【2025年版】ガラリとは?建築基準法の計算方法・ルーバーとの違い・設置場所まで徹底解説

建築図面や現場では当たり前に使われる「ガラリ」ですが、ルーバーやレジスターとの違いがわからない、建築基準法とどう関係するのか不明という声も少なくありません。特に実務では、ガラリの理解不足が原因で、換気不足・結露・有効開口率不足による計算誤りが発生するケースもあります。
そこでこの記事では、2025年の最新基準における「ガラリ」の意味・役割・種類・建築基準法のポイントをわかりやすく解説します。
目次
建築用語「ガラリ」とは?
建築用語の「ガラリ」とは、壁や扉、窓に設置する通気・換気を目的とした開口部のことです。簡単に言うなら通気口に設置するブラインド状の蓋のことであり、次のような場所に設置します。
- 外壁
- 扉(洗面所)
- クローゼット
- 間仕切り壁
- ルーバー窓
たとえば、マンションの脱衣所を想像してください。ドアの下部に小さなスリットや穴があることが多いですが、あれがガラリです。入浴後の湿気を廊下へ逃がし、室内で結露・カビが発生するのを防いでくれます。
換気口としての役割があるとともに空気流動の経路設計、結露対策、換気回数の確保に関わる重要な部位です。まずは建築で用いられるガラリの特徴をわかりやすく説明します。
(参考:国土交通省「建築用語集」)
ガラリの役割は設置部位ごとに異なる
ガラリは、通気部材のなかでも、快適性・省エネ性能・衛生性に大きく影響する重要な建築部材です。たとえばガラリには以下のような役割があります。
| 設置場所 | 目的 | メリット |
| 外壁 | 外気取り入れ | 内装の結露防止につながる |
| 扉(洗面所) | 湿気排出 | カビ対策につながる |
| クローゼット | 通気 | 臭気防止につながる |
| 間仕切り壁 | 室内循環 | エアコン効率の向上につながる |
| ルーバー窓 | 採光+換気 | 有効開口面積として計算が可能になる |
役割ごとのメリットがあるのは、羽根板がもつ形状と角度が関係します。ガラリの羽根板は空気を通過させつつ、直線方向の視線や雨滴を遮るため、自然換気とプライバシー確保の両立が可能となります。
建築ガラリと住宅設備ガラリの違い
ガラリは建築に用いられるもの、住宅設備として用いられるものの2種類があります。以下にそれぞれの違いを整理しました。
| 種別 | 用途 | 開口率 | 計算対象 |
| 建築ガラリ | 外壁・窓 | 羽根板形状で変動 | 有効開口面積になる |
| 設備ガラリ | ダクト端末 | メーカー規格 | 換気量計算の終端 |
まず建築ガラリは、建物の開口部(外壁・扉・窓)に設置する通気部材です。自然換気のほか、開口面積の確保や通気スペースの結露対策として用いられます。
一方で住宅設備に用いる設備ガラリは、ダクト端末や機器用の通気口に設置します。また設備の場合には、ガラリだけではなく、状況に応じてレジスターやベントキャップなどを設置する場合もあります。
ガラリの設置場所と種類
ガラリは、設置する場所と構造によって種類が分かれます。
ここでは、主なガラリの設置場所と用途ごとの適切な種類を紹介します。
設置場所で分類
ガラリの設置場所は、次の4つが代表的です。
| 設置場所 | 主な目的 | 特徴 | 初心者向けの判断ポイント |
| 外壁 | 外気取り入れ | 防水性・防虫網 | 雨や虫を防ぎつつ空気を入れる |
| 窓 | 採光+換気 | 角度調整可能 | ルーバー窓=ガラリ窓と同義 |
| 扉(洗面所など) | 湿気排出 | 下部通気 | カビ対策に有効 |
| 室内壁 | 空気循環 | 無音で自然換気 | エアコン効率を上げる効果 |
ガラリは空気の入り口と出口をつくります。換気計画では「どこから空気が入り、どこへ抜けるか」を考えることが重要で、片側だけにガラリがあってもきれいな空気の流れができません。
特に湿気がこもりやすい洗面所やクローゼットは、通気ルート設計がカビ対策の基本になるため設置が必要です。
構造で分類
ガラリには、「固定式」「可動式」「防水型」の3種類があり、次のように強みや向いている用途が異なります。
| 種類 | 特徴 | 向いている用途 |
| 固定式 | 羽根板が動かない | 外壁・扉・室内壁 |
| 可動式 | 角度調整可能 | 窓(ジャロジー) |
| 防水型 | 防水フード形状 | 強風地域・外壁 |
まず固定式は、常に通気する構造です。羽根板の角度で視線や雨を防ぐ効果があります。
続いて可動式(ルーバー窓・ジャロジー窓)は、羽根板の角度を変えられるガラリです。「雨の日は閉じる」「風を入れたいときは開く」という操作性の高さがあります。
最後に防水型は、主に外壁で使用されます。羽根板の形状+内部に防虫網や水切り板が入っていることが多く、海風や豪雨地域の住宅では特に多く採用されます。
なお、この構造の違いによって、有効開口率(実際に空気が通る割合)が変わります。メーカー資料や建築基準法にもとづきながら、住宅等に最適な有効開口率を設けることが欠かせません。
建築基準法とガラリの関係(換気に関わる基準)
ガラリは、建築基準法にて「換気に有効な開口部」として扱われる場合があります。
ここでは、建築基準法にもとづきながら、ガラリの役割や設計に関わる基準を整理しました。
換気に有効な開口部の基準(20分の1)
まず建築基準法の第28条では、居室の換気を、原則として床面積の1/20を確保しなければならないと記載されています。
居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索「建築基準法|第28条」
上記のうち、ガラリは開口部の一部として計上できます。ただし、角度次第で実効開口率が下がる点に注意が必要です。たとえば表面積が0.6㎡でも、羽根板で実際に通気できる面積は30〜45%程度に下がる場合があるため、メーカー資料で確認が必要です。
有効開口率と計算の注意点
前述したように、ガラリは「穴がある=そのまま開口面積」ではありません。羽根板の幅・角度・ピッチの影響で、有効開口率が下がります。
参考として、見かけの開口面積が0.6㎡であり、メーカーが有効開口率が35%だと記載があった場合には、開口面積を次のように計算しなければなりません。
見かけの開口面積:0.6㎡
有効開口率:35%(例)
→ 0.6㎡×0.35=0.21㎡(210cm²)
なお、メーカーによっては製品サイズと有効開口面積をそれぞれ記載してくれているケースもあります(下の画像参照)▼

出典:ロッキーズ シブタニ店「ドアーガラリ」
設計初心者の場合、有効開口率を考慮せずに開口部を設計する失敗も多いため、確実に計算に加えましょう。
シックハウス対策(機械換気の義務)
ガラリを含む開口部の確保について、よく「20分の1を満たせば絶対OK」と考えられがちですが、2003年改正後の建築基準法では、居室には機械換気設備の設置が義務化されました。
つまり現行基準では、原則として機械換気を設置し、補助としてガラリを設置するという考えに変わっています。
このように建築基準法が改正されたのは、ホルムアルデヒドやVOCによる健康被害を防ぐためです。自然換気よりも確実な換気量を確保できる仕組みが必要であることから、ガラリの設置を検討する際には、24時間換気システム(第3種換気)などの設置検討が欠かせなくなっています。
また、ガラリを理解するためには、建築基準法全体の概要を知ることも重要です。詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。
ガラリと似たものの違い【混乱しやすい3つ】
ガラリは外から見ると「ルーバー」「レジスター」「ベントキャップ」とよく似ています。しかし、役割・設置場所・換気経路・計算の考え方が違うため、誤解しないように注意が必要です。
ここでは、混同しやすい3種類の違いを分かりやすくまとめました。
ガラリとルーバーの違い
ガラリとルーバーは「用途と呼び方」が次のように違います。
- ルーバー=羽根板(ブラインド状の板)の構造名称
- ガラリ=ルーバーを使った通気・換気用の建築部材
つまり「ルーバー=羽根板」、そしてガラリはそのルーバーを用いた建築部材という位置づけです。なお、現場によってはガラリとルーバーが同じ意味で用いられるケースもあるため注意してください。
ガラリとレジスターの違い
ガラリとレジスターの違いは、空気の流れ方と設置場所です。
ガラリは外壁や扉などに直接開口して、屋外から空気を取り入れるための通気部材です。一方、レジスターは浴室やトイレの天井などにあり、ダクトを通して機械換気で排気・給気を行う設備端末です。
つまり、ガラリは自然換気、レジスターは機械換気と考えると簡単です。同じ「換気口」に見えても、計算方法や換気量の考え方が全く異なります。
ガラリとベントキャップの違い
ガラリとベントキャップの違いは、目的と空気の流れ方です。
ベントキャップは排気ダクトの先端に付く機械換気専用の排気口で、レンジフードや浴室乾燥機などの排気を外へ出します。つまり、自然換気のガラリに対し、機械排気がベントキャップです。同じ外壁部材に見えても、換気量の考え方と設置条件が大きく異なります。
ガラリの施工方法と注意点【実務向け】
ガラリの施工は、主に次の流れで実施します。
- 下地位置
- 開口加工
- 防水処理
- ガラリ取り付け
- 有効開口率確認
そして施工の際に大事なのが、「見かけの開口ではなく、実際に空気が抜ける形をつくること」です。なぜなら、ガラリ施工で問題が起きる原因は、ほとんどが「防水・気密・開口率」の考慮不足。透湿防水シート(防水紙)が切れていたり、ガラリの裏に木下地が来てしまうと、空気が流れないガラリになってしまいます。
ほかにも施工時には次のポイントに注意が必要です。
| よくある失敗 | 原因 | 発生する問題 | 解決策 |
| ガラリの裏が下地材になる | 位置決め不足 | 空気が通らない | 壁内で空気経路を確保 |
| 防水紙が破れたままになる | 防水処理不足 | 漏水・雨染み | 切り返し処理+テープ |
| 有効開口面積が不足する | 羽根板形状理解不足 | 換気不足 | メーカー資料で計算 |
| ベントキャップを給気に使用する | 誤認識 | 外気入らず結露 | 給気はガラリで確保 |
| 水切り板なし | 雨仕舞の理解不足 | 雨水侵入 | 上部に水返し板設置 |
| 内側に構造材がある | 通気経路が断絶 | カビ・断熱低下 | 胴縁間に開口位置調整 |
ガラリは小さな部材ですが、配置次第で室内環境が変わります。結露・カビ・湿度・臭気の滞留など、住宅の快適性は「空気の動線」で決まるため、上記のポイントに注意して設計検討を実施しましょう。
建築のガラリについてまとめ
建築用語の「ガラリ」は、建物内部に新しい空気を取り入れ、湿気や臭気を逃がすための自然換気部材です。外壁、扉、窓、間仕切りなど用途に応じて形状が変わり、建築基準法では「換気に有効な開口部」として扱われます。
ただし、羽根板があるため有効開口率の確認が必要で、施工方法や防水処理で性能差が生まれます。見た目が似ていても、レジスターやベントキャップとは目的が違う点に注意が必要です。