AI時代に、建築家の魂は守られるのか?

世界一流の建築家たちが、人工知能という前例のない道具を手にしたとき、彼らは恐れたのか、それとも可能性に賭けたのか。デジタル革命の最前線で、建築という古典的な芸術はいま、根本的な再定義を迫られている。

アルゴリズムが描く未来都市

2025年9月、建築業界は静かな革命の真っ只中にいる。英国王立建築家協会(RIBA)の最新調査によれば、建築事務所の59%がすでにAIを活用しており、この数字は前年の41%から急上昇している。だが、この数字が物語るのは単なる技術導入の加速ではない。それは、5000年の歴史を持つ建築という営みが、デジタル知性との共生という未踏の領域へと踏み込んだ証左なのだ。

世界の建築シーンを牽引するマエストロたちは、この変化に対してどのような姿勢を取っているのか。恐怖か、熱狂か、それとも冷静な観察者として──。

ザハ・ハディド・アーキテクツ:パラメトリックの系譜が辿り着いた場所

ザハ・ハディドが2016年に世を去ったとき、建築界は「カーブの女王」を失った。しかし彼女の事務所、ザハ・ハディド・アーキテクツ(ZHA)は、その遺志を継承しながら、さらに先へと進んでいる。

ZHAはパラメトリックデザインのパイオニアであり、設計変更に応じて自動調整されるモデルを構築してきた。ハディド自身は、ロシア構成主義の芸術家カジミール・マレーヴィチから多大な影響を受け、数学的思考と絵画的視覚言語を建築に翻訳してきた。彼女の初期の作品は「実現不可能」とされ、「紙上の建築家」と揶揄されたが、デジタル技術の進化がそれを可能にした。Maya、3ds Maxといったソフトウェアツールが、彼女のパラメトリックデザインのニュアンスと構造的要求を表現する重要な手段となったのだ。

この系譜は必然的にAIへと接続される。2025年、ZHAは3Dプリント技術を用いた海洋生息地「Nereid」を発表した。パラメトリックアルゴリズムによる複雑な形状生成と、低炭素コンクリートを組み合わせたこのプロジェクトは、香港の海洋生態系修復を目的としている。ZHAの関係者は「AIはツールセットの変化」だと述べ、サステナビリティの用途で3Dモデルからライフサイクル炭素評価を作成するといった、非常に特定の問題を解決するニッチなツールになると説明している。

さらにZHAは、NVIDIAとのコラボレーションを通じて、OpenUSDとOmniverseプラットフォームを活用し、ワークフローの合理化と反復サイクルの加速を実現している。カスタムデータビジュアライゼーションをキャプチャすることで、ZHAチームはデザインのジオメトリーに関するより深い洞察を得て、生成された分析に基づいて反復または最適化を行える。

ここには恐れはない。あるのは、テクノロジーを自らの延長として使いこなす、圧倒的な自信だけだ。

ビャルケ・インゲルス・グループ──情報駆動型デザインの進化

デンマーク出身のビャルケ・インゲルスが率いるBIGは、建築を「情報駆動型デザイン」として再定義してきた。彼は、ローカルな文化や気候、現代生活の変化するパターン、グローバル経済の流れといった多数の基準を慎重に分析することを、デザインプロセスの原動力と信じている。インゲルス自身は「知識とテクノロジーが我々を制限するのではなく、超現実的な夢を居住可能な空間に変え、フィクションを事実に変えることを可能にする」と述べている。

BIGのデザイン・テクノロジー・チームは、リアルタイムレンダリングとマルチアーキテクト・コラボレーションという2つの重要な側面に焦点を当て、D5 Renderのようなツールを統合することで、映画品質のビジュアルを従来の何分の一かの時間で制作できるようになった。この協働環境は、プロジェクトを前進させるだけでなく、グローバルオフィスに分散したチーム間の創造的な対話を促進する。

BIGは現在、30以上のAIツールを評価中であり、どのツールがBIGの特定のプロセスに関連性があるかを見極めている。BIGのパートナー、カイ・ウーヴェ・ベルクマンは「私たちは現在、30以上のAIツールを評価しており、本当に私たちの仕事を変革するものを探し求めている。このチャレンジで最も説得力のあるプロジェクトは、これらの技術の習熟だけでなく、BIGの特定のプロセスへの関連性を評価する能力を示していた」と述べている。

IEスクールとBIGが共同で開催したコンペティションでは、参加者にAIがBIGのビジネスモデルに与える影響を評価し、戦略的機会を特定し、AI実装に関する課題に対処することが求められた。この取り組みは、BIGにとってAIが恐れるべき敵ではなく、慎重に選別すべきパートナーであることを示している。

さらに、BIGは「BIG IDEAS」という内部テクノロジー駆動型の特別プロジェクトユニットを設立し、デジタルと物質的領域の両方において新しい知的領域を探求している。このユニットは、製品デザイン、技術シミュレーション、特別プロジェクトという3つの特定領域を通じて、建築家の伝統的な範囲を情報と素材の探求へと拡大している。

ノーマン・フォスター──ハイテク建築の巨匠が見据える都市の未来

1967年にフォスター・アンド・パートナーズを創設したノーマン・フォスターは、「ハイテク建築」の代名詞として知られる。バッキミンスター・フラーをメンターとし、フォスターは新しい産業スタイルとその技術主導の野心に大きな信頼を置き、建築家をこの新時代の推進力として見ていた。フラーは「重量、エネルギー、性能の関係」や「最小で最大を成す」ことについて頻繁に語っており、それが技術的進歩の一貫したストーリーであるとフォスターは述べている。

2024年に開設されたノーマン・フォスター・インスティテュート(NFI)は、持続可能な都市に関する修士課程を提供し、AIの進歩が予測モデリングの潜在力と可能性をどのように高めるかを検討している。フォスター自身は「今日利用可能なテクノロジーによって、設計介入の結果を予測し、都市のバーチャルツインを作成・マッピングできる」と述べている。

NFIのシティラボは、あらゆる種類のスマートテクノロジー、タッチテーブル、データ可視化デジタルディスプレイを備えており、データ分析と予測モデリングがコースにとって重要になる。NFIの都市科学部門長ガレス・サイモンズは、「AIの進歩がこのモデリングの効力と潜在力をどのように高めることができるかを検討する」と述べている。

フォスターのビジョンは、アブダビのマスダール・シティのようなプロジェクトに表れている。IoTのような最先端技術を使用し、生活の質を向上させながら環境への影響を最小限に抑えることに重点を置いた、接続性、効率性、持続可能性を強調したスマートシティの設計である。フォスターにとって、AIは建物を設計するツールというより、都市全体を思考する新しい方法論なのだ。彼の作品は、先進的な建築技術への献身によって統一されており、デジタルツールを使用しながらも、人間のための機能的で効率的、環境に配慮した空間の創造に焦点を当てている。

隈研吾──「現在の隈研吾を超える」ためのAI活用

日本を代表する建築家、隈研吾は、自然素材と現代デザインの融合で知られ、2020東京オリンピックの国立競技場を設計したことで世界的に注目された。彼の建築哲学は「反オブジェクト」——周囲を支配するのではなく、周囲との関係を尊重する建築——だ。

2024年、隈研吾の事務所はAIを積極的に活用し始めた。400人のスタッフが国内外で400のプロジェクトを管理する中、AIは業務効率化に貢献している。スタッフがコンピュータ画面にラフスケッチを描き、「現代建築」「都心の木造美術館」といったキーワードを画像生成AIシステムに入力すると、パースペクティブ図と呼ばれる建物の3Dレンダリングが瞬時に現れる。以前は、事務所はまず2D図面を作成し、その後、耐震性やその他の要素を考慮しながらパースペクティブ図を作成していた。

しかし、隈のAI活用で最も興味深いのは、効率化だけでなく、「現在の隈研吾を超える」ことを目指している点だ。隈の建築を学習したAIが生成したデザインを見た後、隈は「(自分の)次のバージョンになる」ことに触発されたと述べている。

同時に、隈はAIの使用を通じて、人間にしかできない仕事が多数あることに気づいた。建築デザインでは、建築家はクライアントのニーズを理解し、人々が使いやすい機能を含む空間を作り出す必要がある。大規模な都市施設の場合、建築家は近隣住民の感情や社会がそれをどのように認識するかも考慮する必要がある。デザインには人間の微妙さが必要であるため、隈は「私は社会的トレンドを見ながら時代の雰囲気を読み取って決定を下す」と述べている。

隈の事務所は、著作権侵害やその他の問題のリスクを慎重に検討し、情報セキュリティについてスタッフを教育している。AIが仕事をより効率的にすることへの期待は高いが、テクノロジーに関連するリスクもある。

この姿勢は、日本の建築界全体に共通するバランス感覚を反映している。テクノロジーを活用しながらも、人間の感性、文脈への配慮、社会的責任を決して放棄しないという姿勢だ。

慎重な楽観主義──業界全体に広がる複雑な感情

しかし、すべての建築家が無条件にAIを受け入れているわけではない。アメリカ建築家協会(AIA)の調査によれば、78%の回答者がAIの可能性についてもっと学びたいと考えている一方で、同じ78%がAIについて懸念を抱いている。この二重性は、革新が責任と交差する職業において、AIが機会と躊躇の原因の両方を提供していることを浮き彫りにしている。

圧倒的多数の回答者が、不正確性(94%)、意図しない結果(94%)、プライバシーとセキュリティ(93%)、真正性(90%)、透明性の欠如(90%)といった複数の懸念を表明している。ある大規模事務所の最近ライセンスを取得した建築家は「AIが建物を設計する(建築家ではなく)というアイデアは好きではない。実務の完全性と、AI生成設計が公衆の健康、安全、福祉にもたらすリスクについて懸念している。AIが芸術を創造できるという一般大衆の間に問題のある誤解がある——実際には実際のアーティストから盗んだりコピーしたりしている」と述べた。

イェール大学建築学部のフィリップ・バーンスタインは、AIが建物全体を設計する能力を持つにはまだほど遠いと指摘し、「もしサム・アルトマンが正しく、他の多くの人々(私も含めて)が間違っていて、最終的に人間の知的能力に匹敵し凌駕する汎用人工知能を達成するなら、この職業を含む世界全体が根本的に変わるだろう」と述べている。それまでは、建築家の専門知識が不可欠であり続ける。

Deltek社のクリス・メトロプロスは「建築の未来は、AIが人間の創造性を置き換えることではなく、それを強化することだ」との見解を提供している。この視点は、業界全体の感情を反映している——AIは脅威ではなく、人間の能力を拡張するツールとして見られている。

エシカル・ジレンマ──創造性の起源を問う

AI導入が進むにつれ、倫理的な問題も浮上している。建築・エンジニアリング・建設(AEC)業界におけるAIとロボティクスの倫理的課題として、雇用喪失、データプライバシー、データセキュリティ、透明性、意思決定の対立、受容と信頼、信頼性と安全性、監視への恐れ、責任の所在という9つの主要な問題が特定されている。

特に著作権と創造性の問題は深刻だ。AIが生成したデザインの知的財産権は誰に帰属するのか。AIツールが学習したデータの出所は適切なのか。そして何より、建築という営みの本質である「場所性」「文脈」「人間性」を、AIは理解できるのか。

RIBA調査の専門家デス・ファガンは「AIは、建築家が現場や歴史的設定に応答する反復的な設計開発を生み出す方法において、まだストーリーテラーではない。AIは現在、新しい建物の特徴の重要性を理解も評価もしていない。なぜなら、それは単に個々のブリーフや敷地に対してプログラムされていないからだ」と指摘している。

画像拡散ソフトウェアが生成する幻想的な画像と、適合仕様、保証、ギャランティを備えた賢明な材料構造として実現できることの間には、依然として大きな違いがある。最近の建築規制は、能力を強調しており、これをさらに強化している。

幻覚、捏造、作話——これらはすべて、GenAIが誤った情報、画像、テキストを発明し、それを自信を持って出力に提示する現象を説明するために使用されてきた用語だ。米国国立標準技術研究所(NIST)によれば、これは「生成モデルが設計される方法の自然な結果」であり、例えば大規模学習モデル(LLM)は、トレーニングデータの統計的分布を近似する出力を生成し、文や句の次のトークンや単語を予測する。

AIA Trustとビクター・インシュランス・マネージャーズは、建築家に対して、GenAI出力を新人アソシエイトが作成した仕事として扱うよう推奨している。つまり、基礎となる仮定を特定し、彼らの仕事を検証し、適切な品質管理プロセスを通すための時間を取ることだ。これらのステップを踏むことで、プロジェクト要件や機密保持や適切な帰属を含む適用可能な倫理的および法的義務への適合性とともに、すべての出力の正確性を確保できる。

建築家の魂は守られるのか

著名な建築家たちが共有した共通のテーマは、AIとテクノロジーは建築プロセスを強化し合理化するツールとして捉えられているが、人間の手を置き換えるものではないということだ。ザハ・ハディド・アーキテクツはアルゴリズムと伝統工芸の融合を追求し、ビャルケ・インゲルスは情報を創造性に変換し、隈研吾は「現在の自分を超える」ためにAIを活用する。

彼らの態度に共通するのは、テクノロジーへの盲目的な信仰でも拒絶でもなく、道具としての冷静な評価と、自らの創造性を拡張する手段としての積極的な活用だ。同時に、彼らはテクノロジーがもたらす倫理的課題——プライバシー、著作権、雇用、そして建築という営みの本質——について深く考察している。

Autodesk社の報告によれば、AECO組織の76%が今後3年間でAIと新興技術への投資を増やす計画であり、32%がその増加を「強力」と表現している。だが同時に、AIの有効性は依然として建築家の専門知識に依存している。AIを搭載した生成デザインツールは急速に可能性を探求し、レイアウトを最適化するが、その真の可能性は、建築家が適切な質問を投げかけ、適切なシナリオを提示したときに解き放たれる。

建築家はAIをガイドし、デザインが効率的で持続可能であり、プロジェクトのビジョンと整合していることを確実にする。この建築家とAIの協働は、創造性を加速し、プロジェクト開発を合理化する。

建築という営みは、人間の手と目と思考によって数千年にわたって築かれてきた。AIという新たな「手」を得た今、建築家たちはその力を畏れながらも、自らの創造性の延長として使いこなそうとしている。それは恐怖でも熱狂でもない——ただ、未来への責任ある実験なのだ。

この道を歩み続ける限り、建築は人工知能の時代においても、人間の芸術であり続けるだろう。そして、500年後の人々が今日建てられた建物を見るとき、そこに宿る魂は、人間のものであることを認識するはずだ——たとえその設計が完全にAIによるものだったとしても。