竹中工務店とドイツのネメチェクグループが提携、AI活用で建設プロセス全体を効率化

大手建設会社の竹中工務店は、建設業界におけるデジタル技術の活用を加速させるため、ドイツに本社を置くネメチェクグループとの包括連携に関する覚書(MOU)を締結したと発表しました。両社は10月27日付で包括連携に関する覚書(MOU)を締結し、建設プロセス全体のデジタル化に向けた協力体制を構築します。
デジタル基盤の整備を目指す提携内容
今回の提携では、竹中工務店が進める建設業のデジタル基盤整備において、ネメチェクグループが持つ技術力を活用していきます。建物の企画段階から設計、工事、そして完成後の管理運営に至るまで、すべての段階でAI技術を導入することにより、業務判断のスピードアップや作業時間の短縮を図ります。さらに、顧客に対してより豊富な提案を行えるようになることで、建設サービスの質と作業効率の両面での向上を狙います。
提携に至った経緯
竹中工務店は2021年12月、建設分野におけるデジタル化の構想を公表し、業界のデジタル化推進に取り組んできました。一方のネメチェクグループは、建築・設計・建設・運営の各分野で使用されるソフトウェアの開発において、世界的に高い評価を得ている企業です。BIMやCAD、プロジェクト管理といった領域で、最先端の技術を提供し続けています。
両社の提携により、竹中工務店が長年の実務で蓄積してきた専門知識と、ネメチェクグループの最新デジタル技術を組み合わせることで、これまでにない効率的な解決策を生み出すことを目標としています。
協力体制の詳細
両社は以下の4つの分野で協力を進めていきます。
■知見の相互共有
定期的に開催する勉強会やワークショップを通じて、建物の企画から運営まで、各段階における手法や基準、実務のノウハウを共有します。
■共同での技術開発
建設業界向けのAI技術、クラウドを使った業務フロー、デジタル基盤の開発を共同で実施します。革新的な解決策を見つけ出し、優先度を決めて実行に移します。
■AI活用事例の創出とデータ連携
建設業界に特化したAI活用の事例を共同で開発し、必要なデータの共有も行います。
■検証と改良作業
お互いが開発した試作品や業務フロー、解決策について、検証作業を行い改善を重ねていきます。
それぞれの担当分野
ネメチェクグループは、AI技術、クラウド技術、BIM技術に関する最新の知識や業界動向を提供します。また、先進的な業務フローや製品の試作版も提供する役割を担います。
竹中工務店は、建築プロジェクトにおける企画・設計・工事・運営の各段階での業務フローを提供します。さらに、実際のプロジェクトから得られる実用的な意見や改善提案を行います。
将来的な取り組み方針
この提携を通じて、建築プロジェクトのすべての工程において、DX推進のためのAI技術を使った新しい解決策の開発と実証を進めていきます。竹中工務店が整備を進めているデータ基盤の強化と合わせて、プロジェクト全体でAI技術を用いることで、品質と生産性の向上を実現します。
また、ネメチェクグループが持つ世界規模のネットワークを活用することで、海外での事業展開における技術的な優位性も確保できると期待されています。
長期的な視点では、この提携で得られた知識や経験を活かし、建設業界全体のデジタル化を促進することで、持続可能で効率的な建設プロセスの確立に貢献していく方針です。
ネメチェクグループの概要
ネメチェクグループは、建築・設計・建設・運営の各業界向けにソフトウェア製品を提供する世界的企業です。1963年にドイツで創業して以来、現在では60カ国以上で事業を展開しています。ARCHICADやAllplan、Vectorworks、Solibri、dRofusといった主要製品を通じて、建物の企画から完成後の管理まで、建物のすべての段階をサポートするサービスを提供しています。
建設デジタル基盤とは
竹中工務店が2021年12月に発表したデジタル化戦略の中心となる取り組みで、大量のデータを一箇所に集めて保管するシステムと、IoT技術・データ分析ツール・AI技術が連動して機能するデータ基盤を整備します。設計・工事・維持管理の各段階で生み出されるデータを統合的に活用することで、建設プロジェクト全体の効率化と品質向上を目指しています。
データを一元管理するシステムとは、企業が持つ大量のデータを集約して蓄積するための管理システムのことです。また、データ分析ツールとは、企業に蓄積された膨大なデータを収集し、分析・視覚化するためのツールを指します。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,ネメチェクグループと建設DXに関する包括連携覚書を締結 建設デジタルプラットフォーム構築に向けたデータ基盤強化とAI活用を推進,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/11/01/