建設業界の挑戦に迫る、見積もりプロセスの効率化(後編)|株式会社GACCI
GACCIは2021年に設立した会社で、2023年4月に見積業務を効率化するクラウドサービスをリリースしました。
BuildApp Newsでは、建設業界の見積業務効率化に変革をもたらす「GACCI」を開発した株式会社 GACCI 代表取締役CEO 若本憲治氏のインタビューを元とした連載を2回にわたりお届けします。
建設業では慢性的な人手不足が課題となっている中で、2024年には労働時間の上限規制もスタートする予定です。従来通りのやり方では行き詰まってしまうことが明白ですが、どのような対策を講じればよいのでしょうか。本記事では建設業の課題を整理した上で、導入するべきツールやサービスについてご紹介します。
建設業の課題を解決するには
前編では、建設業の抱える課題を整理しました。2024年問題が迫る中、早急な対策が求められています。ここでは、建設業で始まっている取り組みについてまとめてご紹介します。
新3Kの実現
いわゆる「3K」とは、「きつい・汚い・危険」の3つの頭文字(K)が当てはまる労働環境のことを指します。特に建設業・介護・農業といった肉体労働のブルーカラー(技能系職種)が該当します。
そしてこういった状況を改善するため、建設業では「新3K(給与・休暇・希望)」を掲げています。現場で働く人々の誇り・魅力・やりがいの向上を図ることを目的とし、業界全体の魅力向上を図ります。具体的には、国土交通省で下記のような取り組みが行われています。
①給与
「労務費見積り尊重宣言」で促進モデル工事を実施しました。この取り組みでは、日建連による「労務費見積り尊重宣言」を踏まえ、下請企業からの労務費見積を尊重する企業を、総合評価や成績評定において優位に評価します。2020年度は全国でモデル工事を発注し、約20件の実績を挙げました。
②休暇
直轄工事では「週休2日」を確保できるよう適正な工期設定や経費補正を実施し、着実に進展させています。週休2日の確保状況に応じて労務費等を補正するとともに、成績評定を加減点する「週休2日対象工事」を発注しました。
2024年度からは時間外労働規制が始まるため、今後も計画的に取り組みを行う予定としています。工期設定指針の主な内容は、下記となります。
- 施工実日数のほか、準備・後片付け期間、休日、天候等を考慮
- 余裕期間制度の原則活用
- 受発注者間の工事工程の共有
③希望
建設現場の生産性を向上するため、「i-Construction」の推進を図っています。具体的には、「ICT施工」に取り組んでいます。
今後のi-Constructionの推進に向けては、中小企業や地方公共団体等への裾野拡大が不可欠です。そのため「i-Construction大賞」により地方公共団体やベンチャー企業等の優れた取組を表彰し、好事例の横展開を図っています。
デジタル化・自動化
建設業は、毎回「違う場所で、違うものを、違うチームで作る」という特殊性があります。そこに何百社も関わっていく中で、当然企業文化や専門性が違います。コミュニケーションのロスをいかに改善するかが課題です。特に事務業務は非常に煩雑を極めており、中でも元請け企業は工事費用の「見積業務」に多くの時間を割いています。
一般的に見積業務では、数十社の企業からの見積の集約作業が必要です。しかし総合建設業、専門業者、建設機械を提供する企業等、様々な企業間でフォーマットや提出方法、内容の粒度が定まっていないのが現状です。
そのため、集めた見積を手作業で一つのフォーマットにまとめる必要があります。これを一つの工事で複数回行うことも多く、数社が参加するコンペの場合であれば、受注前だけでなく受注後の再度見積も行われています。この見積業務の煩雑さが大きな要因となり、公共工事の入札に当たっては、本来最も重要な「工事の分析や経営判断を通じた見積精査が難しい」という業界課題がありました。
ただしデジタル化や自動化を進めるためには、コスト面での負担が伴います。中小企業にとって費用の負担は大きく、重要な課題となっています。また「ツールがややこしくて使いづらい」となる事例も多いため、現場の状況に即したツールを導入することが求められます。
GACCIとは|おすすめDXツール
「GACCI」は建設業の煩雑な見積業務をSaaSで効率化、最適化するプロダクトです。建設業の課題解決に向け、数十社にわたる何千項目ものデータの厳密な管理、平準化を通じ、効率的な見積業務を可能にします。
GACCIでは、元請け会社の方に月額登録制でサービスを導入頂く必要があります。元請け会社は各種工事の発注を受けた協力先の会社を、GACCIに登録します。元請け会社は施主から必要な建設図面を入手、GACCIに読み込ませます。
建設図面は高精度なOCR機能によって読み込まれ、見積りに必要な項目が自動的に抽出され、リスト化されます。元請け会社はそのリストから、例えば「項目1から項目5までは塗装業者のA社に依頼し、項目6から項目10まではサッシ業者のB社に依頼しましょう」といった具体的な割り振りを行い、それぞれに見積依頼を出します。
入力された金額はフォーマットに統一され、元請け会社がGACCIのリストを確認すると、各業者の見積金額が入力されていることが分かります。元請け会社はこれらの金額を精査し、外注業者と詰めていくことができます。また相見積りを行うことも可能であり、複数の見積りを比較・検討することも可能です。
まとめ|建設業でDX推進
国土交通省では、建設業全体の改革を進めるべく「新3K」に取り組んでいます。一方で現場レベルでは、各状況に合わせた最適化を行う必要があります。GACCIのようなデジタルサービスを導入すれば、繁雑化していた業務が効率化できるでしょう。適切な対策で、DXの推進が求められています。