建設労働需給調査結果の最新動向を分析!人手不足の原因も解説
国土交通省が実施した建設労働における需要と供給の調査によると、平成23年以降、建設業界では通年して人手不足が続いている状況です。
本記事では、建設労働需給調査結果の最新動向を深掘りしたのち、過不足率が拡大する原因や将来予測を解説します。
目次
国土交通省が公開した建設労働需給調査結果の最新動向
出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和6年9月調査)」
人手不足などの問題を抱えている建設業界の動向を探るため、国土交通省では定期的に「建設労働需給調査」が実施されています。
調査結果として、現在の建設業界では平成23年以降、人材不足の状況が10年以上続いていることがわかりました。まずは、人材における需要と供給のバランスが崩れ、人手不足が起きている職種や地域を見ていきましょう。
職種別の過不足率の動向
まず2024年9月調査時点で、鉄筋工(土木)・左官・電工といった職種の過不足率が高い傾向にあります。
職種 | 過不足率 |
鉄筋工(土木) | 2.8% |
左官 | 2.3% |
電工 | 2.0% |
型枠工(土木) | 1.7% |
配管工 | 1.4% |
鉄筋工 | 1.2% |
型枠工(建築) | 1.1% |
とび工 | 0.7% |
出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和6年9月調査)」
なかでも、現場打ちコンクリートなどを担当する土木分野の過不足率が高まっている状況です。なお、過年度からの傾向をみると、年度ごとに過不足率の順位は大幅に変化しています。
職種 | 2024年 | 2023年 | 2022年 | 2021年 |
型枠工(土木) | 1.7 | 2.4 | 2.1 | 1.0 |
型枠工(建築) | 1.1 | 4.3 | 5.2 | 0.7 |
左官 | 2.3 | 3.5 | 4.1 | 0.6 |
とび工 | 0.7 | 2.6 | 1.0 | 0.4 |
鉄筋工(土木) | 2.8 | 1.2 | 2.2 | 0.5 |
鉄筋工(建築) | 1.2 | 1.4 | 2.6 | 0.6 |
電工 | 2.0 | 1.3 | 0.4 | 0.3 |
配管工 | 1.4 | 1.9 | 0.7 | 0.7 |
出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和6年9月調査)」
業種全体をみても、人手不足の問題を解決できていません。以上より、人手不足は建設現場に携わるほとんどの業種に関係のある問題だと言えるでしょう。
地域別の過不足率の動向
続いて、2024年9月調査時点における地域別の建設労働者の過不足状況を整理しました。
まず調査の結果から、北陸、四国、九州を除いた地域で人手不足の問題が顕在化していることがわかります。
地域 | 過不足率 |
北海道 | 4.5% |
東 北 | 2.0% |
関 東 | 2.1% |
北 陸 | 0.0% |
中部 | 0.2% |
近畿 | 2.0% |
中国 | 1.1% |
四国 | 0.0% |
九州 | 0.0% |
沖縄 | 0.7% |
出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和6年9月調査)」
なかでも北海道や東北、関東、近畿における人手不足が目立ちます。同調査で実施された「今後の労働者確保に関する見通し」のアンケートでも、多くの企業が対策が困難であるという意見が出ていることから、今後もすぐに人手不足を解消できそうにない状況です。
アンケート回答 | 2024年9月の回答 | 2023年9月の回答 |
困難 | 9.6% | 12.1% |
やや困難 | 14.3% | 15.4% |
普通 | 72.4% | 69.4% |
やや容易 | 1.5% | 1.7% |
容易 | 2.2% | 1.4% |
出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和6年9月調査)」
過不足率とは
建設労働需給調査のなかで取り上げられている「過不足率」とは、建設現場における作業員の需要・供給の割合を示した値のことです。
現場や業種に対して、作業できる人材がいない場合には「不足」、一方で現場や業種の数に対して、人材が余っている場合には「過剰」という指標で比率がまとめられます。なお、今回実施されている調査では全業種で不足の状態であることが判明しています。
過不足率の計算方法
建設作業員の過不足率は、以下の計算式を用いて算出します。
なお、本調査では「建設業法の許可を受けた資本金300万円以上の建設業者」である約3,000社が対象とされています。全国の会社が対象ではないことに注意してください。
建設労働需給調査結果で過不足率が拡大している原因
建設労働需給調査結果より、日本全国で建設作業員の人手不足が顕在化しています。
ではなぜ、人手不足問題が続き、改善されずにいるのでしょうか。考えられる具体的な原因を2つ整理しました。
建設業界の人手不足
出典:国土交通省「社会資本整備を支える建設業の状況は?」
現在、日本の建設業界は、平成25年のピーク時から徐々に労働者人口が減り、担い手不足に陥っている状況です。
例えば、建設工事に携わる人材が不足しているほか、労働者の高齢化などの影響を受け、建設工事のノウハウや知識が下の世代の人々に受け継がれなくなっています。
日本が少子高齢化問題を抱えていることも含め、対策を講じなければ建設業界の人材不足は今後も加速していくと予想されています。
労働需要のひっ迫
建設業界の人手不足は、次のような要因で労働需要がひっ迫していることも関係しています。
- 建設業界における3Kのイメージ
- 建設業界の労働と給与のバランス(長時間労働・低賃金)
- 他業界におけるサービスの多角化
建設業界では、きつい・汚い・危険といったマイナスのイメージのほか、長時間労働・低賃金といった問題があることから、なかなか人材が集まりません。また、他業界におけるサービスが多角化していることから、建設分野から別の業界へ人材が流出しているといった問題を抱えています。
建設労働需給調査結果における今後の予測
建設労働需給調査結果より、全国そして全業種における人手不足が起きているとわかりましたが、今後、どのように需給が変化していくのでしょうか。そこで、現在予想されている将来予測を以下に整理しました。
まず、建設業向けの人材紹介等を展開しているヒューマンリソシア株式会社が実施した試算によると、2030年までに建設技能工が18万人ほど不足すると発表されました。
出典:ヒューマンリソシア「建設技術者・技能工の2030年の未来予測(2023年版)」
また、同社の推計によると、2040年までに建設技術者も最大で4.7万人が不足すると試算されています。現場のみならず設計者なども含めて、建設業界全体の人口減少が起きることに注意しなければなりません。
建設労働需給調査結果の影響を防ぐ方法
建設労働需給調査結果より判明した「建設作業員の人手不足」はそう簡単に解消できるものではありません。そこで重要なのが、現状の人材数で業務を回すための施策を講じるという動き方です。参考として、人手不足の影響を防ぐ方法を以下に整理しました。
- 企業体制を見直す
- 人材確保に力を入れる
- DX(デジタル・トランスフォーメーション)化を検討する
なかでも企業や部署ごとに取り組みやすいのが、作業効率化や生産性向上を目的としたDX化の施策です。設計・施工・維持管理の検討に役立つBIMや、必要最小限の人員で現場を回せる管理システムなど多彩なDXツールが提供されているので、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
建設労働需給調査結果の傾向をみると、建設現場に関わる各業種で10年以上も人手不足の問題が続いています。また、一部地域を除き、全国で問題が発生しています。
しかし人手不足の問題には、少子高齢化といった日本の慢性的な問題も影響していることから、一企業で解決できる範囲には限界があるでしょう。
そこで解決の選択肢として上げられるのがDX化の検討です。1人当たりの作業効率を向上し、人手不足問題の解決を目指せます。豊富なDXツールが提供されているため、この機会にDX化を検討してみてはいかがでしょうか。