる調整機能を追加し、建設用システムには容易に付け替えできる新部品を開発しました。さらに、システムの土台となるベース部ジャッキシステムの井桁部材寸法を2500ミリメートルに統一し、両システムで共通利用できるようにしました。
実績と成果
この新技術は既に実際の現場で活用されています。札幌市内の47階建てビル建設工事では、4階から47階までの40フロア分の施工に採用。また、新宿駅西口地区の大規模解体工事では、最大34セットのジャッキシステムを使用して3棟の建物を同時に解体する作業に適用されました。
特に新宿での工事では、敷地に余裕がなく、鉄道や歩道に近接するという困難な条件下での施工となりましたが、建物形状に合わせた非整形の閉鎖屋根を設置するなど、様々な工夫により課題を克服しています。
今後の展望
大成建設は、この新技術を建築生産システムの基盤として位置づけ、さらなる発展を目指しています。具体的には、遠隔操作やロボット技術との融合を進め、次世代の施工スタイルとなる「閉鎖型テコアップシステム」の実用化に向けて開発を継続する方針です。
この技術革新により、超高層ビルの建設・解体作業の効率化と環境負荷の低減が期待されます。建設現場の機械化・自動化に向けた重要な一歩として、建設業界から大きな注目を集めています。
出典情報
大成建設株式会社リリース,超高層建物建築・解体時の機械化施工プラットフォーム技術を確立-仮設架構昇降用のジャッキ方式を規格化・統合し実施工に適用-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250109_10273.html