大成建設、災害対策で環境に優しい水素エネルギーの活用に挑戦、施設間での運搬実験を実施

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、2024年11月1日、同社グループ内で行われた大規模災害訓練において、画期的な取り組みを実施しました。再生可能エネルギーから生み出された環境配慮型の水素(グリーン水素)を、施設間で運搬して電力に変換する実証実験を行い、災害時のエネルギー供給体制の強化を目指しています。

実証実験の概要

今回の実験は、災害時を想定した事業所間のエネルギー融通を検証するものです。大成ユーレック川越工場で製造されたグリーン水素を、特殊な貯蔵タンクに格納し、大成建設技術センターまで運搬。その後、燃料電池を使用して電力に変換し、施設全体での利用が可能であることを確認しました。

最新技術を活用した水素製造システム

実験で使用された水素製造設備は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて開発された最新鋭のシステムです。山梨県、東レ、東京電力エナジーパートナーが共同開発し、再生可能エネルギーの余剰電力を利用して水素を製造する装置を、コンパクトなパッケージとして実用化しました。このシステムは2024年8月6日から大成ユーレック川越工場で実証運転を開始しています。

安全で効率的な水素運搬を可能にする特殊タンク

水素の運搬には、水素吸蔵合金タンク(MHタンク)が使用されました。このタンクは、通常の体積の1,000倍以上もの水素を貯蔵できる優れた性能を持っています。さらに、非危険物として分類されるため、取り扱いが容易で安全性が高いという特徴があります。今回の実験では、容量100Nm3のMHタンク3台のうち1台を実際に運搬に使用しました。

期待される効果と今後の展望

この実証実験の成果により、以下のような効果が期待されています。

■災害時のエネルギー供給体制の強化

・停電や自然災害発生時の電力確保

・施設故障時のバックアップ電源としての活用

・事業所間での効率的なエネルギー融通

これまでの実績と将来への取り組み

大成建設は、2018年から2021年にかけて北海道室蘭市でも同様の実証事業を実施してきました。この事業では、車載式MHタンク(45Nm3、85Nm3)を用いて、日常的な水素供給システムの実用性を検証しています。

今後、同社はこれらの実証実験で得られた知見を活かし、以下の目標に向けて取り組みを進めていく方針です。

■レジリエントな街づくりの推進

・災害に強い自立分散型エネルギーシステムの構築

・脱炭素化と防災機能の両立

・持続可能な社会インフラの整備

この取り組みは、環境保護と防災対策を両立させる新しいエネルギーシステムのモデルケースとして、今後の都市開発における重要な指針となることが期待されています。

大成建設は、これらの技術開発と実証実験を通じて、安全で環境に優しい、そして災害に強い社会インフラの構築に向けて、さらなる取り組みを進めていく考えです。

出典情報

大成建設株式会社リリース,大成建設グループ内で再生可能エネルギー由来水素の搬送・融通を実証-BCP対策として水素エネルギーを活用したレジリエントな街づくりを推進-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/241113_10203.html