ZEB readyとは|認証費用や補助金をチェック
目次
トレンドワード:ZEB ready
「ZEB ready」についてピックアップします。省エネルギーの重要性が高まる中、建物の性能向上にも期待が高まっています。本記事では、ZEBの種類や概要、主な事例についてご紹介していきます。BEI値基準など、意外と知らない知識についても確認しておきましょう。
ZEB ready(ゼブ・レディ)とは
ここでは、ZEB readyの概要やBEI値といった基礎知識についてまとめていきます。「そもそもZEBとは?」といった基本事項から確認することで、理解を深めましょう。
そもそも「ZEB(ゼブ)」とは
ZEBとは「ゼロ・エネルギー・ビル」の頭文字を取った言葉で、省エネルギーに配慮した建築物のことを指します。具体的には「自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」と定義されています。
上図のように「年間の一次エネルギー消費量が、正味ゼロまたはマイナスの建築物」となり、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたZEB化の必要性は高まっています。
ZEBの種類|ZEB readyとは?
ZEBは高レベルの省エネ性能が求められるため、最初から実現するのは難しいケースも多いです。そのためZEBには、低い方から順に「ZEB Oriented、ZEB Ready、Nearly ZEB、ZEB」という4段階のレベルが設定されています。ここではZEBより低いレベルの3種類について、簡単にご紹介していきます。
①ZEB Oriented(ゼブ・オリエンティッド)
ZEB Oriented(ゼブ・オリエンティッド)は「ZEB Readyを見据えた建築物として、外皮の高性能化及び高効率な省エネルギー設備に加え、更なる省エネルギーの実現に向けた措置を講じた建築物」のことを指します。具体的には、以下の➀➁の要件を満たす必要があります。
- ➀該当する用途毎に、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から規定する一次エネルギー消費量を削減すること
A) 事務所等、学校等、工場等は40%以上の一次エネルギー消費量削減
B) ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30%以上の一次エネルギー消費量削減
- ➁「更なる省エネルギーの実現に向けた措置」として、未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入すること
ZEB Orientedは、後から追加された最も新しい定義です。これまで建築物全体(非住宅部分)でのみZEBの評価を可能としていた複数用途建築物について、建築物(非住宅部分)のうち一部の建物用途においても評価可能となるよう、複数用途建築物におけるZEBの評価方法を拡充するために追加されました。
②ZEB Ready(ゼブ・レディ)
ZEB ready(ゼブ・レディ)は「ZEBを見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物」のことを指します。具体的には「再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量削減に適合した建築物」のことを指します。
③Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)
Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)は「ZEBに限りなく近い建築物として、ZEB Readyの要件を満たしつつ、再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近付けた建築物」となります。認定には、以下①②の基準を満たす必要があります。
- ➀基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギー*を除く)
- ➁基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の削減(再生可能エネルギー*を含む)
省エネに加えて「創エネ」でエネルギーを創出することにより、従来の建物で必要なエネルギーの「25%以下」に抑えるのが特徴です。
「BEI値」とは|ZEBの判定基準
BEIとは、ZEBの評価で用いられる判定基準です。「設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量」で求められ、住宅・建築物の一次エネルギー消費量の基準の水準として広く用いられています。
ZEBの各レベルにおいては、下記のBEI基準が定められています。
- ZEB Oriented:BEI≦0.70
- ZEB Ready:BEI≦0.50
- Nearly ZEB:0.00<BEI≦0.25
- ZEB:BEI≦0.00
ZEB readyの事例
ここでは、ZEB readyの主な事例についてご紹介していきます。
①多摩市立中央図書館|東京都
東京都多摩市にある図書館です。一次エネルギー削減率は55%で、太陽光発電やLow-E複層ガラスといった設備が取り入れられています。
敷地内高低差を活かして約半分は地中とし、地上部分は高断熱ガラスとなっているのが特徴です。これにより、大幅な負荷低減と公園と連続する開放的な空間を実現しています。
また建物周囲には公園と景観的に連続する高木を植樹しつつ、建物勾配屋根の「深い庇」により負荷を抑制しています。勾配屋根頂部にハイサイドライトを設けることで、室内に柔らかな自然光が拡散する明るい室内環境を作っています。公園との一体感を存分に体感できる建築です。
②氷見市新文化交流施設|富山県
こちらは富山県氷見市にある文化施設で、一次エネルギー削減率は55%です。
市が策定した「氷見市まちなかグランドデザイン」における「環境負荷の低減を目指した省エネルギー建築物への取り組み」、「防災など安心・安全への対応」に基づきZEBを実現しています。
技術面では「高断熱建材と高効率設備の導入」により、空調負荷を低減し省エネルギーを図っているのが特徴です。また「太陽光発電と蓄電池」を導入して、自家発電設備と併用しています。これにより、災害で外部電力が遮断されても地域住民の一時避難場所・支援活動の拠点として必要最低限の電力確保が可能です。
③向日市役所庁舎|京都府
地下1階・地上5階建ての向日市役所の新庁舎で、一次エネルギー削減率は52%です。向日市らしさの象徴である「竹の径」をモチーフに、市民に愛されるまちの新たなランドマークに相応しい新庁舎となりました。
- 基本方針1:機能的・合理的な複合施設
- 基本方針2:誰もが利用しやすく親しみやすい施設
- 基本方針3:安心・安全な施設
- 基本方針4:地球環境にやさしい施設
- 基本方針5:将来の変化に対応する施設
上記の方針を基に、省エネルギー性能が高く市民にとって親しみやすい建物計画がなされているのが特徴です。照明には人感検知制御/明るさ検知制御を導入し、利便性が高く省エネルギー効率も高い設備となっています。
ZEB readyには補助金も|環境省
ZEB ready等に該当する建物には、補助金制度が設けられています。
環境省では、令和4年度予算総額60億円で下記3つの支援事業があります。
- ①新築建築物のZEB化支援事業
- ②既存建築物のZEB化支援事業
- ③既存建築物における省CO2改修支援事業
たとえば新築建築物のZEB化支援事業の「レジリエンス強化型ZEB実証事業」では、補助金額上限5億円となっています。詳しくは環境省サイトをご覧ください。
また経済産業省でも令和4年度予算総額83.9億円で、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB:ゼブ)の実証支援」を実施しています。
こちらはZEBの設計ノウハウが確立されていない民間の大規模建築物について、先進的な技術等の組み合わせによるZEB化の実証を支援するという内容です。詳しくは環境省サイトをご覧ください。
まとめ|ZEB readyで環境に優しい建物に
近年、エネルギー価格の高騰や物価高を受けて省エネルギーの重要性は再認識されています。ZEB readyなどの建築物は、自然エネルギーの利用や高効率化で大幅なエネルギー削減が期待できます。今後さらなる普及により、地球環境問題の改善が期待されるでしょう。