建設コンサルタントとは|売上高・年収ランキング
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トレンドワード:建設コンサルタント
「建設コンサルタント」についてピックアップします。インフラ整備や都市計画で重要な役割を担い、やりがいの大きい仕事です。本記事では建設コンサルタントの業務内容の他、売上高ランキングや年収についてまとめてご紹介します。
建設コンサルタントとは|簡単に解説
建設コンサルタントとは、建設プロジェクトにおいて企画・設計・計画・施工管理といった支援を行う専門職のことを指します。主に公共事業におけるインフラ整備や都市計画など、幅広い分野で活躍しています。
建設コンサルタントは実際に施工を行う建設業者とは異なり、計画や設計、管理など、プロジェクトといった初期段階の工程を担うのが特徴です。具体的には、下記のような業務を行っています。
- 土木分野:道路や橋、河川・ダムなどの設計・計画。
- 建築分野:公共施設や商業施設の設計や耐震評価。
- 環境分野:環境保全や再生可能エネルギーに関するコンサルティング。
- 防災分野:災害リスクの評価と対策立案。
部門別の仕事内容
(一社)建設コンサルタンツ協会によると、建設コンサルタントの分野は下記22種類に分類できます。
- ①河川、砂防及び海岸・海洋
- ②港湾及び空港
- ③電力土木
- ④道路
- ⑤鉄道
- ⑥上水道及び工業用水道
- ⑦下水道
- ⑧農業土木
- ⑨森林土木
- ⑩造園
- ⑪都市計画及び地方計画
- ⑫地質
- ⑬土質及び基礎
- ⑭鋼構造及びコンクリート
- ⑮トンネル
- ⑯施工計画、施工設備及び積算
- ⑰建設環境
- ⑱機械
- ⑲水産土木
- ⑳電気電子
- ㉑廃棄物
- ㉒建設情報
建設プロジェクトは大規模で複雑なものが多く、専門的な知識なしでは効率的かつ安全な進行が難しいため、建設コンサルタントの存在が不可欠です。また近年では、環境への配慮やデジタル技術の活用が求められる場面も増えており、より高度な技術が期待されています。
【参考】JCCA建設コンサルタントとは
建設コンサルタントと公務員土木職の違い
建設コンサルタントと公務員土木職は、どちらも土木・インフラ分野に関わる職業です。しかし実際の業務内容は、大きく異なります。
まず建設コンサルタントは民間企業に所属し、自治体や国、民間事業者など外部からの依頼を受けて調査・設計・コンサルティング業務を行います。一方で公務員土木職は発注者(プロジェクトの依頼主)としての立場であり、公共事業を計画して事業の進行を管理するという違いがあります。
2024建設コンサルタントのランキング|売上高・年収を比較
ここでは、主要な建設コンサルタントのランキングをご紹介します。売上高や年収を比較することで、業界について把握しておきましょう。
本記事では2023年度の決算・有価証券報告書を参考に、売上高順に掲載しています。最新のデータについては、各公式サイトをご確認ください。
建設技術研究所
- 売上高:930億円
- 平均年収:958.3万円
建設技術研究所は、日本で最初の建設コンサルタントとして75年以上の歴史を誇る企業です。高い技術力で、安全で潤いのある豊かな社会づくりに挑戦しています。
主な事業としては、洪水・渇水・津波・高潮に対する防災対策、流域水循環対策、河川管理施設や海岸保全施設の耐震対策、港湾・海洋インフラの整備などについて、調査・解析・実験・計画・設計・維持管理など、建設コンサルタントとしてトータルな提案を行っています。
【参考】建設技術研究所|ESGデータ
オリエンタルコンサルタンツ
- 売上高:781億円
- 平均年収:655万円
オリエンタルコンサルタンツは総合建設コンサルタントとして、日本トップクラスの技術を誇ります。インフラ整備・保全、水管理・保全、防災、交通、地方創生といった幅広い事業を展開し、社会価値創造企業を目指して次代の社会づくりに新たな価値を提供しているのが特徴です。
【参考】オリエンタルコンサルタンツ|有価証券報告書
ID&E(日本工営)
- 売上高:731億円
- 平均年収:1006万円
ID&Eホールディングスは、2023年7月に前身の「日本工営」を発展させる形で誕生しました。日本の建設コンサルタント業界のリーディングカンパニーとして社会資本づくりに関わる事業を展開しており、幅広いプロジェクトを手掛けています。「自律と連携」を合言葉にシナジー創出を追求し、お客様に寄り添いながら各地域の課題解決を実現しています。
土木・建築など専門の技術を用いて、国、地方自治体、海外政府機関、民間企業などの事業者に対し、国土・地域・都市整備プロジェクトの立案、検討、技術提案や、調査、環境評価、設計、施工監理、維持管理業務を行っています。
【参考】ID&E|有価証券報告書
パスコ
- 売上高:620億円
- 平均年収:701万円
パスコは航空測量サービス大手で、コンサルタント分野にも注力しています。調査・計測、建設コンサルタント、GIS技術といった強みを持ち、「限られたコストで質の高い行政サービス」の実現に向けた持続可能(サスティナブル)なまちづくりを支援する各種ソリューションを提供しています。
【参考】パスコ|有価証券報告書
パシフィックコンサルタンツ
- 売上高:615億円
- 平均年収:570万円
パシフィックコンサルタンツグループは、設立から70年以上歴史がある大手企業です。シビルエンジニアのプロとして、道路や鉄道、河川、港湾などの社会インフラの企画や調査、計画、設計から施工管理、維持管理に関する技術サービスを提供し、社会に新たな価値を提供しています。
【参考】パシフィックコンサルタンツ|有価証券報告書
建設コンサルタントのメリット・やりがい
建設コンサルタントの仕事には、下記のようなやりがいやメリットがあります。
人々の暮らしを支えられる
建設コンサルタントは、道路、橋梁、上下水道、ダム、防災施設など、社会の基盤を支えるインフラ整備に深く関わる仕事です。そのため、地域の人々の生活が便利になったり安全性が向上したりする様子を直接感じられるのがメリットです。
特に、防災計画や環境保全プロジェクトなどでは、災害時の被害軽減や未来の環境保全に貢献できる達成感があります。
幅広いプロジェクトに関われる
建設コンサルタントは、業務の対象が非常に多岐にわたります。大規模な国道整備や鉄道計画、公園の設計、さらには環境影響評価や防災計画まで様々な分野で活躍できるため、仕事の幅が広がります。
このようにひとつの専門分野にとどまらず、地質調査や構造設計、環境問題への対応といったさまざまなテーマに挑戦することで成長を実感できます。また企業によっては、海外でのインフラ整備プロジェクトにも関わるチャンスがあります。特に発展途上国や新興国ではインフラ整備が急務となっており、日本の技術や経験が求められています。
専門的スキルが身に付く
建設コンサルタントは設計や調査、計画のプロフェッショナルとして、常に高い技術力が求められます。そのため実務を通じて、設計技術、解析技術、最新のソフトウェアの使用方法など、専門性の高いスキルを習得できるのがメリットです。
技術士やRCCMなどの資格取得を目指す環境も整っている企業も多いです。難しい技術課題を解決したり新しい技術をプロジェクトに導入したりすることで、技術者としての成長や自己実現を実感できます。
建設コンサルタントのデメリット・課題
一方で建設コンサルタントの仕事は「きつい」「やめとけ」と言われることもあり、下記のようなデメリットや課題が見られます。
出張や現場業務が多い
建設コンサルタントは、現地調査や打ち合わせのために頻繁に出張することがあります。プロジェクトごとに現場が異なり、現場での調査は天候や地形に左右されることも多いため身体的な負担が掛かりやすいのがデメリットです。
労働時間が比較的長い
建設コンサルタントは調査や設計、報告書作成のほか、打ち合わせやクライアント対応など多岐にわたる業務をこなす必要があり、仕事量が多くなることがあります。特に公共事業の案件では納期が厳しく、夜遅くまでの作業や休日出勤が発生する場合もあるのが課題です。
インフラ整備の需要増加や老朽化した構造物の更新に伴い、プロジェクト数が増加していることも一因とされています。
女性の割合が低い
建設コンサルタント業界は男性の比率が高く、女性の割合が低いのが現状です。ロールモデルが少なく、職場環境に馴染みにくいと感じる場合があります。また現場調査や出張の多い働き方が、女性にとってハードルになることもあります。
そのため業界全体で、女性技術者が活躍できる環境を整備する必要があります。例えば育児休業やフレックス制度の導入、現場業務の負担軽減が求められています。
建設コンサルタントに有利な資格
ここでは、建設コンサルタント業務に役立つ資格をご紹介します。取得は必須ではありませんが、知識を身に付けることで業務に活かしやすくなります。
技術士
技術士とは文部科学省が認定する国家資格で、技術者としての専門性・信頼性を示せるのが特徴です。産業経済、社会生活の科学技術に関するほぼ全ての分野(21の技術部門)をカバーしており、先進的な活動から身近な生活にまで関わる知識が求められます。
受験には、技術士補となる資格を有し、下記(1)(2)のいずれかに該当する必要があります。
(1) 技術士補として技術士を補助したことがある者で、その補助した期間が通算して次に定める期間((2)の期間を算入することができる。)を超える者。
- 総合技術監理部門を除く技術部門 4年
- 総合技術監理部門 7年
(2) 科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く。)又はこれらに関する指導の業務を行う者(注1)の監督(注2)の下に当該業務に従事した者で、その従事した期間が技術士補となる資格を有した後、通算して次に定める期間((1)の期間を算入することができる。)を超える者。
- 総合技術監理部門を除く技術部門 4年
- 総合技術監理部門 7年
【参考】(公社)日本技術士会
RCCM
RCCM(シビルコンサルティングマネージャー)とは、建設コンサルタント業務における実務能力を証明するための民間資格です。建設分野のプロジェクトマネジメントや、技術的な指導を行うためのスキルを持つ人材を対象としています。技術士資格に比べると取得の難易度はやや低いとされていますが、業務の深い理解と経験が求められます。
受験には、一定の実務経験が必要です。
- 大学院修了者(修士課程/博士課程前期):5年以上 ※大学院(修士課程/博士課程後期)は在学期間を実務経験年数とみなす
- 大学卒業者:7年以上
- 短期大学もしくは高等専門学校卒業者:9年以上
- 高等学校卒業者:11年以上
- 中学校卒業者:14年以上
まとめ
建設コンサルタントはインフラ等の重要なプロジェクトに関わることが多く、やりがいのある仕事です。本記事でご紹介したメリットや課題、売上高ランキングを参考に、就職や転職を検討してみてはいかがでしょうか?