建設データプラットフォームとは。注目される理由と活用事例を解説

建設業界は、デジタル化の波を受け、大きな変革を迎えています。とくに、建設データプラットフォームの活用によって、分散管理されていたデータを一元化し、リアルタイムで共有・分析できるようになりました。

中小企業においても、活用・開発されるケースも増加しており、プロジェクト管理の効率を飛躍的に向上させるツールとして、注目が集まっています。

本記事では、建設データプラットフォームの概要と注目される理由、代表的なプラットフォームなどについて詳しく解説していきます。

「建設データプラットフォームとは」

建設データプラットフォームとは、建設業界の様々なデータを一元管理・活用するためのシステムです。プロジェクトの効率化やコスト削減、品質向上などを目的として、開発・運用されています。

また、以下のような機能がある点も知っておきましょう。

  • データ統合・共有機能-プロジェクトに関わる全てのデータを一元管理する。設計図や施工計画、進捗状況、コスト管理情報などが一つのプラットフォームに集約される。そのため、関係者全員が同じ情報にアクセス可能できる。
  • リアルタイムデータ分析-建設プロジェクトの進捗状況をリアルタイムでモニタリングし、分析できる。予期せぬ問題や遅延が発生した場合、即座に対策を講じられる。また、過去のデータを活用した予測分析によって、将来のプロジェクトにおけるリスクを事前に特定することも可能。
  • 容易なアクセスと現場管理-スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを利用して、現場からリアルタイムでプラットフォームにアクセスできる。現場の作業員が直接データを入力・更新できるため、オフィスと現場間の情報共有がスムーズに行われ、作業効率が向上する。

建設データプラットフォームが必要とされる3つの理由

ここでは、建設データプラットフォームが必要とされる3つの理由についてみていきましょう。

データの断片化を防ぎ効率性を高める

建設業界では、これまでプロジェクトごとに大量のデータが生成されてきました。しかし、異なるシステムや形式で管理されることが多く、情報が断片化されるケースが多かったといえるでしょう。

断片化されたデータは、情報の共有不足やミスコミュニケーションを引き起こし、プロジェクト全体の効率を低下させます。

しかし、建設データプラットフォームは、データを一元管理し、全ての関係者がリアルタイムで同じ情報にアクセスできる環境を提供できます。そのため、効率性を大幅に向上することが可能です。

コスト管理とリソース最適化の実施が必須

建設プロジェクトでは、多くのコストがかかることから、管理が複雑になることも少なくありません。適切なコスト管理が行われない場合、予算超過や無駄なリソースの消費が発生し、プロジェクトの収益性が低下するケースもあるでしょう。

しかし、建設データプラットフォームを導入することで、予算管理と実際の支出をリアルタイムで追跡し、コストの透明性を確保できます。また、リソース(人材、機材、材料など)の使用状況の最適化や無駄の削減によって、プロジェクト全体のコストパフォーマンスを向上させることもできます。

リスク管理と意思決定を迅速化する必要がある

建設プロジェクトは、適切なリスク管理が大切です。従来の方法では、リスクが顕在化してから対策を講じることが多く、マンパワーに頼ることも多い状況でした。そのため、プロジェクトの遅延や追加コストの発生を防ぎきれないという事態に陥っていたといえるでしょう。

建設データプラットフォームは、リアルタイムでのデータ分析や可視化を通じて、潜在的なリスクを早期に発見し、管理者や作業者の迅速な意思決定をサポートできます。

問題が大きくなる前に適切な対応を取ることができるため、プロジェクトのスムーズな進行や事故の予防が可能です。また、過去のデータを活用して、将来のプロジェクトにおけるリスク予測や最適な意思決定のサポートにも役立ちます。

建設データプラットフォームの事例

建設データプラットフォームの開発・活用事例についてみていきます。

大成建設

大成建設の「T-iDigital® Field」は、建設現場のデジタル化を推進する「大成デジタル戦略」の一環として開発されたシステムです。ICT技術を活用して、現場作業の効率化と安全性の向上を目指しています。

主な機能は、IoTセンサーを用いたリアルタイムな作業員の位置情報管理やBIMデータとの連携による進捗状況の可視化、AIを活用した作業の最適化などです。現場の生産性向上やリスク管理、意思決定の迅速化を支援しています。

長谷工コーポレーション

長谷工コーポレーションの「長谷工版BIM」とAIプラットフォーム「Tektome」を統合したプラットフォームを開発中です。IoTセンサーやAI技術を活用し、現場の進捗状況や作業員の動向をリアルタイムで監視・管理できます。

また、BIMデータと連携することで、設計から施工までの一貫したプロジェクト管理が可能です。関係者間での情報共有が円滑になり、現場の作業効率と品質管理が向上することを目的としています。

AOSデータ

AOSデータが発表した建設データプラットフォーム「IDX.jp」は、建設業界のDX推進を目的として開発しています。たとえば、技能データの共有と標準化によって、労働力不足の解消に貢献し、BIMデータ共有、IoT・AI統合によるプロジェクト管理の効率化を目指すとしています。

また、資材・コスト管理、品質・安全管理、環境負荷の可視化もサポート可能です。

導入時の課題と解決策

まず、建設データプラットフォームでは、初期コストや投資対効果を検討しましょう。システム実装時には、導入費用やカスタマイズ、インフラ整備の費用が発生します。

そのため、効率化によるコスト削減や生産性向上による利益がどの程度見込めるかを分析し、投資の妥当性を評価する必要があります。

次に、データセキュリティとプライバシーの保護は、プラットフォーム運用の中で最も重要な要素の一つです。建設業界では、プロジェクトごとに機密情報が含まれるため、アクセス権限の管理や暗号化の実施、サイバー攻撃に対する防御策を講じましょう。

最後に、新しいシステムを効果的に活用するためには、従業員がプラットフォームの操作に習熟する必要があります。教育・研修にかかるコストと時間を考慮しながら、実践的なトレーニングを実施し、スムーズなシステム導入を目指しすことが大切です

まとめ

建設データプラットフォームは、業界のデジタル化を推進し、プロジェクト管理の効率化や安全性の向上を図るための重要なツールです。リアルタイムのデータ収集や分析、BIMによる3D可視化、IoTやAI技術の統合によるプロジェクトの最適化が可能です。

導入や開発を検討する場合は、初期コストバランスを取るための費用対効果の分析、従業員の教育・研修などを検討する必要があります。建設業界におけるデジタル化の波について、今後も注目していきましょう。