竹中工務店ら大手4社、建設ロボット標準化研究に着手、人手不足解決へ共同開発

2025年10月30日、竹中工務店、鹿島建設、大林組、フジタの4社が、建設RXコンソーシアムの活動を通じて、共同提案体としてソフトウェアの標準化技術を活用した建設ロボットシステムの研究開発に着手したと発表しました。

この取り組みの特徴は、建設ロボットの共通利用を可能にするソフトウェアの標準化技術の創出にあります。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「デジタル・ロボットシステム技術基盤構築事業」の一環として進められており、建設業界が直面する労働力不足という深刻な問題の解決を目指しています。

建設RXコンソーシアムは2021年9月に設立された民間組織で、建設業界における就労人口の減少や生産性向上、安全性の確保といった課題に対応するため、施工ロボットやIoTアプリケーションの開発と活用を推進するロボティクストランスフォーメーション(ロボット変革)に取り組んでいます。

深刻化する建設現場の人手不足

建設業界では現在、技能を持つ労働者の高齢化が進んでいます。加えて、若い世代の新規入職者が減少しているため、将来の労働力確保が極めて困難な状況となっています。

これまでの建設現場で導入されてきたロボットは、特定の作業のためだけに設計されたものが中心でした。こうしたロボットでは、ハードウェアとソフトウェアが分離できない形で一体化されており、一度開発した技術を別のロボットに応用することができませんでした。つまり、汎用性に欠けるシステムだったのです。

この結果、多種多様なロボットシステムを効率良く生み出すことが難しく、開発コストも高額になりがちでした。そこで求められているのが、標準化されたモジュールを使って効率的にロボットを開発できる手法の確立です。

4つのロボットシステムで標準化技術を確立

今回の研究開発では、各社が担当する4種類のロボットシステムを通じて、汎用的に使えるシステムインテグレーションモジュール(SIモジュール)を組み込んだ実用的なロボットシステムの実現を目指します。

SIモジュールとは、ロボットを稼働させるために必要となるソフトウェアモジュールのことです。具体的には、自己位置推定や経路計画、物体検知などのプログラム部品であり、様々なロボットで共通して利用できるように標準化されています。

各社が開発を担当するロボットシステム

■竹中工務店の取り組み

資材を自動で運搬するロボットシステムの開発を担当します。建設現場は日々状況が変化するため、そのような環境下でも高い精度で自律走行できる技術の確立を目指しています。

■鹿島建設の取り組み

風量を測定するロボットシステムの開発に取り組みます。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と連携させることで、自律走行しながら検査を行い、その結果を帳票として作成する技術の実現を図ります。

■大林組の取り組み

耐火被覆の吹付け作業を行うロボットシステムを開発します。環境を認識するロボットと連携することで、吹付け作業の計画を現場の状況に応じて修正できる技術を構築します。

■フジタの取り組み

汎用移動ロボットを多機能化する技術の開発を進めます。移動ロボットに様々な作業用アタッチメントを取り付けられるようにすることで、一台のロボットで複数の作業をこなせるようにします。

業界全体への波及効果を期待

本研究開発により、ロボットシステムの開発・運用コストの削減を目指します。標準化されたモジュールを使うことで、新しいロボットの開発期間も短縮できるでしょう。

さらに、NEDOが別途進めている「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」のロボティクス分野における取り組みと連携することで、より高性能なロボットシステムを効率的に実現していく計画です。

建設業界を超えた展開も視野に

長期的な視点では、この研究開発で生み出される汎用的なSIモジュールを建設分野だけでなく、他のサービス産業にも広げていくことを検討しています。これにより、日本のロボティクス産業全体の国際的な競争力を高めることにもつながると期待されています。

建設業界が抱える労働力不足という課題に対して、4社が力を合わせて標準化技術の創出に挑む今回の取り組みは、業界の未来を左右する重要なプロジェクトといえるでしょう。様々なロボットで共通利用できる技術基盤が整えば、建設現場の自動化・省力化が大きく前進することになります。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,ソフトウェアの標準化技術を活用した建設ロボットシステムの研究開発に着手 4種類のロボットシステムの開発・実証で標準化技術を創出し労働力不足解決へ,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/10/07/