スマートビルとは何か?メリットから国内外の事例まで解説
スマートビルは、建物の効率性や快適性、安全性を向上させるビルを意味する言葉です。大手ゼネコンでは、スマートビルの普及のためにプラットフォームの開発が進んでいます。しかし、スマートビルに対して、具体的にどのような技術が使用され、国内外の事例までは知らないという企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、スマートビルの定義や活用されている技術、実際の導入事例についてみていきましょう。
「トレンドワード:スマートビル」
スマートビルとは、最新のIT技術を活用して、建物の運営効率や快適性、安全性を向上させるビルを意味する言葉です。たとえば、エネルギー管理システムや通信ネットワークを駆使して、照明・空調・セキュリティなどを統合的に管理することが可能です。事業側はエネルギーも含めた運用コストの削減、居住者側は快適性を高められるというメリットがあります。
現在のスマートビルでは次のような項目を管理が可能です。
- 照明と電力の自動管理
- 空調システムの自動管理
- セキュリティ管理と利用状況の可視化
上記のデータは、IoTシステムによって収集されるため、情報の可視化やAIを用いた混雑状況分析や今後の変化予測も可能です。
スマートビルの概念は、1984年には登場しています。初期のスマートビルは、主にエネルギー効率の改善に重点を置いていたものの、近年はインターネットの普及やIoT技術の進化によって、より高度なシステム統合ができるように変化しました。
そのため、設備間の連携やプラットフォームを通じた効率的な管理という視点からスマートビルの普及が進みはじめています。
スマートビルに活用される技術
ここでは、スマートビルに活用される技術についてみていきましょう。建物内外のさまざまな情報を収集するためのセンサーに加え、収集されたデータを活用するための分析技術も必要です。
IoT
IoTによって、建物内のデバイスやセンサーをインターネットに接続し、データの収集とリアルタイムでの制御が可能となります。たとえば、空調システムが外部の気象情報を取得して自動的に温度を調整し、エネルギー消費を抑えるといった活用方法が代表的です。
スマートビルでは、IoTによって照明やエレベーター、セキュリティシステムなどがネットワークでつながり、一元的に管理できます。そのため、居住者の動きに応じたサービスの提供や、異常事態の即時対応も可能です
また、センサーは温度や湿度、照度、CO2レベルといった環境データをリアルタイムで収集します。
AI(人工知能)
AIは、収集されたデータを解析し、建物の管理効率を向上させることが可能です。たとえば、パターン認識や予測分析を行い、最適な設備運用計画を策定し、エネルギー使用量やメンテナンスコストを削減することもできるでしょう。
また、異常検知や将来的な需要予測によって、建物の運用コストを削減し、居住者の快適性を向上させられます。施設の安全性を強化するリアルタイムでの監視やリスク管理にも役立てられます。
たとえば、居住者の行動パターンや使用履歴を分析し、個々のニーズに合わせたサービスの提供が可能です。
BIM
BIMは、建物の設計や施工、運用に関するデジタル情報を3Dモデルを用いて、統合するシステムです。建物のライフサイクル全体を通じた情報管理を可能にします。たとえば、次のような機能がある点は知っておきましょう。
- 視覚化と設計検証:3Dモデルを視覚化して、設計を検証できる。設計上の不具合や衝突を早期に発見し、修正できる。リスクやコストなども設計段階である程度、把握できる。
- 情報の一元管理:建物に関するすべての情報を一元的に管理できる。素材や寸法、仕様、スケジュールなどのデータが含まれるため、関係者間のコミュニケーションがスムーズになる。進捗管理や情報共有でメリットがある
設備のメンテナンススケジュールを最適化したり、将来の改修計画に役立つデータ活用も可能です。
スマートビルの3つのメリット
スマートビルのメリットは、次の3項目が代表的です。
- エネルギー効率の向上
- 快適性の向上
- セキュリティの強化
スマートビルでは、システムやセンサーの連携によって、設備の状態を常に監視し、異常が発生する前に予防保全を行えます。突発的な修理費用を削減し、長期的なメンテナンスコストを抑えるだけでなく、居住者の住みやすさも向上するといえます。
また、建物全体の運用コストを削減し、環境への負荷を低減することも可能です。居住者は、常に快適で健康的な環境で生活や作業ができるため、満足度が向上する点もメリットといえるでしょう。
スマートビルの国内外事例
ここでは、国内と海外のスマートビル開発事例をみていきましょう。
国内の事例
東京・芝浦エリアでは、野村不動産とJR東日本による「BLUE FRONT SHIBAURA」が展開されており、スマートビルや商業施設を含む大規模な開発が行われています。スマートビルに関しては、日立製作所も関わっており、オープンプラットフォームを用いてデータの収集や連携を行っていくと表明しています。
また、「渋谷ソラスタ」も日本の代表的なスマートビルです。施工には、東急不動産や清水建設が関わっており、IoTを活用した空調操作や位置情報の確認、場所ごとの混雑状況の可視化が行われています。
海外の事例
オランダ・アムステルダムにある「The Edge」は海外のスマートビルの中でも、代表的な事例だといえるでしょう。28,000個のセンサーを搭載しており、アプリによって従業員の車の認識からゲート開閉、席の案内まで可能です。
また、アプリがバルコニーやミーティングルームなど、様々なワークスペースを従業員のニーズに合わせて案内するため、生産性向上が図られています。加えて、環境にも配慮したシステムを活用しており、従来のビルと比較すると、エネルギー削減率は70%を超えています。
アプリの設計としても、上司が部下のアプリにアクセスできない仕様となっているため、プライベートも守られています。
まとめ
スマートビルは、エネルギー効率の向上や居住者の快適性の確保、メンテナンスの効率化などが可能となるビルです。
すでにプライベートの課題も解決している事例もあることから、今後はスマートビルが増加していくことが期待できます。今後のスマートビルの動向に注目しておきましょう。