【連載】建設業の煩雑すぎる見積もり業務| GACCI 代表取締役CEO 若本憲治様(前編)

GACCIは2021年に設立した会社で、2023年4月に見積業務を効率化するクラウドサービスをリリースしました。

BuildApp Newsでは、建設業界の見積業務効率化に変革をもたらす「GACCI」を開発した株式会社 GACCI 代表取締役CEO 若本憲治氏のインタビューを元とした連載を建設現場のプレコンストラクションに革命を」と題して、2回にわたりお届けします。

連載1回目は、CEO 若本憲治氏の視点で語る「現在の建設業界における課題と対策」です。
業界の置かれている状況・課題を改めて考え、日々の見積もり業務を見直すきっかけになればと思います。

「GACCI」 開発の経緯と見えてきた課題

GACCIは2021年に設立した会社で、2023年4月に見積業務効率化するクラウドサービスをリリースさせていただきました。 元々私若本は、鳥取で10年ほど前より自動車の中古タイヤの輸出や通信販売の会社を経営しており、その関係で鳥取の企業をいくつか譲り受けていました。

その際、鳥取県内で情報ネットという公共工事の入札情報を扱う事業を、建設会社の友人から依頼され引き継いだことがGACCI を開発するきっかけとなりました。
既存のユーザーにヒアリングする中で、入札情報よりも、 見積業務が大変だという声が多くあり、この課題は中小企業だけでなく、スーパーゼネコン含め大手企業も時間を取られる作業だということがわかりました。

そこから、ジーズアカデミーでプログラミングを学びながらビジネスアイデアを磨いていき、GLOBAL GEEK AUDITIONで準優勝をいただくまでに至りました。そのことをきっかけに、Open Network Labの運営するSeed Accelerator Programに声をかけていただき、ブラッシュアップを重ねた結果、DemoDayでは最優秀賞をいただくことができました。

また、今回、クラウドサービスリリースと同時に、シードラウンドで、デジタルガレージグループの株式会社DGベンチャーズ(本社:東京都渋谷区、代表取締役会長 兼 社長:林郁)とOpen Network Lab・ESG1号投資事業有限責任組合(通称:Earthshotファンド)を引受先とする第三者割当増資により、1億円の資金調達を実施いたしました。

この資金を活用し、より多くのお客様に活用いただけるようなサービスをお届けできるよう尽力していきたいと考えています。

株式会社 GACCI 代表取締役CEO 若本憲治氏

建築業界で極めて煩雑な見積業務

建設業界は中小規模の企業が9割以上を占め、その経営状況は困難な状況にあると言われています。

特に事務業務は非常に煩雑を極めており、中でも元請け企業は工事費用の「見積業務」に多くの時間を費やしています。

一般的に、見積業務では、数十社の企業からの見積の集約作業が必要です。
建設業界のなかでも、総合建設業、専門業者、材料を提供する商社やメーカー、建設機械を提供する企業など、様々な企業間で、フォーマットや提出方法や、データ形式、内容の粒度が定まっていません。
そのため、集めた見積を人間の手で一つのフォーマットにまとめる必要があり、これを一つの工事で複数回行うことや、数社が参加するコンペの場合は、受注前に一度見積を作成するだけでなく、受注した場合には再度内容を精査した後、再度見積を行う必要がありました。

この見積業務の煩雑さが大きな要因となり、公共工事の入札にあたり、本来最も重要な、工事の分析や経営判断を通じた見積精査が難しいという業界課題がありました。

このような見積業務は、大手ゼネコンなどでも見積業務に特化した部署が存在するものの、負担は大きく、人手不足が問題となっています。特に中小の元請け企業は昼間の現場作業の後に見積作業を行うことが多く、非常に重荷となっています。

さらに、「2024年問題」として知られる労働基準法の改正により、猶予期間が2024年4月に迫りました。これまで猶予されていた建設業界や物流業界などの中小企業においても、時間外労働の上限規制が2024年4月から適用されることになりました。そのため、通常の業務時間内で見積業務などの煩雑な事務処理を適切に行うためには、業務改善が急務となっています。

一方、人手不足が深刻化している状況下で、これまで業務時間外に行っていた作業を業務時間内に行うための施策として、建設DXの推進が行われています。
しかし、デジタル化を進めるためにはコスト面での負担が伴うため、中小企業にとって負担は大きく、重要な課題となっています。

デジタルの力で見積業務を効率化

見積書の作成など、設計と施工の間に発生する業務は「プレコンストラクション」と呼ばれていますが、その領域の課題をデジタルの力で効率化し、課題解決に取り組んでいきたいと考えています。

建設会社の本来の業務は設計や施工といった非常にクリエイティブな領域なのですが、現在多くの事務作業に追われ、建設会社本来の業務にリソースが避けていないという現状があります。

私たちはGACCIを提供することで、煩雑な見積業務を効率化し、業界全体が本来の業務にリソースを集中できる環境を作り、過酷な労働環境を変えて行きたいと思っています。

まとめ

連載1回目は、CEO 若本憲治氏の視点から、現在建設業界が抱える深刻な課題と対策を語っていただきました。

連載2回目は、GACCIの提供するサービスの概要とその魅力について解説します。
後編は6月21日(水)アップ予定です!ご期待ください。