大林組、CO2削減の比較検証が可能な建築計画支援システム「E-CO BUILDER」を開発
株式会社大林組は、建築プロジェクトの計画初期段階において、CO2排出量の削減効果とコストを瞬時に評価できる新システム「カーボンデザイナー E-CO BUILDER(エコビルダー)」を開発したことを発表しました。このシステムは、建物の基本計画段階から環境配慮型の意思決定を支援することを目的としています。
開発の社会的背景
近年、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速しています。建設業界においては、建設時のCO2排出量削減だけでなく、完成後の建築物の運用時におけるCO2排出量の削減も重要な課題となっています。
これまで、建築物の環境負荷やコストを正確に把握するためには、建物の詳細な仕様が決定している必要がありました。そのため、プロジェクトの初期段階で投資効果を検討したいというお客様のニーズに十分に応えることができませんでした。
システムの特徴と機能
「カーボンデザイナー E-CO BUILDER」は、大林組が既に開発していた「カーボンデザイナー®」と「ZEB Ready簡易評価システム」を発展的に統合したものです。主な特徴として以下の機能が挙げられます。
1. 迅速なシミュレーション機能
・地図上で計画地を指定するだけで、即座にシミュレーションを開始できます
・建物の基本的な情報(幅・奥行き・階数)を入力することで、自動的に延床面積を算出します
・仕様の変更に応じて、結果が瞬時に更新されます
2. 詳細な建築仕様の設定
・メインファサードの方向
・ガラスの種類
・庇の有無
・躯体の仕様(低炭素型コンクリート「クリーンクリート®」やハイブリッド木造など)
3. 多様な設備仕様への対応
・空調システム
・換気設備
・照明設備
・給湯設備
・太陽光発電などの創エネ設備
4. 効果とコストの見える化
システムは以下の項目について、総合的な評価を提供します。
・建設時のCO2排出量削減効果
・運用時のCO2排出量削減効果
・建設コストの増減
・年間運用コストの試算
・BEI値(Building Energy Index)による省エネルギー性能の評価
実務での活用方法
本システムは、営業活動から設計業務まで幅広い場面で活用できます。特に、お客様との打ち合わせにおいて、様々な仕様の組み合わせによる効果やコストの変化を即座に確認できる点が特徴です。
これにより、以下のような利点が得られます。
・プロジェクトの早期段階での環境配慮型設計の検討が可能に
・お客様の予算や環境目標に応じた最適な仕様の提案
・投資効果の視覚的な把握による意思決定の迅速化
今後の展開について
現在、「カーボンデザイナー E-CO BUILDER」はオフィスビルのみを対象としていますが、大林組では今後、システムの対象範囲を他の建物用途にも拡大していく計画です。また、カーボンニュートラルの実現に向けた新たなソリューションの開発も継続的に進めていく方針です。
技術用語の補足
BEI値(Building Energy Index)は、基準となる建築物と比較した場合の設計建築物の一次エネルギー消費量の比率を示す指標です。この値が小さいほど、建築物の省エネルギー性能が優れていることを表します。
出典情報
株式会社大林組リリース,建物計画の初期段階でCO2排出量削減効果とコストを比較検証できる「カーボンデザイナー E-CO BUILDER™」を開発,https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20241114_1.html