国土交通省、9月建築着工床面積は前年比4.2%減停滞続く、民間6か月連続減も公共部門は回復

令和7年9月における全国の建築物着工床面積について、最新データが公表されました。今回の統計では、建築市場全体に減少傾向が継続していることが明らかとなっています。

全体的な着工状況
9月の建築物着工床面積は854万平方メートルとなり、前年同月と比べて4.2%の減少を記録しました。この減少は6か月連続となっており、建築業界における停滞感が続いていることが浮き彫りとなっています。
建築主別に見ると、公共部門は44万平方メートル(前年同月比18.2%増)となり、8か月ぶりの増加に転じました。一方、民間部門については809万平方メートル(同5.1%減)となり、6か月連続での減少が続いています。
民間建築主による動き
民間建築主の内訳では、居住用が503万平方メートル(前年同月比6.9%減)で6か月連続の減少、非居住用は307万平方メートル(同2.1%減)で4か月連続の減少となりました。
業種別の着工動向
民間非居住用建築物を業種別に見ると、以下のような特徴が現れています。
製造業関連では44万平方メートルとなり、前年同月比で42.6%という大幅な減少を示しました。情報通信業においても1万平方メートルにとどまり、91.3%という顕著な落ち込みとなっています。
卸売業・小売業は29万平方メートル(前年同月比15.5%減)、医療・福祉分野では23万平方メートル(同20.3%減)と、いずれも前年を下回る結果でした。
対照的に、その他のサービス業は50万平方メートルと大幅な伸びを記録し、前年同月比で132.5%増という好調ぶりを見せています。金融業・保険業についても2万平方メートル(同34.7%増)と増加しました。宿泊業・飲食サービス業も13万平方メートル(同4.7%増)と、わずかながら増加傾向にあります。
使途別の状況
使途別に分析すると、事務所は41万平方メートル(前年同月比38.9%増)となり、2か月連続での増加を維持しています。店舗についても29万平方メートル(同6.4%増)と、3か月ぶりに増加へ転じました。
しかしながら、工場は34万平方メートル(前年同月比44.6%減)と4か月連続の大幅減少となっています。倉庫も110万平方メートル(同2.4%減)と、前月の増加から再び減少へと転じる結果となりました。
新設住宅の状況
新設住宅については、総戸数が63,570戸となり、前年同月比で7.3%の減少でした。建築主別では、公共が785戸(前年同月比126.9%増)と大幅に増加した一方、民間は62,785戸(同8.0%減)となっています。
利用関係別の内訳
利用関係別に見ると、持家は18,273戸(前年同月比5.6%減)、貸家は28,494戸(同8.2%減)といずれも減少しました。給与住宅については375戸(同53.7%増)と増加に転じています。分譲住宅は16,428戸(同8.3%減)の減少でした。
分譲住宅の内訳では、マンションが6,121戸(前年同月比20.0%減)と大きく落ち込んだ一方、一戸建ては10,070戸(同0.4%減)とわずかな減少にとどまっています。
資金別の動向
資金別では、民間資金による住宅が57,865戸(前年同月比8.0%減)、公的資金による住宅が5,705戸(同0.8%増)となりました。公的資金のうち住宅金融機構融資住宅は1,490戸(同29.1%減)と減少しています。
地域別の特徴
地域別に見ると、東京都では床面積の合計が1,108千平方メートルとなり、前年同月比32.4%の大幅増加を記録しました。北海道も350千平方メートル(同21.8%増)と好調です。
一方、宮城県は95千平方メートル(前年同月比65.0%減)と大幅に減少し、千葉県も315千平方メートル(同38.6%減)の大きな落ち込みとなっています。兵庫県では281千平方メートル(同43.5%減)と、著しい減少を示しました。
新設住宅の戸数では、沖縄県が1,055戸(前年同月比30.2%増)と好調な伸びを見せています。京都府も1,836戸(同44.6%増)の大幅増加でした。
構造別の分析
構造別に見ると、木造は3,768千平方メートル(前年同月比3.3%減)、非木造は4,771千平方メートル(同4.8%減)となりました。
非木造の内訳では、鉄骨鉄筋コンクリート造が210千平方メートル(前年同月比595.6%増)と大幅に増加しています。鉄筋コンクリート造は1,276千平方メートル(同20.6%減)、鉄骨造は3,144千平方メートル(同4.2%減)でした。
今後の建築市場における展望
今回の統計データから、建築市場全体としては減少基調が続いているものの、事務所や店舗といった使途では回復の兆しが見られます。また、公共部門の着工が増加に転じたことは、今後の市場動向に一定の影響を与える可能性があります。
産業別では明暗が分かれており、製造業や情報通信業の落ち込みが目立つ一方、サービス業関連では活発な動きが見られるなど、業種による差異が顕著となっています。地域別でも東京都や北海道の好調さと、一部地域の低迷という対照的な状況が確認されました。
今後の建築市場の動向については、民間部門の回復時期や、公共投資の継続性などが注目されるポイントとなりそうです。
出典情報
国土交通省リリース,建築着工統計調査報告(令和 7 年 9 月分)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha709.pdf