日建設計とソフトバンクが自律的に進化し続けるスマートビル構築を支援する会社を設立|深堀り取材【毎月3回更新】

日建設計とソフトバンクは、データを活用して自律的に進化し続けるスマートビル「Autonomous Building(オートノマスビルディング)」の構築を支援する合弁会社「SynapSpark」(シナプスパーク)を設立し、活動を開始した。

近年、働き方改革やテレワークの普及によって、快適性や多様な働き方をサポートすることが求められるなど、ビル機能に求められる条件が変化している。特に、脱炭素化や省力化、安全性向上などのビル単独では解決できない課題の解決が必須とされるなど対応も複雑化してきている。

それらの課題解決のソリューションとして国内外でスマートビルが有効とされているが、現状では、既存ビル内部の設備システムと外部の最新アプリケーションとの連携の難しさやスマートビルに必要なビル設備とデジタル化の両方に精通した人材の不足などによりスマートビルの構築・活用は限定的になっている。

それらの背景を受けて両社は、双方の強みである技術や知見を結集し、次代のスマートビルの構築に向けた支援を行うSynapSparkを設立した。SynapSparkには「人と建物、都市の情報の結節点『シナプス』の役割を果たして、スマートビルの普及を加速させる」という意味が込められている。

SynapSparkで目指す世界のイメージScreenshot

デジタルと建築に関する知見を掛け合わせてビルのデータを活用した社会課題の解決が目標

SynapSparkは、スマートビルの構築支援とスマートビル向けのアプリケーションやデータ連携基盤(ビルOS)の企画・提供を目的に設立された。ICTやデータ基盤に関する技術や知見を持つソフトバンクと建築設計と都市開発の専門家集団として豊富な実績を持ち、総合的な視点から社会課題を解決する社会環境デザインプラットフォームである日建設計が、デジタルと建築に関する知見を掛け合わせてビルのデータを活用した社会課題の解決を目指す。

両社の強みを組み合わせることによって、これまで個別に最適化されていた各ビルの設備システムのデータを一元的に管理・連携する仕組みをビルの基本機能として組み込むことができる。それによってビル全体で設備の稼働やエネルギーの利用などをリアルタイムかつ総合的に最適化することが可能になる他、ビルの機能を拡張するために外部のアプリケーションと連携させることもでき、データを活用して自律的に進化し続けるスマートビル「Autonomous Building」の構築が可能になる。

コンサル・設計支援+ビルOSとアプリケーションの企画・提供で新たな情報価値を提供

SynapSparkでは、具体的に、どのようなサービスを提供するのかをみてみよう。

ビル設備とビルOSを連携したスマートビルの構築に向けたコンサルティング及び設計支援業務を行う。ビル設備とビルOS、アプリケーション群の高度な連携を行うためのコンサルティングと設計支援を行い、ビル設備の各データがシームレスに連携し、全体最適となる機能を随時追加・更新できる仕組みを構築する。

ビルOSとアプリケーションの企画及び提供を担う。ビルの利用者や不動産の所有者、管理者などのビルに関わる多様なステークホルダー向けのソリューションとして、ビルOSとそのOS上で動作するアプリケーションを企画・提供し、不動産の価値やユーザーの体験を継続的に向上させるためのビジネスを展開する。

SynapSparkは、AIやIoTなどを活用して、人と建築と都市に関連するデータを連携させて活用する他、さまざまなパートナーのアプリケーションやソリューションなどと連携させることで、ビルの機能をリアルタイムで最適化して、新たな価値を提供できる仕組みを構築し、効率的で魅力的なスマートビルの普及を推進していく。

SynapSpark(会社概要)

  • 社名:SynapSpark株式会社(英文社名:SynapSpark Ltd)
  • 所在地:東京都港区海岸1-7-1
  • 代表者:代表取締役社長沼田周
  • 資本金:4億円(うち資本準備金2億円)
  • 出資比率:ソフトバンク51%・日建設計 49%)
SynapSparkの事業イメージ

ビル運営業務の最適化を可能にするデータ連携基盤「synapsmart(シナプスマート)」提供開始

ソフトバンクとSynapSparkでは、データを活用して自律的に進化するスマートビル「Autonomous Building(オートノマスビルディング)」の実現に向けて、その基盤となるビル運営業務の最適化を可能にするデータ連携基盤(ビルOS)「synapsmart(シナプスマート)」の提供を3月から開始した。
ソフトバンクは法人向けに「synapsmart」を提供し、SynapSparkは販売活動に加えて導入に伴う構築・運用支援を一貫して担当することで、スマートビル化を推進する。両社は、今後、従来のビルでは対応が難しい課題の解決や更なる効率化を目指して、さまざまな取り組みを推進していく。

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東京ポートシティ竹芝」でのスマートシティの取り組み+構築支援など通してビルOS開発

「synapsmart」は、ソフトバンクが持つICTやデータ基盤に関する技術。本社が入居する「東京ポートシティ竹芝」でのスマートシティの取り組みを通して得た知見に加えて、スマートビルの構築支援などを行うグループ会社のSynapSparkが持つ建築設計と都市開発の専門知識やビル設備・運営に関するノウハウを生かして開発したビルOSソリューション。

最小限の改修でビル内のあらゆる設備やシステムをネットワークで接続し、データを一元的に可視化して管理することで、運用業務の省人化やエネルギー消費の削減に寄与する。データに基づく室内環境の最適化やオフィススペースの効率化、人流データを活用した販促活動が可能になることで、ビルに入居する企業や飲食店などのテナントの運営効率の向上やテナントの従業員や来訪者の満足度向上にも貢献する。

「synapsmart」は、新築ビルと既存ビルのいずれにも導入可能で、単一のビルだけでなく複数のビルや拠点のデータを横断的に管理することもできる。今後はAIの活用や外部システム・アプリケーションとの連携によって「synapsmart」の機能とサービスを進化させ、ビルオーナーや管理者、入居者が抱える課題やニーズに応じた柔軟で付加価値の高いビル運営の実現を目指す。

ビル内のデータを見える化+設備トラブルなどの異常の自動通知+脱炭素経営をサポート

「synapsmart」の主な特長を特記してみる。ビル内のデータを見える化する。ビル内に設置された空調や照明、防犯カメラ、センサーなどの設備データに加えて、人流や環境データなどのIoTデータを自動で収集して一元的に管理する。

ビルの管理者は、データが可視化された管理画面でリアルタイムにビル全体の状況を把握でき、データに基づいて照明・空調の制御や設備機器の遠隔制御などのビルの最適な運用に生かすことができる。セキュリティー基準に準拠した信頼性の高いクラウド基盤上で運用することによって、設備やセンサーの増減や複数ビルの一元管理などにも柔軟に対応できるようになるのに加えて、システムや機能の更新を遠隔で迅速に実施できるようになる。

設備トラブルなどの異常を自動通知する。ビル内の設備トラブルやセンサーからの警報をあらかじめ設定した重要度レベルに基づいて判別し、緊急性の高いアラートをオーナーやビル管理者などの関係者へ速やかに通知する。スマートフォンへの通知も可能で、管理室などにいなくても異常を検知することができる。今後はスマートフォンから管理画面にアクセスできるようになり、遠隔での監視や制御にも対応する予定。

脱炭素経営をサポートする。エネルギー使用量やCO2排出量を管理画面上で可視化する。エネルギー使用量を週次・月次・年次単位でレポートにすることが可能で環境報告書などにも利用できる。複数のビルのデータを横断的に集計することができるので、脱炭素やコスト削減に向けた取り組みの分析にも活用することが可能だ。

これらの機能に加えて、今後はAIを活用した分析や予測機能を搭載することで属人化されていた業務や意思決定の標準化を図る。LINEミニアプリを始めとしたさまざまなアプリケーションとの連携によって運用のより一層の効率化・高度化を推進する。更に地域の防災情報や交通情報などの外部データとの連携も進めて新たな価値の創出を目指す。