PLMとは。建設業でも活用できる?事例を解説

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著者:鈴原 千景

建設業においては、AIやBIM/CIMの活用が広がっており、作業の効率化や生産性向上が図られるようになりました。しかし、課題も多く、中小企業にいたっては、従来の工程やフローから全く変わっていないというケースも多いといえるでしょう。

そうした状況の中で、製造業の製品サイクルの効率化を行えるPLMを建設業に応用する動きが出てきています。本記事では、PLMがどういったものか、建設業に与える影響や事例についてみていきましょう。

「トレンドワード:PLM」

PML(ProductLifecycleManagement)は、以下のような順番で進んで行く製品のライフサイクルの情報を管理・共有するという考え方です。

  1. 企画
  2. 設計
  3. 計画
  4. 調達
  5. 製造
  6. 販売
  7. 廃棄

また、システムとしても確立されており、PLMシステムを活用すれば、設計と製造に関する次のような情報を効率的に共有することが可能です。

  • 製品設計
  • 要件管理
  • CADデータ
  • 開発スケジュール
  • 原価
  • 取引先情報

製品によって、機能が異なるものの、自社の課題に合わせてカスタマイズできるものが多く、他の業務効率化システムと連携も可能な点が特徴です。とくに、製造業において使用されるケースが多く、開発スケジュールの共有やコスト管理もできるため、複数の部署やチームと共同のプロジェクトを実施する場合にも役立ちます。

PLMとPDMの違い

PLMと似た概念として、PDM(ProductDataManagemen)があります。しかし、次のように対象となる範囲が異なる点は知っておきましょう。

  • PLM-企画から廃棄に至るまでの一連のデータやプロセスを管理できる
  • PDM-CADやBOM(部品)データを管理できる

とくにPDMに関しては、ワークフローや検索機能など、一元管理ができる点と製品の品質がしやすくなる点が魅力だといえます。建設業における建具や材料などにおいては、PLMとPDMの仕組みがメリットの1つになるといえるでしょう。

たとえば、これまでは設計図面から材料の数量を拾い、発注するという流れであれば、建物の種類ごとに行うしかありませんでした。しかし、PLMの仕組みを活用できれば、どのような建物であってもデータ整理や一元管理が可能となります。また、部門を超えた情報共有が可能となるため、BIMと組み合わせればよりスムーズな施工に期待できるでしょう。

建設業とPLM(システム)の関連性

建設業とPLMの関連性についてみていきましょう。PLMは簡潔にいえば、企画から廃棄にいたるまでの各プロセスを管理・最適化するためのシステムだといえます。そのため、無駄なコストの削減やクライアントのニーズや提案を反映した製品作りなども可能となるため、品質向上にもつながるでしょう。

建設業における廃棄は解体が該当し、企画や設計は製造業と同様にある程度決まったフローがあり、そのフローを様々なツールやプラットフォームを使い、迅速化・簡略化することが求められている状況です。

建設業に関しては、生産性の向上と品質の向上が常に求められており、その中で労働人口の減少が課題となっています。そのため、PLMをはじめとした管理システムを取り入れる必要性が高まっていると想定されます。

共通のメリットがある

現状は製造業と建設業では、対象となる部材が異なるものの、PLMの活用によって次のようなメリットが生まれます。

  • 生産性向上
  • 品質
  • コストの削減

「設計や企画の段階で複数のシステムで検索している」、「担当部門とのデータ共有が上手く出来ず毎回担当者が苦労する」といった状況であればPLMを導入することで解決できるでしょう。

また、部材の原材料の発注や現状のフロー、スケジュールの見直しにも活用できるため、データを共有する手間が省け、スムーズなプロジェクトの進行が可能となります。

DX推進につながる

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112420.html

BIM/CIMをはじめとして、建設業ではデジタル化や効率化が進められています。現状では、DXを意識したシステムやこれまでのフローの見直しはゼネコンや大手企業以外であれば少ないものの、今後は業界として対応しなければならない状況に変化しつつあるといえるでしょう。

PLMやBIM/CIMを含むプラットフォームは部分的に組み合わせが可能なものであり、今後はよりそういった取り組みが業界内で浸透していくと想定されます。また、製造業に関しては、企業によって差があるものの、建設業よりもデジタル化やDXは進んでいる状況にあります。そのうえで、他業界のシステムやツールを利用する取り組みはより加速していくと想定されます。

建設業におけるPLMの活用事例

ここでは、建設業におけるPLMの活用事例についてみていきましょう。

竹中工務店

竹中工務店とArasは共同で、PLMによる建設業の施工部門のプラットフォームを構築しています。竹中工務店は、BIMに関連するプラットホームをすでに構築していたものの、今後より建設業に従事する労働者が減少していくことから、生産性の向上に焦点を当てて今回の施工部門に向けたプラットフォームを構築しました。

Arasの「ArasInnovator」を活用し、プロジェクトシステムやデータ基盤の寸断を失くし、1つのシステムで一元管理できるようになることを目指します。

東芝エレベータ

東芝エレベータとラティステクノロジーは、東芝エレベータが持つ建設・製造CADデータの一元管理用に「XVLPlayerPlus」を共同開発しています。

エレベーター業界では、設置にはBIMデータ、制作にはPLMデータの連携が必要となっており、データ形式としてXVLを採用し、誰でも簡単に閲覧・情報共有ができる仕組みを作りました。

まとめ

建設業における生産性向上、業務効率化は決まった基準があるわけではなく、各社が独自のデータを用いて業界の課題に向き合っている状況です。BIM/CIMの活用という面でも、活用できている企業とそうでない企業に分かれているといえるでしょう。

しかし、建設業全体の課題である生産性の向上は、従来までのフローや仕組みでは解決できないものも少なくありません。製造業の管理システムの1つであるPLMの活用も建設業の課題解決にアプローチするための方法です。

今後、建設業の課題解決のために、PLMが多くの場面で採用されていく可能性もあるため、注目しておきましょう。