2024年問題目前!安全性向上と業務改善に挑む。安全点検業務のペーパーレス化とは?|SORABITO

建設現場の安全性は、チェックする人材の経験やスキルに左右されるケースが多いのではないでしょうか。実際に、ほとんどの企業や現場では、KY活動を実施しているものの、形骸化しているケースも想定されるでしょう。 

本記事では、建設業界における安全対策の現状や点検業務の現状について解説します。

建設業界の安全に対する現状と課題

ここでは、建設業の安全に対する現状についてみていきましょう。前提として、建設業界は、他の業界と比較し、ケガや死亡事故の多い業界となっています。墜落・転落、崩壊・倒壊といったさまざまな原因があるものの、墜落・転落は日々の安全点検によって防げる部分も多いのも事実です。

しかし、安全点検業務においては、管理者の思いとは裏腹に、現場での日常点検の実施状況の把握が難しく、また現場担当者の経験値等、属人的な管理により早期にエラーを検知することが難しい現状があります。そのため、事故を完全に防ぐことが難しくなっていると想定されます。

死亡災害の発生数率は減少しているものの…


出典:厚生労働省 国土交通省「建設業における安全衛生をめぐる現状について

厚生労働省・国土交通省の「建設業における安全衛生をめぐる現状について」を参照すると、建設業における死亡事故は令和3年までには減少し続けているといえます。 昭和44年には2,492人だったものの、令和3年では288人に減少しました。しかし、建設業では、年間で約300人の人々が亡くなっている状況にあります。

全産業に占める建設業の死亡者割合は高い

2022年における全産業(774人)に占める建設業の死亡者割合は36.3%(281人)でした。建設業の事故が発生した場合、死亡事故であることが多く、全産業の中でも人命を失うリスクが高くなっていることがわかります。

墜落・転落による死亡が多い

出典:厚生労働省 国土交通省「建設業における安全衛生をめぐる現状について

建設業における死亡事故は、主に墜落・転落が占めているといえるでしょう。以下の図からすれば、年間で約300人以上の人々が屋根や屋上の開口部からの墜落・転落、足場や足場の手すりの点検不足によって死亡していることを示しています。

出典:厚生労働省 国土交通省「建設業における安全衛生をめぐる現状について

点検に関しては、令和5年3月には、一側足場の使用範囲や点検者の指名、名簿の記載を行う義務が追加された労働安全衛生規則が施行されます。ただし、実際に足場の点検を行う作業者には負担が増加すると想定されるため、法令遵守を意識しながら業務効率化するための対策が求められている状況です。

■安全点検業務における法令改正について

厚生労働省は建設業における墜落・転落による死亡災害は長期的に減少傾向にあるものの、建設工事の現場においては、今なお墜落・転落による死亡災害が多くなっています。
このため、建設業における墜落・転落災害の防止対策を一層充実強化していくために、労働安全衛生法令の改正も視野に必要な方策について検討することし、法令改正も含めて、安全対策には次のような事項が検討されています。

  1. マニュアルの作成・普及
  2. 足場の確実な点検
  3. 足場の解体・組み立てにおける作業手順の遵守、手すり先行工法のガイドラインの内容の充実・周知・指導など
  4. 足場の壁つなぎの間隔

労働災害の発生を防ぐための法令改正は重要である一方、現場への負担はさらに大きくなっていくといえるでしょう。まずは、法令改正の有無に問わず、安全で、そして効率的に点検業務を行って労働災害を未然に防ぐということが必要です。

安全点検業務の3つの課題

現状の安全点検業務には、大きく分けて次の3つの課題がありませんか。

  • 点検実施状況の把握
  • 作業員によるチェック不足(点検結果の精度)
  • 点検表の回収、承認、回覧など管理業務の効率化

作業員が健康で安全に働ける現場づくりを行っていくためには、2024年問題を意識しながら作業効率化を図ったうえで、安全対策点検の精度向上に取り組んでいかなければなりません。

  • 日常点検の徹底
  • 重機、設備の点検のほか、作業員の健康チェックの一元管理且つ、エラー検知できる仕組み
  • 現場訪問を前提としている安全パトロールの効率化

現在は「紙の点検表」で管理を行っている現場が多いため、作業状況の把握に時間がかかったり、実施した点検内容の不備といった問題の早期発見が困難な状況にあります。また、紙で管理する事に対する手間も発生しています。
では、この「紙の点検表」をぺーパ―レス化するとどのようになるのでしょうか?
ペーパーレス化することで、以下のような変化が起こります。

  • 紙の点検表をデジタル化される
  • 紙の点検表の管理から開放される。
  • 遡って書類を探したり確認する必要がなく、欲しい情報へすぐにアクセスできる
  • デジタル化することで、点検業務のリアルタムで把握、安全に関する早期の検知ができる  

つまり、ツールやシステムなどを導入することで、人材に頼らずにモニタリング業務を効率化し、安全精度の向上に繋げることができるのではないでしょうか。

建機や設備、作業従事者に対するチェックについてペーパーレス化のニーズがある

項目ごとにみていくと保安施設の点検や重点項目、作業従事者の健康チェックに対して、ペーパーレス化のニーズが高いことが把握できます。一方で、多くの企業が、ペーパーレス化に期待しながらも、紙の点検表で運用している現状であることがわかります。
様々な業務においてDXツールの導入が進む中、まだまだ未開の領域となっていることが分かりました。

安全点検表のペーパーレス化を始めよう

安全点検表のペーパーレス化に取り組む場合、実際に日常点検を実施する作業員にも労力が発生すると想定されます。ITツールへのアレルギー反応や紙の点検表を使う方が作業がラクというような反応は出てくるでしょう。
そういった反応を考慮し、直感的な操作性が実現されているか、システムへのログインが容易なものであるか、など様々な観点でシステムを評価していくことが重要ではないでしょうか。

たとえば、点検作業を実施する作業員にとって次のような機能を持っていることが、紙の点検表と変わらない作業を行ううえで重要ではないでしょうか。作業員にとって負荷なく使えるツールを選択することが安全点検業務の管理の効率化、安全点検の精度向上につながるでしょう。

  • IDやパスワードを入力しなくてもログインできる
  • チェック項目をWタップするだけで赤色表示になりエラー情報が登録される
  • 通信環境が整わない環境でオフラインでもツールを使用できる

まとめ

建設業界は、死亡事故の多い業界となっています。その主な原因は足場や開口部からの墜落・転落です。現場におけるKY活動を行っていたとしても、毎年300人近くの人々が亡くなっている状況にあります。
安全点検業務をツールやシステムで実施できることで、紙の管理により後手になっていた早期のエラー検知が可能です。これにより、安全管理の精度向上が実現でき、安全パトロールの効率化も期待されます。

2024年問題を目前に控える今、安全点検業務効率化や持続可能な現場運営のための更なる精度向上への取り組みとして、点検業務のデジタル化を検討してみてはいかがでしょうか。