国土交通省、建築着工統計調査報告(令和6年9月分)好調な貸家と回復傾向の首都圏
建築業界の動向を示す重要な指標である建築着工統計の最新結果をお伝えします。住宅建設と商業施設の建設状況から、日本の建築市場の現状が見えてきます。
新設住宅着工の全体像
【戸数と推移】
9月の新設住宅着工戸数は68,548戸となり、前年同月と比べて0.6%減少しました。これで5か月連続の減少となります。一方、季節要因を調整した年率換算値は80万戸で、前月比では3.0%増加しました。これは市場に若干の改善傾向が見られることを示唆しています。
【住宅の種類別状況】
住宅の種類別に見ると、以下のような特徴的な動きが確認できます。
■持家(個人が建てる住宅)
・着工戸数:19,350戸
・前年同月比:0.9%減
特徴:34か月連続の減少が続いており、個人の住宅建設意欲の低迷が長期化。
■貸家(賃貸住宅)
・着工戸数:31,033戸
・前年同月比:4.4%増
特徴:前月の減少から増加に転じ、回復の兆しが見える。
■分譲住宅
・全体着工戸数:17,921戸(前年同月比7.0%減)
・マンション:7,651戸(同6.1%減)
・一戸建て:10,110戸(同8.2%減)
特徴:5か月連続で減少しており、不動産市場の停滞が継続。
商業用建築物の動向
【民間非居住建築物の状況】
商業施設や事務所など、住宅以外の建築物の状況は以下の通りです。
■増加した用途
・倉庫:前年同月比46.7%増(3か月ぶりの増加)
物流施設需要の高まりを反映。
■減少した用途
・事務所:前年同月比14.6%減(2か月連続減少)
・店舗:同21.9%減(6か月ぶりの減少)
・工場:同22.5%減(前月の増加から再び減少)
地域別の動向
【三大都市圏の状況】
■首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)
・総戸数:前年同月比11.5%増
特に貸家が20.8%増と大きく伸長。
マンションも24.1%増と好調。
■中部圏(愛知、岐阜、三重、静岡)
・総戸数:前年同月比11.9%減
全般的に弱い動き。
マンションは30.5%減と大幅な減少。
■近畿圏(大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山)
・総戸数:前年同月比2.8%増
貸家が13.8%増と堅調。
ただしマンションは17.4%減と振るわず。
市場動向の分析
この統計から読み取れる現在の建築市場の特徴は以下の通りです。
■住宅市場
・貸家セグメントに回復の兆しが見られる
・持家の需要低迷が長期化している
・分譲市場全般に力強さを欠く
■商業用建築
・物流関連施設の需要が引き続き強い
・オフィスや店舗など商業施設への投資は慎重な姿勢が続く
・工場建設も様子見の状態
■地域特性
・首都圏の回復が顕著
・地方圏では依然として弱い動きが続く
今後の動向を見る上では、金利環境や建築費の推移、経済情勢の変化などが重要な指標となりそうです。特に持家の低迷からの回復がポイントとなるでしょう。
出典情報
国土交通省リリース,建築着工統計調査報告(令和6年9月分),https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001260.html