大成建設、シグネチャーパビリオンEARTH MARTの茅葺屋根で表彰、岡山県真庭市と連携

2025年10月24日、大成建設株式会社(代表取締役社長:相川善郎)は、同年10月12日に公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(以降、博覧会協会と表記)が実施した表彰式において、調達部門で賞を受けました。評価対象となったのは、同社が建設を手がけたシグネチャーパビリオン「EARTH MART」で使用された茅葺屋根の茅材料を調達する際の取り組みです。
自然素材を活用した調達から施工までの工夫
今回評価された活動では、自然が生み出す再生可能な素材である茅の持つ性質を最大限に生かしながら、材料を入手する段階から実際に屋根を作り上げるまでの全工程で、環境や社会に配慮した方法が採用されました。
具体的な実施内容は次の通りです。
・岡山県真庭市蒜山の蒜山自然再生協議会との連携協定により、国産茅材の利用を促進しました
・将来的に茅材料を再び使えるようにすることを想定した建物の計画と設計を行いました
・茅葺屋根を作る伝統技術を次の世代に引き継ぐため、若い世代の職人を積極的に採用しました
環境保全と文化継承の両立が評価のポイント
これらの活動内容は、持続可能な社会を実現するための建築材料として茅が持つ優れた可能性を多くの人々に知らせるとともに、地域で手に入る資源を有効に使うこと、そして日本の伝統的な茅葺技術を後世に伝えていくことの両方を実現している点が高く評価されました。
博覧会協会からは、次のようなコメントが寄せられています。
「茅という素材は、生き物が暮らす環境を守る効果や、建物の断熱性能を高めてエネルギー使用量を減らせる効果など、環境面で非常に大きな可能性を秘めています。この素材を国内の産地と協力して入手し、経験豊富な職人だけでなく若手の職人も参加させながら、将来また使えるように工夫した方法で屋根材料として仕上げたことが、今回の受賞につながりました。
日本国内はもちろん、海外からも多くの人々が訪れる万博会場で、茅が持続可能な環境に優しい素材であることを広く知ってもらうことにより、日本に古くから伝わる茅葺文化を守り、さらに活用していく動きが活発になることを期待しています」
地域資源を活用した建築の新たな可能性
茅材料は日本各地で古くから屋根材として使われてきた歴史があります。近年では新しい建材に押されて使用される機会が減っていましたが、環境への負荷が少ない素材として再び注目を集めています。
今回のプロジェクトでは、特に岡山県真庭市蒜山地域との連携が重要な役割を果たしました。地域で採取される茅を活用することで、輸送にかかる環境負荷を抑えるとともに、地域経済の活性化にもつながっています。
また、材料を再利用できるように設計段階から考慮したことも、大きな特徴です。建物が役目を終えた後も、使用された茅材料を別の用途に活用できるようにすることで、資源の無駄を減らす取り組みが実践されました。
伝統技術の継承と若手育成への貢献
茅葺屋根を作る技術は、長年の経験と高度な技能が必要とされる専門的な仕事です。しかし、近年は茅葺屋根の建物が減少したことで、この技術を持つ職人の数も減ってきています。
今回の取り組みでは、技術継承を担う次世代の茅葺職人を積極的に起用することで、実際の作業を通じて技術を学ぶ機会を提供しました。このような実践的な育成方法は、伝統技術を確実に次の世代に引き継いでいくために欠かせないものです。
今後の展開と建築業界への影響
大成建設は今回の受賞について、このプロジェクトで得られた経験や技術的な知識を、今後手がける建築事業に積極的に取り入れていく方針を示しています。
持続可能性を重視し、それぞれの地域が持つ特色を生かした建材として、国内で生産される茅材料の利用をさらに広げていくとともに、日本の伝統的な茅葺文化を守り育てていく活動にも力を入れていく考えです。
表彰式には、大成建設から足立憲治常務執行役員関西支店長が出席し、賞を受け取りました。
環境に配慮した建築材料の活用と伝統文化の保存という、一見すると異なる目標を同時に達成した今回の取り組みは、これからの建築業界における新しいアプローチのモデルケースとなる可能性を秘めています。
出典情報
大成建設株式会社リリース,シグネチャーパビリオン「EARTH MART」茅葺屋根の茅材調達が「持続可能な取り組みに関する表彰」を受賞,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/251024_10675.html