2024年3月の建設業法や入契法に関連した改正案とは?
建設業に関連する法律は、繰り返し改正を続けています。2020年4月にも改正されており、そのタイミングでは働きやすさと生産性の向上を図ることが主な目的でした。
また、関連法案として、2019年には「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が交付され、2024年3月にはさらなる改正案が国会に提出される予定です。
では、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」はどういった内容で建設業法や入契法とどのような関連があるのでしょうか。
本記事では、建設業や入契法の内容にふれたうえで、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の内容や今回の改正案についてみていきましょう。
目次
これまでの建設業法の内容
建設業法は、次のような内容を定めた法律の総称です。
- 建設業に該当する工事や事業内容の範囲
- 建設業における許可(国土交通省か都道府県知事の許可、5年ごとに更新など)
- 請負契約の内容に対する規制(見積りに記載しなければならない内容、元請けの義務など)
- 現場における主任技術者・監理技術者の設置(監理技術者を置かなければ、特定建設事業者は4500万円以上(建築一式工事は7,000万円)以上の工事の受注・施工ができない)
違反した場合、行政からの指示や営業停止、建設業の許可取り消しといった処分が下ります。
これまでの入契法の内容
入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)は、次のような内容を記載しています。
- 入札・契約の過程の透明化
- 工事の内容の公表(名称や場所、種別)
- 一般競争入札に参加しようとした者の名称や落札者・入札者の名称
- 入札・契約の過程に関する苦情を適切に処理する方策
- 入札・契約の過程や契約内容について第三者意見を適切に反映する方策
工事の入札や工事において、透明性・客観性を担保するための法律だといえます。
2019年の建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案の内容
出典|国土交通省:建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律
ここでは、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の
一部を改正する法律案」についてみていきましょう。2019年の段階で策定された目的を把握することで、2024年の改正目的が把握しやすくなります。
働き方改革の促進
中央建設業審議会が、長時間労働是正のために工期に関する基準を作成・勧告しました。著しく短い工期の請負契約の締結の禁止や違反者への勧告などが定められています。
時間外労働の上限規制もふまえて適正な工期の設定と社会保険の加入、労務費の現金払いなどが義務となりました。
建設業者も工程の細目を記載し、工種ごとの作業に必要となる日数を見積り、施工しない期間や日数も見積書に含める規定となっています。また、入契法によって、官公庁の工事発注の時期を平均化する努力義務も課されているため、企業の経営が安定しやすくなったといえます。
生産性向上
管理技術者を補佐する技士補制度を策定し、技士補の設置によって、複数の現場を兼任できるようになりました。また、下請業者が配置する主任技術に関しても、上位の下請業者が配置した場合は、配置しなくてもよくなり、人材の適正配置が可能となっています。こは専門工事一括管理施工制度のことであり、一式以外の一定金額未満の下請工事・元請が注文者と下請の承諾・合意を得て、3次下請けを使用しない場合は下請けの主任技術者をおく必要がなくなりました。
工場から出荷された建築資材の不具合によって、施工不良が生じた場合、建設業者だけでなく、製造事業者にも是正勧告・命令ができるようになりました。これまでは、施工不良の原因が材料にあったとしても建設業者が咎められるケースが多かったため、原因をしっかりと追及するように変化した点は多くの事業者にとって負担の軽減になるでしょう。
事業環境の確保
経営業務は元々の規定では、過去5年以上の経験者が役員にいる必要がありました。しかし、この改正案によって、多様な人材が経営に関われるように変化しています。下請けの企業も含めて社会保険に加入しなければ、建設業の許可・更新を認めないといった内容も盛り込まれました。
また、事業の譲渡や法人の合併、相続の事前認可を行うことが可能となり、事業承継がより行いやすくなっています。事業者による工事現場のリスクに対する情報提供、下請が元請の義務違反を告発した場合の不利益な扱いの禁止、災害発生時の地方公共団体との連携の努力義務などもこの改正案によって定義されました。
2024年3月における改正法案提出の内容
2024年の3月に国会に提出された改正案については、次のような内容が盛り込まれています。
- 適正な請負代金・工期が確保された建設工事の環境を整備する(原価に満たない請負代金の請負契約や著しく短い工期の工事の禁止)
- 通信技術の活用に関する指針の策定
- 公共工事における施工台帳の提出の合理化
この中でも各社が独自に取り組んでいる通信技術の活用に対して、どのような指針が出るのか注目だといえるでしょう。大手ゼネコンでは、BIM/CIMの活用をはじめ、独自のプラットフォームや生成AIの活用や開発が進んでいます。
しかし、業界全体でみれば、ドローンによる測量やペーパーレスも導入が難しい事業者も多い状況だといえます。そのため、指針の策定によって導入が進めば、業界全体の業務効率化につながると想定されます。
まとめ
建設業法や入契法は、繰り返し改正されており、今後も規制内容によっては更に改正されていくといえるでしょう。残業や請負金額の適正化、労働人口の減少など、対応しなければならない項目は多いものの、法律の整備が進むことで業界内の流れが変わる点に期待できます。
今後は、法律的にも、より生産性や適正な契約が求められていくことから、罰則も強化されていくと想定されます。そのため、義務や違反した場合の罰則などはよく確認しながら業務を行っていきましょう。