石綿事前調査が対象外になる条件とは?不要になる工事・建材・築年数をわかりやすく解説

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Category:コラム建築
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著者:上野 海

石綿(アスベスト)の事前調査は、解体や改修工事の前に実施が義務付けられている重要な手続きです。とはいえ、すべての工事が対象になるわけではなく、建物の築年数や作業内容、建材の種類によっては事前調査の対象外となるケースもあります。

判断基準を誤ると、調査漏れによる行政指導や工事停止のリスクにつながるため注意しなければなりません。

そこでこの記事では、石綿事前調査が対象外になる条件や判断方法、よくある誤解まで整理し、企業が実務で判断できるように解説します。

石綿事前調査の対象・対象外とは

石綿事前調査の対象か対象外かは、工事内容と建物の条件によって判断されます。

解体や改修など建材を破壊する工事は、原則として調査対象になります。一方で、2006年9月以降に着工された建物や、木材・金属・ガラスなど石綿を含まない建材のみを扱う作業、建材を損傷しない軽微作業は対象外になる場合があります。

まずは事前調査の全体像から解説します。

石綿事前調査とは(制度の概要)

石綿事前調査は、建築物の解体や改修工事を行う前に、建材にアスベストが含まれていないかを確認する調査です。作業中に石綿が飛散すると健康被害につながるため、石綿障害予防規則(石綿則)より、工事前に危険性を確認する仕組みとして制度化されています。

調査では主に、次の方法が用いられます。

  • 設計図書や施工記録の確認
  • 建材の目視調査
  • 必要に応じた分析調査

現在、厚生労働省は2023年の制度改正により、一定規模以上の解体・改修工事では有資格者による調査を義務付けました。調査結果を電子システムへ報告する仕組みも導入されています。

建設会社や設備業者が工事を受注する場合、事前調査を怠ると法令違反になるため、工事内容に応じて調査の必要性を確認することが重要です。

調査の重要性を詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください▼

事前調査が義務化された背景

アスベストは断熱性や耐火性に優れていたため、過去には建材として広く使用されていました。しかし、繊維を吸い込むと肺がんや中皮腫などの健康被害を引き起こすことがわかり、日本では段階的に規制が進められました。

厚生労働省によると、アスベスト関連疾患による労災認定は毎年一定数報告されており、建設業での曝露が原因となるケースも多く確認されています。こうした背景から、解体や改修工事での飛散を防ぐために事前調査制度が強化されました。

※実際、石綿による健康被害を受けた方向けに「石綿健康被害救済制度」も提供されています。

現在は調査の実施だけでなく、結果の記録保存や行政への報告も求められています。企業が工事を行う場合は、法令に沿った管理体制を整えることが求められます。

また、石綿(アスベスト)の概要から詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです▼

石綿事前調査対象外を判断するチェックフロー

石綿事前調査が必要かどうかは、工事内容や建物の条件を順番に確認することで判断できます。現場で判断する際は、次の順序で確認しましょう。

確認項目判断の目安
建物の着工時期2006年9月1日以降の建物は原則対象外
工事内容解体・改修など建材を壊す工事は調査対象
建材の種類石綿を含まない建材のみなら対象外の可能性
作業方法釘打ちや機器交換など軽微作業は対象外の可能性
  1. 建物が2006年9月以降に着工 → 原則対象外
  2. それ以前の建物 → 建材の種類を確認
  3. 建材を破壊する作業 → 調査必要
  4. 軽微作業のみ → 対象外の可能性

ただし、対象外と判断できる場合でも、周辺の建材を損傷する可能性がある場合は調査が必要になることがあります。

なお、事前調査の流れを詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています▼

石綿事前調査対象外になる主な条件

石綿事前調査は解体や改修工事の前に実施することが原則ですが、すべての工事が対象になるわけではありません。

建物の築年数や建材の種類、作業内容によっては調査の対象外と判断されるケースがあります。ここでは代表的な対象外条件を整理しました。

2006年9月1日以降に着工された建物

2006年9月1日以降に着工された建物は、アスベストの使用が全面禁止された後に建設されたため、原則として石綿事前調査の対象外となります。

ただし改修工事で古い建材が使われている可能性や、施工記録が不明な場合は確認が必要です。判断に迷う場合は図面や建築記録を確認してから工事を進めましょう。

木材・金属・ガラスなど石綿を含まない建材のみの作業

作業対象が木材、金属、ガラスなど石綿を含まない建材のみの場合、石綿事前調査の対象外になる可能性があります。以下に対象外となる例をまとめました。

  • 木製家具の撤去
  • 金属設備の取り外し

ただし周囲の壁材や天井材を損傷する可能性がある場合は調査が必要です。作業範囲を事前に確認しておくことが欠かせません。

建材を損傷しない軽微な作業

釘打ちやネジ留め、電球交換など建材を破壊しない軽微作業は、石綿事前調査の対象外となる場合があります。

こうした作業は建材を削ったり壊したりしないため、石綿が飛散する可能性が低いと判断されます。ただし壁や天井を開口する作業を伴う際には対象になるため、作業内容を事前に確認することが必要です。

石綿事前調査対象外になる「軽微工事」の具体例

石綿事前調査は、建材を傷つけない軽微な作業は対象外になる場合があります。

ただし、設備交換や簡易作業などは対象外と判断されるケースもありますが、壁や天井を撤去する場合は調査が必要です。ここでは現場でよくある軽微工事の具体例を紹介します。

エアコン交換(対象外になりやすい)

エアコンの交換作業は、既存の配管や配線を利用して機器のみを取り替える場合、石綿事前調査の対象外になるケースがあります。

ただし壁の穴あけや天井の解体など建材を損傷する作業が伴う場合は調査が必要です。設備更新でも作業範囲を確認することが重要です。

電気設備・照明交換

照明器具やスイッチ、コンセントなどの電気設備交換は、建材を破壊しない範囲で行う場合は対象外となることがあります。

たとえば、既存器具を取り外して新しい機器を取り付けるだけの作業などです。ただし天井材や壁材を撤去する場合は事前調査が必要になります。

塗装工事

既存の塗膜を剥がさず、その上から新たに塗装する作業は石綿事前調査の対象外になる場合があります。なぜなら、既存建材を削ったり解体したりしないためです。

ただし、下地調整や外壁の補修で材料を削る場合は調査が必要になるため、施工内容を確認することが大切です。

設備の取り替え

機械設備や備品の交換など、建材に影響を与えない作業は軽微工事として対象外になることがあります。

たとえば、既存機器を取り外し、新しい設備を同じ位置に設置する作業です。ただし配管やダクト工事で壁や天井を解体する場合は事前調査が必要になります。

石綿事前調査が必要になる工事一覧

逆に、建材を壊す可能性がある工事は、石綿事前調査が必要になります。現場で対象になりやすい工事の例は次のとおりです。

工事の種類調査が必要になる理由
建物の解体工事壁材・天井材などを撤去するため
内装改修工事ボードや仕上材を撤去する可能性
外壁改修工事外壁材の撤去や削孔が発生する
設備更新工事配管やダクト工事で建材を開口する
コンクリート削孔・切断建材を破壊する作業になる

特に改修工事では、設備交換のように見えても壁や天井の撤去を伴う場合があります。その場合は軽微工事とは判断されず、事前調査が必要になります。

また、古い建物ではアスベストを含む建材が使われている可能性があるため、解体や改修の前に必ず確認することが重要です。

石綿事前調査が不要と誤解されやすいケース

石綿事前調査は築年数や作業内容によって対象外になる場合がありますが、現場では誤った判断がされることも少なくありません。

ここでは企業や施工会社が勘違いしやすい代表的なケースを整理します。

100万円未満の工事でも調査が必要

工事金額が100万円未満の場合でも、建材を破壊する作業がある場合は石綿事前調査が必要です。

解体や改修で壁や天井を撤去する場合、工事規模に関係なく調査対象になります。金額だけで判断すると調査漏れになるため、作業内容を基準に確認することが重要です。

コンクリート工事でも調査が必要な場合

コンクリート工事でも、周辺の建材を削ったり撤去したりする場合は石綿事前調査が必要になることがあります。

たとえば配管工事で壁や床を開口する場合です。コンクリート自体に石綿が含まれない場合でも、周囲の仕上材に含まれている可能性があります。

2006年以降の建物でも調査が必要なケース

2006年9月以降に着工された建物は原則として石綿事前調査の対象外ですが、増改築で古い建材が使用されている場合は確認が必要です。

また、建築記録が不明な場合も調査を行うケースがあります。築年数だけで判断せず、施工履歴を確認することが大切です。

石綿事前調査対象となる建材

石綿事前調査では、建物に使用されている建材がアスベストを含んでいるかを確認し、飛散リスクによってレベル1〜レベル3に分類します。

分類は建設業労働災害防止協会のマニュアルで整理されており、発じん性や使用箇所、必要な対策が異なります。レベルが高いほど石綿が飛散しやすく、解体や除去時の管理も厳しくなります。工事計画の段階で建材の種類を把握しておくと、必要な対策や調査方法を判断しやすくなります。

区分主な建材発じん性使用例主な対策
レベル1石綿含有吹付け材著しく高い鉄骨の柱・梁の耐火被覆、機械室や体育館の天井・壁など作業場所の隔離、防じんマスク、防護服など厳重な対策
レベル2石綿含有保温材・断熱材・耐火被覆材高いボイラー配管の保温材、空調ダクト、煙突断熱材などレベル1に準じた高い飛散防止対策
レベル3石綿含有成形板など比較的低いスレート屋根、外壁材、ビニル床タイルなど湿式作業など粉じん対策を実施

レベル1建材

レベル1建材は最も飛散リスクが高い石綿含有建材で、主に吹付けアスベストなどが該当します。繊維が空気中に飛散しやすいため、解体や除去作業では厳しい管理が必要になります。

作業時には隔離養生や集じん装置などの対策が求められ、専門業者による施工が必要になるケースが多い建材です。

レベル2建材

レベル2建材は、石綿を含む断熱材や保温材、耐火被覆材などが該当します。

。配管やボイラー設備などに使用されることが多く、解体時には飛散防止対策を行いながら作業する必要があります。吹付け材ほど飛散しやすくはありませんが、適切な管理を行わないと健康被害のリスクがあります。

レベル3建材

レベル3建材は比較的飛散しにくい石綿含有建材で、スレートや成形板などの建材が該当します。

外壁材や屋根材、床材などに使用されることが多く、解体や改修工事の際に確認されるケースが多い分類です。切断や破砕を行う場合は石綿が飛散する可能性があるため、作業前に調査を行う必要があります。

石綿事前調査対象外でも企業が行うべき対応

石綿事前調査が対象外と判断される場合でも、企業が何も対応しなくてよいわけではありません。工事内容や建物の条件によっては後から調査漏れが指摘されることもあり、元請企業や発注者の責任が問われるケースもあります。

企業が工事前に行っておくべき主な対応は次のとおりです。

  • 建物の築年数や設計図書を確認する
  • 工事内容が建材を損傷する作業か整理する
  • 調査対象外と判断した根拠を記録として残す
  • 発注者や関係会社へ工事内容を説明する
  • 判断が難しい場合は専門調査会社へ相談する

事前に確認と記録を残しておくことで、後からのトラブルや行政指導を防ぐことができます。特に企業が発注者となる工事では、施工会社任せにせず、建物の情報や工事内容を整理しておくことが安全な工事管理につながります。

まとめ

石綿事前調査は解体や改修工事の前に実施することが原則ですが、2006年9月以降に着工された建物や、石綿を含まない建材のみの作業、建材を損傷しない軽微工事などは対象外になる場合があります。

ただし工事内容や建材によっては調査が必要になることもあるため、築年数や作業方法を確認し、判断に迷う場合は専門調査会社へ相談してから工事を進めることが重要です。