建築の断面図とは?描き方・考え方・立面図との違いまで実務目線で徹底解説

建築の断面図は、建物を垂直に切断し、高さや構造、空間構成を可視化する重要な図面です。しかし「どこを切ればよいのか」「階高はどう決めるのか」「立面図と何が違うのか」と迷う方も多いでしょう。
そこでこの記事では、断面図の基本から描き方の手順、設計での考え方、立面図との違いまでを初心者向けにわかりやすく解説します。
目次
建築における断面図とは?

出典:建築研究所「モデル建物(事務所、5000㎡) 1階平面図 1/200」
建築設計で用いられる断面図は、建物を垂直方向に切断し、その内部構成を表した図面のことです。平面図が水平方向の広がりを示すのに対し、断面図は以下の情報や部材の取り合いを可視化します。
- 高さ
- 階層構成
- 天井
- 床
- 基礎
また断面図は、階高や天井高、梁せい、スラブ厚など高さ方向の寸法確認や、構造体や断熱材の位置、設備スペースの確保状況の確認などに活用できます。確認申請では建物高さや斜線制限の検討にも用いられるため、法規チェックを行いつつ断面図を作成しなければなりません。
断面図と他の図面との違い
図面の使い分けや書き方の違いを詳しく把握したい人向けに、建築設計における断面図と他の図面との違いを整理しました。
平面図との違い
平面図は建物を水平に切った図で、部屋の配置や動線を確認します。一方、断面図は高さ方向の情報を示し、上下階の関係や吹き抜け、階段の納まりを把握できます。
建築設計では基本的に両方の図面を作成しなければなりません。2種の図面を併用することで、空間を立体的に理解できます。
立面図との違い
立面図は建物を外側から見た外観を示す図面で、仕上げや窓配置を確認します。対して、断面図は内部を切断した図のため、構造や内部空間の高さ関係まで把握できます。
似た役割を持ちますが、外観のデザイン確認は立面図、構造や高さ検討は断面図が中心となります。
矩計図・詳細断面図との違い
矩計図や詳細断面図は、断面図をさらに拡大し、仕上げや納まりを詳細に示す図面です。一般的な断面図が、全体構成を把握するための図であるのに対し、矩計図は施工レベルの情報まで描き込みます。縮尺も1/50や1/20など細かくなります。
木造・RC造・S造で断面図はどう違う?
断面図は、建築する構造形式によって表現や検討ポイントが次のように異なります。
| 構造 | 主な特徴 | 断面図で重視する点 |
| 木造 | 柱・梁が比較的細い | 小屋組・床組・基礎高さ |
| RC造 | スラブ・梁が厚い | 梁せい・階高・かぶり厚 |
| S造 | 鉄骨梁を使用 | 梁成・デッキプレート・接合部 |
たとえば、木造は柱・梁の寸法や床組の構成が比較的コンパクトにまとまる一方、RC造はスラブ厚や梁せいが大きくなり、階高の確保が重要になります。また、S造は鉄骨梁の成や接合部の納まりが断面計画に影響します。
このように、断面図は単に高さを示すだけでなく、構造形式ごとの寸法や納まりを正確に反映する必要があります。特に階高設定は構造によって大きく変わるため、平面計画と同時に構造形式を意識して断面を検討することが重要です。
建築断面図の読み方
建築の断面図には、建物形状だけではなく記号や数値情報などが記載されています。ここでは、設計者が把握しておきたい断面図の読み方をポイントに分けて紹介します。
GL・FLとは?
GLはGround Lineの略で地盤面、FLはFloor Lineの略で床仕上げ面を示します。
なお、断面図ではGLを基準に各階のFLや屋根高さを示します。基準高さを記載することにより、建物全体の高さ関係を正確に読み取れるようになります。
建築のGLについて詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです▼
階高・天井高の見方
階高はある階の床から上階床までの高さ、天井高は床から天井仕上げ面までの高さを指します。断面図では寸法線で表示されるため、梁やダクトの影響も含めて確認することが重要です。
スケールの違い
断面図は1/100や1/50で描かれることが一般的です。1/100は全体構成の把握、1/50はより詳細な検討に用います。
なお、縮尺によって描き込む情報量が変わるため、目的に応じた使い分けが必要です。
断面記号・切断位置の確認
断面図は、平面図に示された切断記号に基づいて作成されます。矢印の向きが視線方向を示しており、どこをどの方向から見ているかを確認することが大切です。もし切断位置を誤ると、重要な情報が欠ける場合があります。
建築断面図の描き方【初心者は考え方が重要】
断面図は、高さ関係・構造寸法・法規制・設備スペースなどを総合的に検討しながら組み立てる必要があります。
また、見た目を整える前に「どの高さを基準にし、何を優先するか」という考え方が重要になります。ここでは実務で通用する描き方の手順を解説します。
【ステップ1】切断位置を決める
まずは平面図上で断面を切る位置を決めましょう。以下のように、空間の特徴が表れる位置を選ぶことが重要です。
- 階段
- 吹き抜け
- 大開口
もし何も特徴のない場所を切っても、設計の意図が伝わらないほか、同じような断面図ができてしまいます。そのため、断面図を作成する際には「その空間を説明する必要がある」という場所を作成しましょう。
【ステップ2】基準高さ(GL・FL)を設定する
次にGL(地盤面)と1階FL(床仕上げ面)を基準に高さを決めます。
ここがあいまいだと全体の整合が取れません。基礎立ち上がり高さ、床下空間、スラブ厚を考慮しながら、実現可能な寸法で設定してみてください。
【ステップ3】階高を構造寸法から逆算する
階高はデザインから決めるのではなく、以下のポイントを含めた厚みから逆算して決定します。
- 梁せい
- スラブ厚
- 天井懐
たとえばRC造の建築物では、梁せいが大きくなるため、想定より階高が必要になる場合があります。構造寸法を無視すると施工できない計画になるので、まず構造を決め、その上で天井高を調整するのがベストです。
また、室内の天井高に加えて、天井裏のダクト・配管スペースも確保しましょう。設備スペースが不足すると後から梁下がりや下がり天井が発生するため、最低限必要な懐寸法を確保してから意匠を整えます。
屋根・最高高さを法規と照合する
建物の最高高さや軒高は、道路斜線や北側斜線などの高さ制限と照合します。
断面図は建築基準法などの法令遵守が中心となる図面です。高さオーバーがないか、採光条件を満たしているかを確認しながら屋根形状を調整することで、最適な形状を決められます。
仕上げ・寸法・記号を整理する
最後に仕上げライン、寸法線、レベル表記を整理しましょう。
構造体と仕上げ線を区別し、読みやすい図面に整えることで見やすく伝わりやすい建築断面図が完成します。断面記号や縮尺も忘れずに記載してください。
建築設計で断面図が重要になるシーン一覧
断面図は、単に高さを示す図面ではなく、設計の検討・調整・説明のすべてに関わる重要な図面です。
平面図や立面図だけでは把握できない高さ関係や構造の納まり、法規制への適合性を確認できるため、設計の各フェーズで必ず活用されます。参考として以下に、断面図が重要になるシーンを整理しました。
| シーン | 活用目的 | 断面図で確認する内容 |
| 基本設計 | 空間構成の検討 | 階高・吹き抜け・視線の抜け |
| 実施設計 | 構造・設備調整 | 梁せい・スラブ厚・天井懐 |
| 建築確認申請 | 法規チェック | 建物高さ・斜線制限・採光 |
| プレゼンテーション | 空間説明 | 天井高・内部構成・断面パース的表現 |
| 施工図作成 | 納まり確認 | 基礎断面・仕上げライン・躯体位置 |
| リフォーム計画 | 既存状況把握 | 床レベル差・天井裏スペース |
このように、断面図は設計初期の構想段階から確認申請、施工段階まで一貫して使われます。特に高さ制限や構造との整合性は断面図でしか正確に判断できません。
設計の質を高めるためにも、平面図と同じレベルで断面図を丁寧に作成しましょう。
建築の断面図についてよくある質問【FAQ】
断面図はどこを切ればいいですか?
断面図は、階段・吹き抜け・大開口など空間の特徴が最も表れる位置を通るように切るのが基本です。単に中央を切るのではなく、設計意図が伝わるラインを選びます。構造や高さ関係がわかりやすい場所を優先すると、説明力の高い断面図になります。
建築物は断面図だけで施工できますか?
断面図だけでは施工できません。実際の工事には平面図・立面図・矩計図・詳細図など複数の図面が必要です。断面図は高さや構造関係を示す重要図面ですが、納まりや寸法の詳細は他の図面と併せて確認する必要があります。
まとめ
建築の断面図は、建物の高さ関係や構造、法規制への適合を可視化する重要な図面です。平面図や立面図と組み合わせて検討することで、空間の立体的な理解が深まります。
なお、作成の手順だけでなく、構造・設備・法規を踏まえた「考え方」を意識することが、実務において欠かせません。本記事を参考に、断面図作成の流れを実践してみてください。