竹中工務店がCLT活用の耐震壁技術を開発 高層建物向け新技術KiPLUS WAVY
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、木材と鋼板を組み合わせることで高い耐震性能を実現する新技術「KiPLUS WAVY」を開発しました。この技術により、大規模な建物や高層ビルでも木材を活用した快適な空間づくりが可能になります。
新技術の特徴と革新性
「KiPLUS WAVY」の最大の特徴は、CLT(直交集成板)と呼ばれる木材パネルと波形の鋼板を組み合わせた点です。CLTとは、木材の板を層ごとに繊維の方向を直交させて接着した建材で、高い強度と安定性を持っています。これに波形の鋼板を組み合わせることで、大規模建築物での木材利用が可能になりました。
木材活用技術のシリーズ展開
竹中工務店では、建物の付加価値を高める技術として「KiPLUS」シリーズを展開しています。このシリーズは、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物に木材を効果的に取り入れる技術の集大成です。今回開発された「KiPLUS WAVY」は、このシリーズの第2弾として登場しました。
第1弾との違いと進化点
シリーズ第1弾の「KiPLUS WALL」は、比較的大きな地震力を負担する必要がない建物向けのCLT耐震壁でした。これに対し「KiPLUS WAVY」は、CLTと波形鋼板を組み合わせることで、より大きな地震力にも対応できる設計となっています。この性能向上により、以下のような建物での採用が可能になりました。
・大規模建築物
・高層ビル
・耐震壁の設置場所に制限がある建物
設計の自由度が大きく向上
従来の耐震壁は、階段やエレベーターなどの設備周りに設置されることが一般的でした。しかし「KiPLUS WAVY」では、CLTを見せる形で使用できるため、次のような場所にも設置が可能です。
・オフィスなどの執務空間
・居室の壁面
・建物の外周部
これにより、木のぬくもりを活かした空間デザインの可能性が大きく広がりました。
技術の仕組みと信頼性
「KiPLUS WAVY」の基礎となっている波形鋼板耐震壁WAVYは、2007年の開発以来、70件以上の建築実績を持つ確かな技術です。この技術では、地震時に起こりやすい波形鋼板の座屈(変形)を防ぐため、両面から特殊な鋼材(山形鋼)で挟み込む工夫がされています。
新技術では、この波形鋼板の座屈をCLTと山形鋼の組み合わせで抑制することに成功。従来と同等以上の性能を発揮できることが、第三者機関(日本建築総合試験所)の技術性能証明によって確認されています。
実用化に向けた第一歩
この革新的な技術は、2024年10月に着工した神戸学院大学有瀬キャンパス1号館(兵庫県神戸市西区)で初めて実用化されます。
【建物概要】
・用途:学校施設
・構造:鉄骨造
・規模:地上3階建て
・工期:2024年10月15日~2026年3月31日
今後の展望と社会的意義
近年、中高層建物の木造化への需要が高まっています。竹中工務店は「KiPLUS WAVY」を含む木造技術を通じて、以下の目標達成を目指しています
・木造・木質建築の普及促進
・国産木材の積極的な活用
・脱炭素社会の実現への貢献
【主な用語解説】
・CLT(Cross Laminated Timber)
丸太から作られた板を、繊維方向を直交させながら積層して接着した木質建材。強度が高く、大規模建築にも使用可能。
・KiPLUS WAVY
CLTと波形鋼板を組み合わせた新しい耐震壁技術。竹中工務店の登録商標(特許出願済)。
・波形鋼板耐震壁WAVY
鋼板を波形に加工し、耐震性能を持たせた壁。竹中工務店が開発した技術で、多数の実績あり。
・山形鋼
断面がL字型をした鋼材。耐震壁の補強材として使用。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,CLTを活用した大規模・高層建物に適用可能な耐震壁技術「KiPLUS WAVY」を開発~KiPLUS壁シリーズの第2弾が完成~,https://www.takenaka.co.jp/news/2024/11/01/