熊谷組発の循環型農業プロジェクト、持続可能な養殖システムの実証開始へ

株式会社熊谷組(東京都新宿区、上田真取締役社長)は、環境に優しい次世代型の農業システム「藻類×アクアポニックス」の実現に向けて、新たな一歩を踏み出しました。2024年11月1日、佐賀県の株式会社トーセン農場(佐賀県嬉野市、堀川幸運代表)と連携協定を締結。この協定により、陸上養殖における資源の循環利用という新しい可能性が開かれることになります。

アクアポニックスとは

アクアポニックスは、水耕栽培と魚の養殖を組み合わせた革新的な農業システムです。魚の養殖で生じる水を植物の栽培に利用し、植物が水をきれいにして再び魚の養殖に使用する、という自然の循環の仕組みを活用しています。

連携の背景と目的

■現状の課題

現在、日本の養殖業界は深刻な課題に直面しています。養殖魚の餌として必要な魚粉のほとんどを海外からの輸入に依存しており、近年の円安や物価高騰により、経営コストが大きく上昇しています。この状況は、養殖業全体の持続可能性に影響を与えています。

■目指す解決策

両社は、熊谷組が佐賀県に設置している「藻類×アクアポニックスラボラトリー」を拠点として、次のような取り組みを進めています。

・陸上養殖で発生する未利用魚を活用した養殖用餌の製造

・製造した餌を自社の陸上養殖施設で再利用する循環システムの確立

・資源の効率的利用による環境負荷の低減

技術的な特長と革新性

■従来の餌との違い

一般的な養殖用の餌は、魚を加熱処理した後に圧搾機にかけ、油分と水分を分離させる製法が採用されています。しかし、この過程で重要な栄養成分も同時に失われてしまうという問題がありました。

■トーセン農場の特許技術

トーセン農場が開発した特許製法では、圧搾工程を省略することで、以下のような利点を実現しています。

・DHAやEPA、ビタミン類などの有効成分を従来の数倍量保持

・養殖魚の成長促進効果

・餌の食べ残しが減少することによる水質保全効果

環境への配慮

この取り組みでは、環境保護の観点からもいくつかの工夫が施されています。

・店舗や一般家庭から出る使用済み天ぷら油などの廃食用油を製造工程の燃料として再利用

・餌の製造過程での廃棄物発生を最小限に抑制

・資源の循環利用による環境負荷の低減

期待される効果

本プロジェクトを通じて、以下のような効果が期待されています。

・養殖用餌のコスト削減

・資源消費の抑制

・廃棄物の発生防止

・持続可能な循環型社会の形成促進

・SDGs(持続可能な開発目標)への貢献

今後の展望

熊谷組は本事業を通じて、資源の最大限の活用と環境負荷の低減を同時に、実現する新しい事業モデルの確立を目指します。この取り組みは、環境と経済の調和のとれた発展を実現する重要な一歩となることが期待されています。

出典情報

株式会社熊谷組リリース,次世代の持続可能な循環型農業「アクアポニックス」の陸上養殖におけるサーキュラーエコノミーの実現に関する連携協定締結,https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2024/pr-20241113-003668.html