【2025年最新版】ゼネコンの土木と建築の違いを完全比較|仕事内容・資格難易度・向いている人まとめ

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Category:コラム建築
Tag:建築

著者:上野 海

「ゼネコンの土木と建築って、結局なにが違うの?」

就職・転職を考え始めたとき、多くの人がこの疑問で立ち止まります。同じゼネコンでも、土木と建築では工事対象・働き方・評価されるスキルが異なるため、選択を誤るとミスマッチにつながりかねません。

そこでこの記事では、ゼネコン視点で土木と建築の違いを徹底比較します。仕事内容・資格難易度・年収傾向・向いている人まで整理しているので、「自分はどちらを選ぶべきか」を判断する参考にしてください。

【早見表】ゼネコンにおける「土木」と「建築」はここが違う!

ゼネコンにおける「土木」と「建築」の違いは、「何をつくるか」だけでなく、仕事の進め方・評価軸・キャリアの広がり方などが関係しています。すぐに違いを知りたい方向けに、早見表をまとめました。

比較項目土木(ゼネコン)建築(ゼネコン)
主な工事対象道路・橋梁・トンネル・ダムなどビル・住宅・商業施設・病院など
発注者国・自治体が中心民間企業・デベロッパー
現場環境屋外が多く天候の影響を受けやすい建物内作業も多く環境は比較的安定
工期数年単位の長期案件が多い数か月〜数年と幅が広い
重視される能力工程管理・安全管理・公共対応調整力・品質管理・施主対応

上表より、土木は道路・橋・ダムなどの社会インフラを対象とし、公共事業が中心です。一方で建築は、住宅・オフィス・商業施設など人が使う建物を扱い、民間案件の比率が高くなります。

つまり、「安定性・公共性」を重視するなら土木、「建物・空間づくり」に関わりたいなら建築が向いています。どちらが優れているという話ではなく、自分の志向に合うかどうかが重要です。

また、土木と建築における業界の違いを知りたい方は、以下の記事もご参照ください▼

また、土木・建築は明治維新までひとつとして考えられていました。なぜ2つのジャンルに分かれたのか歴史を知りたい方は、以下の記事もおすすめです▼

ゼネコンとは?土木・建築との関係を整理

ゼネコンとは、建設工事全体を統括する総合請負会社のことです。「土木部門」と「建築部門」もしくはその両方の事業を提供するゼネコンが存在します。

たとえば同じゼネコンでも、次のように担当領域が分かれており、配属後は原則として部門を横断しません。(土木なら土木のまま、というイメージ)

  • 土木部門:高速道路、橋梁、トンネル、ダム、港湾
  • 建築部門:オフィスビル、マンション、病院、再開発施設

つまり、「ゼネコンに入社する=土木と建築のどちらかの専門職に進む」という流れになります。ゼネコンへの入社を希望している場合には、あらかじめその企業が「自身が働きたい部門に強いのか」を調査しておくことが大切です。

ゼネコン・サブコン・土建屋の違い

ゼネコンは、関係企業と連携しながら工事プロジェクトを進行するが特徴です。以下に、連携する機会の多い、サブコン・土建屋との違いをまとめました。

区分役割主な業務内容
ゼネコン元請工事全体の統括、発注者対応、工程・品質・安全管理
サブコン下請電気・設備・空調など専門工事の施工
土建屋地場施工掘削・型枠・舗装など実作業中心

つまり、ゼネコンが元請(一次請)として工事業務を受注。作業分担としてサブコンや土建屋へ再委託を出すという関係が成り立ちます。

特に規模が大きいプロジェクトの場合、すべてを1社で施工することは現実的ではありません。そのため、役割ごとに企業で協力しながら工事を進めていきます。

ゼネコンの土木部門と建築部門の違い【一覧比較】

ゼネコンの土木部門と建築部門は、「工事対象」だけでなく、仕事の進め方・発注構造・評価される能力など、複数のポイントに違いがあります。以下に全体像を整理しました。

観点土木部門建築部門
主対象インフラ(道路・橋・ダム等)建物(住宅・ビル・施設)
案件性質公共事業中心民間事業中心
工期長期(数年)中〜長期(数か月〜数年)
評価軸安全・工程・法令遵守品質・調整力・施主満足
キャリア安定・継続性分野横断・専門特化

参考として以下より、各項目の違いをわかりやすく説明していきます。

工事対象の違い(インフラ vs 建物)

ゼネコンの土木部門は「社会を支える基盤」をつくり、建築部門は「人が使う空間(建物)」をつくるのが仕事です。

たとえば土木部門は、私たちが普段から利用している道路や橋梁、そのほかさまざまなインフラ構造物をつくります。これに対し建築部門では、人々が利用する居住建物(一戸建てやマンション)、公共施設、教育施設(学校など)をつくるのが主な違いです。

仕事の進め方・現場環境の違い

現場でよく言われるのが、土木は自然条件との戦い、建築は関係者調整との戦いになりやすいという点です。

土木現場は屋外作業が多いことから、天候・地盤・災害リスクの影響を強く受けます。日本の場合は、梅雨が始まる5月下旬〜天候が変化しやすい10月上旬にかけて、現場スケジュールが不安定化しやすいです。特に河川工事の場合は、降雨による増水の影響を受け、工事が一時的に中止されるケースもあります。

一方で建築現場は基礎や主構造、設備、外構など対応する工種が多いため、職人・サブコンとの調整が中心になります。また発注者となる施主が民間や個人になる場合もあるため、コミュニケーション力が求められる場面も少なくありません。

発注者・工期・スケールの違い

土木は「公(国や自治体)」、建築は「民(企業や個人)」が主な発注者です。

まず、土木工事は税金を原資とした公共工事が多いため、発注ルールや書類対応が厳格です。これに対し、建築は民間発注が多いため、意思決定が比較的柔軟です。

ただし建築の場合は、発注者の「こだわり」によって工期やスケールが変化するケースもあります。

求められる能力・適性の違い

同じゼネコンでも、土木と建築によって、評価される能力が次のように違います。

  • 土木向き:工程管理力、安全意識、粘り強さ
  • 建築向き:調整力、品質意識、説明力

また土木部門に配属された際には、道路構造令河川管理施設等構造令、さらには国・自治体が公開している基準やマニュアルなどの理解が必要です。対して建築部門では建築基準法都市計画法に沿ってプロジェクトを計画・進行していきます。

土木・建築それぞれに向いている人

ゼネコンの土木部門と建築部門は、向いている人のタイプがはっきり分かれる仕事です。スキル以前に、価値観や働き方の志向が合うかどうかが重要になります。

以下に、それぞれの部門における「向いているポイント」をまとめました。

土木部門建築部門
社会インフラや公共事業に関心がある長期プロジェクトに腰を据えて取り組める天候・突発対応にも冷静に対応できる安全管理・工程管理を着実に積み上げるのが得意建物・街づくり・デザインに興味がある多くの関係者と調整するのが苦にならない品質や仕上がりにこだわりたい民間案件で裁量を持って働きたい

土木と建築を選ぶ際には、「どちらが楽・稼げるか」ではなく、どちらが自分の性格・価値観に合うかで選ぶことが大切です。キャリアマッチを考えることで、長く働き続けられます。

また以下の記事では、ゼネコンの売上ランキングをまとめています。気になるゼネコンがあるかチェックしてみてください▼

ゼネコンの施工管理は土木と建築どっちがきつい?

ゼネコンの施工管理は、土木も建築も「きつさの種類」が違うだけで、単純な優劣はありません。とはいえ、きついと感じやすい業務があるのも事実です。

参考として以下に、部門ごとにきついと感じやすいポイントと、向いている人をまとめました。

土木施工管理がきついと言われる理由

土木施工管理がきついと言われる理由は、次のように自然条件と公共制約の影響を強く受ける点です。

  • 雨天による工程変更
  • 夜間・早朝工事(交通規制対応)
  • 発注者(自治体)との頻繁な協議
  • 災害時の緊急対応

特に道路・橋梁工事などは屋外が中心であるため、天候・地盤・交通規制によってスケジュールが変動します。また、公共工事では書類・検査対応も多いことから、体力・忍耐力・安定志向がある人には向いていますが、生活リズム重視の人は慎重な判断が必要です。

建築施工管理がきついと言われる理由

建築施工管理がきつい理由は、調整業務の多さと品質要求の高さにあります。以下に、難易度の高さを感じやすいポイントをまとめました。

  • 工種間の工程調整
  • 仕様変更・追加工事対応
  • 施主・設計事務所との折衝
  • 竣工前の厳しい品質チェック

建築現場では、専門工事業者(サブコン・土建屋など)が同時に動くため、設計変更や施主要望への対応が頻発します。プロジェクトの規模が大きいほど調整力が求められるため、コミュニケーション力や調整力が高い人には向いていますが、精神的な負荷を感じやすい点は理解が必要です。

ゼネコンの建築と土木どっちが難しい?資格難易度を比較

ゼネコンの建築と土木の業務は、難しさの質が異なるため、単純にどちらが難しいとは言えません。そこで本項では、難しさを表すひとつの基準として、資格難易度に視点を当てて部門を比較します。

技術士・土木施工管理技士の難易度と特徴

ゼネコンの土木部門で取得を目指したいのが、国家資格である技術士や土木施工管理技士です。以下にそれぞれの合格率をまとめました。

ゼネコン向け資格合格率
技術士平均10%
土木施工管理技士(1級)43.1%(一次検定の場合)

出典1:日本技術士会「令和6年度技術士第二次試験統計」
出典2:全国建設研修センター「令和7年度 1級土木施工管理技術検定」

特に技術士は、高難易度の資格として有名です。

また、土木施工管理技士は1級・2級などの級種に分かれます。詳しくは以下の記事をチェックしてみてください▼

1級建築士・建築施工管理技士の難易度と特徴

ゼネコンの建築部門で取得を目指したいのが、国家資格である建築士や建築施工管理技士です。以下にそれぞれの合格率をまとめました。

ゼネコン向け資格合格率
1級建築士平均8.8%
建築施工管理技士(1級)48.5%(一次検定の場合)

出典1:建設技術教育普及センター「直近5年間の試験結果」
出典2:総合資格学院「1級建築施工管理技術検定の合格率」

特に1級建築士の資格は土木部門の技術士と同じく、高難易度の資格として有名です。

ほかにも建築で役立つ資格を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください▼

建築と土木、年収が高いのはどっち?国情報より比較

ゼネコンの年収は勤める企業によって相場が異なるため、一概に「どちらが稼げる」とは言えません。

ただし、ひとつの目安として、厚生労働省の「職業情報提供サイト job tag」にそれぞれの平均年収が公開されています。以下に、それぞれの年収を整理しました。

若干、建築部門のほうが多い傾向があります。なお、全業種の全国平均年収は478万円です。複数の業種と比べても、高収入を得やすいため最終的には相性の良し悪しで選ぶことが大切です。

(参考:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

よくある質問(FAQ)

土建屋とゼネコンの違いは何ですか?

土建屋とゼネコンの違いは、工事における役割と責任範囲です。ゼネコンは元請として、発注者対応・工程管理・品質・安全管理など工事全体を統括します。一方、土建屋は掘削や舗装などの施工そのものを担うケースが多く、現場作業が中心です。

建築と土木どっちが稼げる?

建築と土木のどちらが稼げるかは一概に決められません。土木は公共工事が多く、長期案件や資格(1級施工管理技士)によって安定的に年収を積み上げやすい傾向があります。建築は民間案件が中心で、役職や案件規模次第で年収の伸び幅が大きいのが特徴です。

建設業で1番きつい仕事は何ですか?

建設業では、屋外作業が多く天候や夜間工事に左右される土木施工管理をきついと感じる人もいれば、調整業務や責任が重い建築施工管理を大変と感じる人もいます。重要なのは、自分に合う負荷かどうかです。

まとめ

ゼネコンにおける土木と建築は、工事対象だけでなく、仕事の進め方・評価される能力・キャリアの広がり方まで大きく異なります。

たとえば、土木は公共性と安定性が高く、建築は裁量や成長機会が広いのが特徴です。重要なのは「どちらが上か」ではなく、自分の価値観や将来像に合う選択をすることです。長く働き続けるためにも、ぜひ本記事の情報を、ゼネコンの部門選びの参考にしてみてください。