3Dプリンターで変化する設計。CADデータとの関連性を解説

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近年、住宅業界や建設業界では、3DプリンターとCADを併用するケースが増加しています。とくに、建設業界においては、大手ゼネコンが本格的な導入に向けたテストを繰り返し行っている状況です。

CADで設計されたデータは、3Dプリンターを使用し、試作モデルや部品を迅速に作成できます。本記事では、CADと3Dプリンターの違いやデータの互換性などについてみていきましょう。

「トレンドワード:CAD 3Dプリンター」

CADを活用するうえで、大手ハウスメーカーでも3Dを使用したモデリングを行うケースが増加しています。とくに近年では、以下のように設計から保守に至るまでデータ活用を行うケースが増加傾向だといえるでしょう。

  • BIM連携:BIMは設計から施工、運用管理に至るまで建物の全ライフサイクル全体のデータを一元管理できる。時間やコスト削減、プロジェクト管理の効率化ができる。
  • 3DCADとBIMが連携できる:BIMモデルの中で3DCADデータを利用できるため、より詳細な設計が可能になった。構造や設備、配管といった要素の共有が可能となり、プロジェクト全体の品質向上につながる。

3Dプリンターは、3Dデータを使用して、機種ごとに指定されている素材を重ねて立体物を作成する機械を意味します。素材を加工するのではなく、指示通りの形を作っていくものであるため、加工の工程は不要です。

大手ゼネコンでは、3Dプリンターを使用して建築基準法に適合できる建物を作成した事例もあります。今後、住宅業界でも広がっていく可能性があるといえるでしょう。

CADと3Dプリンターは別のもの

CADと3Dプリンターの大きな違いは、次のようになります。

  • CAD-設計支援ソフトウェア。2D・3Dどちらも作成でき、設計担当者だけでなく、施工管理者も利用する。また、各工種の詳細設計は、分野別に行うため、データの互換性も大事になる。BIMを利用する場合は、構造計算やアイディアによるデザイン変更への対応コストを削減できる。
  • 3Dプリンター-データを形にするときに使用する。CADデータで作成したデータを取り込んで出力する。SLAやSLSといった積層方法があり、使用する3Dプリンターによって異なる。

海外では、3Dプリンターを活用した住宅の建設が進んでいる地域もあります。しかし、日本の場合は、建築基準法に対応していないため、活用は進んでいません。たとえば、現状で3Dモデリングを顧客に見せるといった場合は、BIMとCADを使用するケースがほとんどです。

データは互換性がある

ここでは、CADと3Dプリンターどちらでも活用できるデータ形式についてみていきましょう。

  • STL-シンプルな形状情報を持つ形式。ただし、色や素材を含める場合は、別のデータ形式を選ぶ必要がある。
  • OBJ-色や形など複雑な形状情報を持つことのできる形式。たとえば、STLで表現できなかったデザインをより詳細な情報で出力できる。
  • 3MF-AutodeskやMicrosoftが共同で開発したデータ形式。データ内容としては、色から素材といった様々な情報を含められる。汎用性が高い
  • AMF-STLでは表現できなかった色や材料を表現できる。2011年には、登場しているが、普及は進んでいない。

3DプリンターのモデリングができるCADソフト

3DプリンターのモデリングができるCADソフトについてみていきましょう。

Autodesk Fusion360

Autodesk Fusion360は、Autodesk社が提供している3Dソフトです。次のような特徴があります。

  • 3Dモデルの作成からシュミレーション
  • 複数人での作業も可能
  • 建設業に加え、航空宇宙分野でも活用できる

3Dプリンターで活用する場合は、詳細なモデリング作成が可能です。また、Autodesk Fusion360上でシミュレーションを展開できるため、出力する際の課題を明確にできます。

Tinkercad

TinkercadはAutodesk社が提供しているブラウザ上で動作するアプリです。直感的な操作で、作図できるため、初心者向きの3DCADといえるでしょう。とくに、AutoCAD Fusionとは、対象となるユーザーや目的が異なるため、簡単な形状のデータを取り扱う場合は、Tinkercadで問題ありません。

Designspark Mechanical

DesignSpark Mechanicalは、RS Componentsが提供する無料の3DCADソフトです。次のような機能があります。

  • 形状を直接編集でき、複雑な形状作成も可能
  • ライブラリに登録された電子部品の設計を取り込める

3Dプリンターに対しては、STL形式で出力したデータに対応可能です。

3Dプリンターで使用できる代表的な材料

まず、FDMプリンターで使用できる材料例は、以下になります。

  • PLA-低コスト。強度はあるものの、割れやすい。また、60℃前後で軟化する。試作モデルの作成などに適している
  • ABS-100℃まで耐えられ、強度も高い。機械部品の設計で使用できる。ベース部分を広めにつくると失敗しにくくなる

次に、SLAプリンターで使用できる材料例は以下のとおりです。

  • スタンダードレジン-高い精度で複雑なデザインを表せる。加工しやすいが、衝撃には弱い。精巧な試作モデルの作成に適している。柔軟性がないため、部分的な補強も必要
  • フレキシブルレジン-スタンダードと全く逆の性質を持つ。柔軟性があるため、曲げる・引っ張ることも可能。ただし、薄すぎる壁などの表現はたわむ可能性が高い。そのため、負荷が高い設計には向いていない。

最後に、SLS・SLMプリンターで使用される材料例は以下になります。

アルミニウム-軽量で強度に優れ、錆びにくい。耐熱性が高く、壁が薄い設計も可能。

ステンレススチール-耐摩耗性があり、錆びにくい。水にふれるような部品の作成ができる。

まとめ

建設業界では、CADと3Dプリンターの併用が増加しています。しかし、住宅業界では、建設業界ほど浸透していません。3Dプリンターを活用するとしても、法律的な課題のハードルが高いためです。

しかし、使用しているCADによっては、3Dプリンターと共通のデータ形式でデータを出力できます。そのため、今後3Dプリンターを活用した住宅作りが住宅業界で進んでいく可能性も否定できません。今後の住宅業界において、CADと3Dプリンターの併用事例がどのように増えていくのか、注目しておきましょう。