カーボンリサイクルの事例をわかりやすく紹介|メリット・デメリットも
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「カーボンリサイクル」についてピックアップします。現在、地球温暖化の原因とされるCO2を「資源」として活用する技術が開発されつつあります。本記事では、カーボンリサイクルの概要や具体事例、メリット等についてご紹介していきます。
カーボンリサイクルとは
カーボンリサイクルとは「CO2を資源として回収し、新たに炭素化合物として再利用する取り組みのこと」を指します。
これにより大気中のCO2削減を図り、地球環境問題に貢献することが期待されています。CO2の再利用には新技術が重要で、現在各企業で開発が進められています。
カーボンリサイクルの取り組み事例
ここでは、具体的なカーボンリサイクルの取り組み事例をご紹介していきます。
①工業|カーボンリサイクル・コンクリート
大成建設では、CO2を練り混ぜた「カーボンリサイクル・コンクリート」を開発しています。炭酸カルシウム等のカーボンリサイクル材料と高炉スラグを主な原料とし、「コンクリート内にCO2を固定する」のが特徴です。
大成建設の環境配慮型コンクリート「T-eConcrete」には、下記の4タイプがあります。
- ①建築基準法対応型
- ②フライアッシュ活用型
- ③セメント・ゼロ型
- ④Carbon-Recycle
このうち④のCarbon-Recycleはセメントを全く使用していません。コンクリート内部にCO2を固定することにより、「CO2排出量がマイナス」になるカーボンネガティブを達成しています。
同様に鹿島建設でも、CO2を吸収することで固まる性質を持つコンクリート「CO2-SUICOM(シーオーツー・スイコム)」を開発しています。
セメントの半分以上を特殊な混和材(γ-C2S)や産業副産物などに置き換えることにより、コンクリートが固まる過程で「CO2を吸い込む」のが特徴です。
また供給するCO2として、「火力発電所の排気ガス」を利用する技術も確立しています。産業副産物の有効利用とコンクリートへのCO2の大量固定により、CO2排出量ゼロ以下を実現しています。
②燃料|メタノール合成
化学品のメタノールは、従来から天然ガス等の化石資源が原料に使われてきました。しかし現在CO2を原料とする方法が開発されており、ライフサイクル全体でのCO2削減効果が期待されています。
たとえば三菱重工では、将来的に現在開発中の再エネ水素製造の為の水電解装置の容量(~10MW)から、メタノール製造量10~20トン/日程度のプラント設計の最適化も視野に入れて開発を進めています。
③化学品|ポリカーボネート
プラスチックとして広く使われているポリカーボネートは、炭酸エステルを用いて製造されます。これまで製造過程で猛毒のホスゲンが使用されていましたが、新しく「CO2とアルコールを反応させる」技術が開発されました。
これにより、CO2の削減だけでなく環境負荷低減効果も期待できます。今後世界の製造量を全て置換することにより、約100万トンのCO2利用量ポテンシャルがあるとされます。
カーボンリサイクルのメリット
カーボンリサイクルのメリットとしては、下記が挙げられます。
- CO2排出量抑制効果
- 多様な分野で応用できる
カーボンリサイクルではCO2を「資源」と捉え、大気中への放出量削減を図ります。これにより、地球温暖化防止が期待できるでしょう。
またCO2は鉱物・化学・燃料など幅広い分野で活用できるため、あらゆる産業のイノベーションを加速させる可能性があります。
カーボンリサイクルの課題・デメリット
一方で、カーボンリサイクルには下記の課題やデメリットもあります。
- コストが掛かる
- 技術面が発達段階
- 加工時に水素が必要
従来からの化石燃料を原料とした方法に比べて、カーボンリサイクルはコストが余計に掛かります。また現時点では技術が発達途中のため、効率面が不十分なケースも多いです。
さらに多くのカーボンリサイクル技術では、CO2と「水素」を反応させます。水素は地球環境に優しいエネルギー源ですが、その「水素を生成する際にCO2が発生してしまう」点が課題です。
生成時にCO2を発生しないものは「グリーン水素」と呼ばれますが、コストや技術的にまだまだ流通量は少なくなっています。水素エネルギーについて詳しくは、下記記事をご覧ください。
カーボンリサイクルのロードマップ
経済産業省では、2019年に「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を策定しています。カーボンリサイクル技術について、目標、技術課題、タイムフレーム(フェーズ毎の目指すべき方向性)を設定しているのが特徴です。
これにより、広く国内外の政府・民間企業・投資家・研究者などのイノベーションを加速することが狙いとなります。
具体的には、フェーズ1~3で段階的にカーボンリサイクルを拡大していく計画です。
まず現状の「フェーズ1」では、カーボンリサイクルに資する研究・技術開発・実証に着手します。特に2030年頃から普及が期待できる「水素が不要な技術」や高付加価値製品を製造する技術に重点を置いています。
次に2030年代の「フェーズ2」では、2030年に普及する技術を低コスト化します。「安価な水素供給」を前提とした2040年以降に普及する技術のうち、需要の多い汎用品の製造技術を進めます。
最後に2040年以降の「フェーズ3」ではさらなる低コスト化を実現し、オレフィンやBTXといった化学品、コンクリート製品などの汎用品にも技術を拡大させる計画です。
まとめ|カーボンリサイクルでCO2を有効利用
CO2は地球温暖化の原因とされ、マイナスのイメージが大きいのではないでしょうか。しかし現在、あらゆる用途の「資源」としての活用が期待されています。その実現には「水素」も大きく関わっており、今後の低コスト化が目指されます。
建設業ではカーボンリサイクル・コンクリートの技術が確立されつつあり、2040年以降を見越した大規模実証やコストダウンが求められています。