コンセッション方式とは?公共施設で利用される仕組みのメリット・デメリットをわかりやすく解説
近年、公共施設の運営のなかでコンセッション方式という仕組みが導入され始めていることをご存じでしょうか。別名PFIと呼ばれている公共施設の運用手法は、非常に身近な場所でスタートしている状況です。
本記事では、コンセッション方式の概要や仕組みを解説したのち、実施するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
コンセッション方式とは
コンセッション方式とは、以下に示すような利用料金を徴収する公共施設において、施設の所有権を「公共主体」が所有した状態のまま、施設の運営権を「民間事業者」に設定する方式です。
- 高速道路
- 空港
- 上下水道
別名PFIや公共施設等運営権方式と言い、わかりやすくまとめると「国が施設を管理・民間事業者が運営」という形で運営をする方式になります。平成23年より精度がスタートしており、民間事業者による安定的かつ自由度の高い運営により、利用者ニーズに合う質の高いサービスを提供するために設けられた制度です。
コンセッション方式(PFI)とPPPの違い
出典:国土交通省「PPP/PFI手法の整理とコンセッション方式の積極的導入のための展開について」
コンセッション方式と似た運営スタイルのひとつに、PPPという運営手法があります。参考として以下に、コンセッション方式とPPPの違いを整理しました。
コンセッション方式(PFI) | PPP | |
業務内容 | 性能発注による維持管理&改築 | 性能発注による維持管理 |
資金 | 民間事業者が利用者から直接徴収する | 自治体から受託者(民間事業者)に支払う |
委託期間 | 上限なし | 3~5年程度 |
民間事業者が対応すべき範囲が異なるのはもちろん、コンセッション方式とPPPは資金を徴収する主体が違います。なお、コンセッション方式では改築にも対応しなければならず、長く委託を受けられる分、老朽化した施設の大規模修繕を実施しなければなりません。
コンセッション方式の種類と仕組み
コンセッション方式のもととなるPFIには、以下に示す2つの種類があり、それぞれ対応すべき範囲が異なります。
コンセッション方式のPFI | 従来方式のPFI | |
新設 | × | 〇 |
改築 | 〇 | 〇 |
運転監視 | 〇 | 〇 |
薬品等の調達・管理 | 〇 | 〇 |
維持管理・修繕 | 〇 | 〇 |
維持管理マネジメント | 〇 | × |
施設保全計画・管理 | 〇 | × |
コンセッション方式は、従来方式よりも後にできた手法であり、新設への対応がない一方で管理すべき項目が複数あるのが特徴です。また従来方式は民間資金および国の交付金から運営をまかなうことに対し、コンセッション方式では民間事業者が表舞台に立ち、利用者から直接資金を調達するといった違いがあります。
コンセッション方式を活用するメリット
公共施設の運営に、コンセッション方式を取り入れるメリットを2つ紹介します。
自治体の財政負担が軽くなる
コンセッション方式を採用すれば、少子高齢化が進むエリアなどにおける自治体の財政負担を軽減しやすくなるのがメリットです。
例えば、これまで公共施設は自治体などが主体となり、管理・運営に対応しなければなりませんでした。しかし、人手不足などにより税収が減ると、その分だけ予算を切り詰めた施設運用が必要です。
一方で、コンセッション方式を活用して民間事業者に運営を任せれば、民間企業の専門知識や技術を活用しつつ、高い質のサービスを提供しやすくなります。自治体でも人手不足等が進んでいることから、民間事業者の協力を得ることで施設運営の効率化が可能です。
民間事業者がインセンティブとして収益を受けやすい
コンセッション方式を利用して民間事業者が公共施設を運営すれば、運営のなかから生まれたインセンティブを企業売上に追加できるのがメリットです。
民間企業がもつ技術やノウハウを活かして効率よく運営することにより、多くの収益化を目指せます。委託期間にも上限が設けられていないことから、継続的に安定収入を確保しやすくなるのが企業にとっての魅力です。
限られた予算でより多くのサービスを提供できる
コンセッション方式を活用すれば、民間事業者の力を借りて、限られた予算のなかで多くのサービスを提供しやすくなります。参考として、民間事業者ならではの変化を以下に整理しました。
- 意思決定を必要最小限に抑えられる
- 余った予算を別の施策や事業に割り当てられる
従来の予算よりも少ない予算で高品質なサービスを提供しやすくなることから、施設運営の環境整備などに費用を充てやすくなります。
コンセッション方式を活用するデメリット
財政や企業利益においてメリットが多い公共施設のコンセッション方式ですが、ソフト面におけるデメリットもあることに気を付けなければなりません。参考として、コンセッション方式を運用し続けた場合のデメリットを2つ紹介します。
競争原理が働かず公共サービスの質が低下する
コンセッション方式は、特定の民間業者に継続して委託を続けるため、企業競争によるサービス品質アップといった競争原理が働きにくくなるのがデメリットです。
例えば、公共施設の運営が1社に属人化すると、運営体制が独占状態となり、徐々にサービス低下が起きてしまいます。また民間事業者に一任したことで、料金アップの施策を講じられ、利用者負担が増えるケースもあるというデメリットがあることに注意しなければなりません。
【過去には料金値上げの事例も】
宮城県で実施された上下水道・工業用水道のコンセッション、別名「みやぎ型管理運営方式」という委託システムにより、従来の料金から4割値上げになったという事例もあります。料金アップに伴い利用者が減少したケースもあることから、コンセッション方式の運用は、慎重に進めなければなりません。
自治体側のノウハウが喪失する
コンセッション方式を採用して、公共施設の運用を民間事業者に投げてしまうと、今まで自治体側が蓄積してきたノウハウを活かす必要がなくなり、徐々にノウハウが消失してしまうのがデメリットです。
またコンセッション方式による委託が終了した場合に、新たな委託先(民間事業者)が見つからなければ、従来通り自治体が運営に対応しなければなりません。しかし、自治体のノウハウが消失していることから、サービスの質や運営レベルが落ちてしまうと懸念されています。
コンセッション方式の活用事例
コンセッション方式はすでに全国で運用がスタートしています。参考として以下に、導入されている事例を整理しました。
分野 | 運用箇所 |
空港 | ・但馬空港・仙台空港・福岡空港 |
水道 | ・宮城県・大阪市 |
下水道 | ・静岡県浜松市・神奈川県三浦市 |
道路 | ・愛知県道路公社 |
文教施設 | ・有明アリーナ・沖縄科学技術大学院大学 |
MICE施設 | ・愛知県国際店事業・福岡市ウォーターフロント地区 |
公営水力発電 | ・鳥取県 |
その他 | ・宮城県宮城市キャンプ場・福岡県田川市駅舎 |
なお、上記の事例はあくまで一例です。ほかにも全国的にコンセッション方式の取り組みが進められているため、ぜひ国や自治体の取り組み状況をチェックしてみてください。
まとめ
公共施設の運営や管理に関わるコンセッション方式には、自治体の財政負担の解消、そして民間事業者の継続的な利益獲得といったメリットがあります。もちろんメリットのみならず運用におけるデメリットもありますが、委託方法や基盤が整えばデメリットの解消も期待されています。
民間施設の運営手法を変える取り組みになると期待されているため、今後も管理手法の動向から目が離せません。