バイオ炭とは|活用事例や環境負荷低減の取組まとめ
目次
トレンドワード:バイオ炭
「バイオ炭」についてピックアップします。環境問題が深刻になる中、「炭素固定」ができる方法として注目が集まっています。本記事ではバイオ炭の概要や作り方、具体的な活用事例をまとめてご紹介していきます。
バイオ炭とは
ここでは、バイオ炭の概要や木炭との違い等についてご紹介します。
バイオ炭の概要
バイオ炭(読み方:バイオタン)とは「生物資源(バイオマス)を原料とする炭化物」のことを指します。農林水産省の定義では、「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」とされています。
https://agri.mynavi.jp/2022_05_26_192864/#toc-5
石油等の化石燃料を使うと「地中から大気中に炭素を放出する」動きが起こります。現在炭素が「CO2」として大気中に存在する量が増えていることで、地球温暖化に繋がっているのです。
しかし地球上にある炭素は形や存在場所を変えながら循環しているものの、全体の総量はほぼ一定となります。大気中のCO2をバイオ炭(C)として「固定化」してしまえば、大気中のCO2量を削減できるのです。
バイオ炭と木炭の違いは?
バイオ炭と木炭の主な違いは「原料」です。木炭の原料は木材ですが、バイオ炭は木材・竹・家畜糞尿・もみ殻・製紙汚泥・下水汚泥など多種多様となっています。農林水産省では「バイオ炭には、木炭や竹炭などが該当」とされており、「木炭はバイオ炭の一種」と言えるでしょう。
バイオ炭の作り方
https://evort.jp/store/kansai-sangyo/product/green-power-bio
農業や廃棄物処理の分野向けに、バイオマス製造装置が開発されています。籾殻や食品廃棄物を投入すれば、自動でバイオマスに加工できて便利です。生産した炭は肥料や土壌改良に利用できるので、有機ごみの再資源化ツールとして活用されています。
またバイオ炭は、野焼きでも生産可能です。まず材料をよく乾燥させ、広い場所で火を点けます。徐々に炭化していくので、適宜かき混ぜながら材料を追加しましょう。最後に水をかけて冷却すれば、バイオ炭の完成です。
「燃やす際にCO2が発生してしまうのでは?」と思われるかもしれません。しかしバイオ炭にすることでより多くの炭素が固定されるので、有効性の方が勝ると考えられています。ただし今後は、残存炭素の量を増やす技術を開発していく必要があります。
バイオ炭の活用事例
ここでは、バイオ炭の具体的な活用事例についてご紹介します。
①農業|土壌改良
バイオ炭を土壌に混ぜると、下記の効果が期待できます。
- ミネラル補充
- 保水力・保肥力の向上
- 土壌のPH中和効果
- 微生物の繁殖
近年は化学肥料の普及により、「農薬漬け」とも言うべき状況です。しかし炭は、昔から天然の肥料として使われています。実際にブラジルの土壌「テラ・プレタ」は、古代人がバイオ炭を活用して肥沃な土地に改良したことが知られています。
②環境|空気や水の浄化
https://www.mirai-kougaku.jp/eco/pages/210108.php
バイオ炭の表面には無数の穴が空いており、表面面積が大きいのが特徴です。そのため環境汚染物質を吸着し、水や空気の浄化作用があります。
具体的には、漁業での赤潮予防としての事例が報告されています。和歌山県の岩谷水産では「紀州備長炭の粉末を添加した飼料」を魚に与え、養殖漁場の水質保全を図る取り組みが行われています。これにより海洋汚染の抑制だけでなく、魚の品質向上にも繋がることが実証されました。
③建設業|バイオ炭コンクリート(清水建設)
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2022030.html
清水建設では、バイオ炭をコンクリートに混入することで炭素を貯留する技術を開発しました。バイオ炭コンクリートは普通コンクリートと同等の流動性があり、幅広いコンクリート構造物への適用が期待されています。
バイオ炭の原料には、廃材の「オガ粉」が使用されています。「炭素含有率は約9割、100年後の炭素残存率も約9割」という特性があり、長期にわたる炭素固定が実現します。
混和材1kgあたりのCO2固定量は約2.7kgで、コンクリート1m3あたり60kgの混和材を添加することで、約160kgのCO2を固定できるのが特徴です。
バイオ炭の問題点
バイオ炭の問題点としては、下記が挙げられます。
- 製造過程でCO2が発生する
- 過剰使用すると土壌に悪影響
上述のように、バイオ炭の製造過程では燃焼に伴うCO2が発生してしまいます。そのため、できるだけ効率的に炭化できる技術の開発が求められます。
またバイオ炭は土壌改良効果が認められているものの、過剰に使用するとPHが上昇してしまい悪影響があります。そのため農林水産省では、バイオ炭使用量の目安を公開しています。
J-クレジットにも適用|バイオ炭の活用広がる
https://sinanengroup.co.jp/news/hd/220831506
J-クレジット制度とは、温室効果ガスとして課題になっているCO2等の排出削減量・吸収量を「クレジット」として国が認定する仕組みのことを指します。
J-クレジットの由来は「Japan-Credit」の頭文字で、経済産業省、環境省、農林水産省、林野庁といった幅広い省庁が関わっています。CO2に関する成果をクレジットとして売買できるため、社会全体で排出削減・吸収活動が推進されるのが特徴です。
2020年にはJ-クレジットに「バイオ炭の農地施用」に関する方法論が策定され、「農地へのバイオ炭施用による排出削減量」をクレジットとして認証できるようになりました。
「J-クレジット」について詳しくは、下記記事をご覧ください。
まとめ|バイオ炭で脱炭素社会の実現
バイオ炭は比較的価格が安く、炭素固定に有効な方法として注目されています。地球環境問題解決の糸口として、農業だけでなく建設業にも取り組みが広がっています。2020年からはJ-クレジットにも採用されており、今後さらなる活用が期待されるでしょう。