【2025年版】建築パースとは?初心者の描き方・おすすめ無料ソフト・副業方法まで徹底解説

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Category:コラム建築

著者:上野 海

建築パースは、建物の完成イメージを立体的に表現するための重要な設計ツールです。

図面や言葉だけでは伝わりにくい「空間の広がり・光の方向・素材感・スケール感」を視覚化できるため、近年では施主提案・広告・不動産販売・BIM・VR活用まで用途が広がっています。

そこでこの記事では、初心者向けに建築パースの基本・描き方・おすすめソフト比較・仕事としての始め方・外注費用相場まで体系的に解説します。

建築パースとは?種類・用途・必要スキルをわかりやすく解説

建築パース(英語名:Architectural Rendering)とは、建築物の完成イメージを立体的に表現する図や画像のことです。

図面だけでは伝わらない次の要素を視覚的に理解できるため、建築設計・不動産・施工会社・広告クリエイティブなど多様な場面で活用されています。

  • 空間の広さ
  • 素材感
  • 立体構成
  • 光・影の方向
  • 生活感

また近年は、CGパース・実写合成・AI生成パース・VR/ARパース・BIM鳥瞰図など技術が進化し、従来の「手描きスケッチ」からより高度で写実的な表現が可能になっています。

特に国土交通省が推進するBIM/CIMが登場して以降、設計段階での3D活用が急増し、建築パース制作は必須スキルと言える状況になりつつあります。

(参考:国土交通省「建築BIM推進会議」

建築パースの目的(設計・施主共有・広告・VR活用)

建築パースを作成する目的は、単に「完成形を人に見せる」ことではありません。

次のようなシーンで、業務全体をスムーズに進める重要なコミュニケーションツールとして機能します。

用途活用シーンメリット
設計検討材質・高さ・配置・色味の比較検討認識違い・手戻りの防止
施主共有戸建住宅・店舗・リノベ提案「施工前の不安」を可視化
広告・販売チラシ・分譲HP・モデルルーム代替魅力訴求・成約率向上
VR/デジタル展示内覧シミュレーション・プレゼン遠隔でも意思決定が可能

特に2025年は、不動産販売DX・BIM活用・モデルハウスのバーチャル展示需要が高まり、建築パースの役割がこれまでよりも戦略的になっています。

外観パースと内観パースの違いを比較

建築パースの表現の種類は、大きく「外観パース(Exterior Rendering)」と「内観パース(Interior Rendering)」に分けられます。

区分外観パース内観パース
用途広告・申請・設計共有住宅提案・レイアウト検討
視点建物外部から俯瞰人の視点(室内)
重要要素形状・外壁・ランドスケープ照明・家具・色・生活感
制作難易度中〜高高(細かい素材表現が必要)
仕上げ表現写実・イメージ・手描き表現など写実モード・VR連携が主流

外観パースは、建物全体の形状・外壁材・屋根・窓形状・植栽・周辺環境などを俯瞰し、「建物の佇まい」を表現する目的で使用されます。特にマンション設計、公共施設、戸建住宅の提案で広く利用されています。

一方で内観パースは、部屋の広さ・家具レイアウト・照明・色・素材・生活導線などを視覚化することで、空間のイメージをよりリアルに伝えるためのパースです。特に住宅提案・ホテル・店舗・オフィス設計で多用されます。

施工・設計・不動産プロモーション・行政申請・VRモデル化など、用途によって採用するパース形式が変わるため、この違いを理解しておくことが重要です。

手描き(手書き)パースとCGパースの違いを比較

建築パースの描き方の種類は、大きく分けて「手描きパース(アナログ)」と「CGパース(デジタル)」があります。

比較項目手描きパースCGパース
表現力柔らかい・世界観重視リアル・写真品質・没入感
制作スピード初期案は速いが修正は手間初期構築やや時間、修正は高速
コスト案件規模によって変動ソフト費・PCスペックが必要
用途初期提案・コンセプト・ブランド案件販売資料・広告・施工調整・VR
データ活用性紙中心・再利用難しいCAD/BIM連携可能・拡張性高い

まず手描きパースは、鉛筆・コピック・水彩・色鉛筆・マーカーなどを用いて描く表現方法で、建築提案の初期段階やテイスト重視の案件で採用されることが多くあります。

対してCGパースは、3Dモデルやレンダリングソフトを使用して制作する写実的なパースです。2024〜2025年の市場では、建築広告・販売資料・確認申請・VR展示において標準方式となっています。

建築パースの描き方|初心者が最初に覚えるべき2つの基本

建築パースは、センスやアート技術ではなく、空間を正確に捉えるための基礎ルールを覚えることが大切です。

ここでは、ファーストステップとして覚えたい2つの基本を紹介します。

透視図法(一点・二点・三点透視)を理解する

パース制作の基本は、以下に示す透視図法(奥行き)を正しく描く方法を理解することです。

透視図法特徴用途例
一点透視(1VP)奥行きがひとつの消失点に向かう廊下・正面キッチン・ホテルロビー
二点透視(2VP)左右方向に2つの消失点を持つ住宅・店舗・建築提案一般
三点透視(3VP)上下方向にも消失点が追加高層建築・ビル群・鳥瞰パース

なお、多くの建築CGや広告パースは、自然で現実的な視野感覚が再現できる「二点透視」をベースにしています。

ラフスケッチ→モデリング→質感付けの流れ

建築パース制作は「いきなり完成形をつくる」のではなく、段階的に精度を上げていく方式が効率的で失敗を防げます。以下に、主な建築パース習得の手順をまとめました。

  1. ラフスケッチ(構図決め)
    目的:視点・構図・比率・光の方向を決める
  2. モデリング(形状作成)
    ラフに合わせて実寸大のパースをモデリングする
  3. 質感付け・仕上げ(レンダリング→加工)
    ツールのビジュアライズ設定で質感を調整し、レンダリングを実施する

この順番に沿えば、途中でのつくり直しや手戻りを防止しやすくなります。特に、ラフスケッチ時には、クライアントや関係者との内容確認をすることが重要です。

建築パースソフト・アプリおすすめ比較【無料〜有料】

建築パース制作に使えるソフトは非常に多く、目的・制作スピード・写実性・予算によって最適な選択が変わります。参考として以下に、おすすめのソフト・アプリを整理しました。

用途最適ソフト難易度価格帯の目安
初心者・無料で始めたいSketchUp Free / Blender★1〜★3無料
住宅・提案資料制作Twinmotion / D5 Render /Revit★3無料〜数万円/月
広告品質・高写実V-Ray / Corona★4数万円/月〜
VR・リアルタイム検討Enscape / UE5★3〜★5数万円/月〜

なお、導入する建築パースのソフトやアプリ選びで後悔したくない方は、一度無料体験版・トライアルを利用し、「実務で役立つのか」「社内でうまく活用できるのか」を確認することが大切です。

また、使い方がわからない場合には、サポートが充実している製品を選んでおくとよいでしょう。

建築パースを制作する方法別メリット・デメリット

建築パース制作には主に「自分でつくる」「手書きで仕上げる」「外注依頼する」の3つの方法があります。

ここでは、それぞれの制作方法のメリット・デメリットを紹介します。

ソフトで作成

CGソフトを使って制作する方法です。無料の初心者向けソフトから、プロ用高速レンダリングツールまで幅広い選択肢があります。

メリットデメリット
・写真のようなリアルな仕上げが可能・修正が容易(材質・光に強い)・VR対応や360°ビューなど拡張性が高い・PCスペック、ソフト代が必要・習得までに学習期間がかかる・レンダリング時間が長い場合がある

たとえば、広告クオリティが必要な場合や、修正回数が多く、複数パターンを求められる案件などにおすすめです。

近年では、建築パースを自動生成できるツールなども登場しています。詳しくは以下の記事をチェックしてみてください▼

手描きで作成

手描きパースは文字通り手描きで制作するパースのことです。温かみ・雰囲気・デザイン意図を伝える力が高く、特に住宅・リノベ・店舗案件で効果的です。

メリットデメリット
・表現が柔らかく、世界観訴求力が高い・スケッチ段階の初期提案に最適・設計意図が伝わりやすい
(コンセプト共有◎)
・修正が難しい
(やり直しになることが多い)・写実性や広告利用には限界がある・作り込みに時間がかかり、再現性が低い

初期提案で世界観を伝えたい場合や、手描きのイメージがブランドと相性が良い場合などにおすすめの書き方です。

外注(制作依頼)

建築パース制作をプロの制作者・制作会社・個人クリエイターに依頼する方法です。近年は副業市場や制作プラットフォームが整い、依頼のハードルが下がっています。

メリットデメリット
・最高クオリティの納品が可能
(写実〜広告レベル)・時間・労力を削減できる・制作フロー・修正対応が体系化される
・外注コストが必要・制作側との認識合わせが必要・依頼先次第で品質に差が出やすい

短納期・高品質が求められる場合や、社内に建築パースの作成ノウハウがない場合におすすめです。

外注サービスを詳しくチェックしたい方は、一例として以下の記事のサービス情報をご参考ください▼

建築パースの仕事の取り方|副業・フリーランス・求人動向

建築パースを自分の仕事にしたいという方は、副業・フリーランス・就職・転職といった方法でチャレンジが可能です。以下に、獲得ルートと難易度を整理しました。

方法難易度案件量特徴
建築会社・工務店へ直接営業(転職)継続案件になりやすく安定
クラウドソーシング(ココナラ等)初心者でも始めやすい
X(旧Twitter)・Instagram投稿作品の世界観でファン化できる
不動産会社・インテリア会社提携単価が上がりやすい
求人・副業サービス
(クラウドリンク等)
未経験可案件が増加中

上記の方法はあくまで一例です。まずは建築パースの作成を学ぶことからスタートし、徐々に案件獲得へ進んでみてはいかがでしょうか。

建築パースについてよくある質問【FAQ】

建築のパースとは何ですか?

建築パースとは、建物の外観・内観・空間構成を立体的に表現した完成予想図のことです。図面だけでは伝わりにくい奥行き・光・素材感・人のスケール感を視覚的に伝えられるため、施主への提案、プレゼン、広告、VRシミュレーションなどに活用されます。

建築パースを無料で作れるソフトは?

無料でも使える建築パースソフトは複数あります。特に「SketchUp Free」「Blender」「Homestyler」といったソフトやアプリは、初心者〜現場提案まで幅広く使われています。

パースデザイナーの年収は?

働き方によって大きく差がありますが、2025年の市場相場は副業で年収50万円、フリーランスで年収300万~900万円、制作会社勤務で年収350万~700万円が目安です。また、AI・BIM(Revit・Archicad)・VR(Twinmotion・Enscape)の普及により、パース制作者の市場価値は今後さらに上昇すると予測されています。

手描きとCGはどちらが主流?

現在の主流はCGパースです。住宅メーカー・不動産広告・VR提案などでは、速度・修正性・素材管理の観点からデジタルが選ばれています。しかし、手描きパースの需要が減っているわけではありません。一部のクライアントでは味や雰囲気をつくりやすい手描きを採用するケースもあるため、両方の知識を身につけるのがおすすめです。

まとめ

建築パースは、建築物を立体的に表現し、完成後のイメージ共有・意思決定・プレゼン資料として欠かせない技術です。手描き・CG・BIMなど表現方法は多様化し、用途に応じた使い分けが重要になります。

これから建築パースに挑戦したい方は、まず無料ソフトで操作に慣れ、実際の案件や作品集を作りながらスキルアップしてみてください。