国土交通省調査で判明、建設業界の働き方改革は進展も課題山積、4週8休の実現率は約3割

令和6年度に実施された「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」により、建設業界における労働環境改善の現状が浮き彫りになりました。本調査は建設業法第27条の37に基づく届出団体116団体の会員企業を対象に実施され、回答企業数は1,602社(うち有効回答数1,574社)。調査時点は令和7年1月1日(令和5年12月以降に請け負った工事を対象)。

目次
週休二日制度の導入状況
建設現場における休日確保の取り組みは着実に前進しています。4週8閉所を提案する企業は前年度比8.5ポイント増の42.3パーセントとなりました。ただし実際の達成企業は約3割に留まっており、提案と実現には開きがあります。
公共工事をメインとする企業では53.9パーセントが4週8閉所を実現している一方、民間工事中心の企業では10.8パーセントと低水準です。発注形態による労働環境改善の進捗度合いに大きな差が見られます。
技術者・技能者の休日取得実態
技術者において4週8休以上を取得する割合は28.6パーセントとなり、前年度から7.4ポイント増加しました。技能者も29.4パーセントに達し、前年度比3.6ポイントの改善を示しました。ただし、4週6休程度以下の取得者も依然として存在しており、改善の余地があります。
残業時間の現状
技術者の月平均残業時間が45時間未満である企業は86.6パーセントとなり、前年度から1.4ポイント改善しました。一方、技能者については88.9パーセントと、前年度より2.1ポイント減少する結果となりました。
工期設定における協議状況
民間工事における工期設定について、「注文者と協議し、要望が概ね受け入れられている」と回答した企業は約6割を占めました。最終的な工期の妥当性については、「妥当な工期」または「余裕のある工事」と回答した企業が全体の7割近くに上りました。しかし、一次下請工事を主とする企業では「短い」との回答割合が高く、請負階層による評価の差異が見られました。
工期変更の実施状況
自社の責任によらない事由で工期変更が発生した企業は下請工事を主とする企業に多く、民間工事でも46.6パーセントで実施されています。変更理由として最も多かったのは「関連工事との調整」で、「悪天候・自然災害」や「人手の確保難航」も主要な理由として挙げられました。
改正建設業法の認知度
2024年6月に改正された建設業法について、全体の8割以上が改正内容を認知しています。しかし、小規模企業では4割以上が「知らない」と回答しており、企業規模による情報格差が課題です。
時間外労働是正への取り組み
時間外労働削減の方法として、最も多くの企業が「人材の確保・育成」に取り組んでいます。特に大規模企業でこの傾向が顕著です。一方、小規模企業では「生産体制の最適化」を選択する回答が多く、企業規模により対応策に違いが見られました。
ICT活用の状況と障壁
施工現場でICTを活用していない企業は約74パーセントに上りました。特に民間工事の比率が高い企業や下請企業でこの傾向が強まっています。主な課題として、「ICT活用のための人材が不足」が43.7パーセント、「費用対効果が不明」が41.6パーセントを占めました。
資材価格高騰への対応
価格転嫁ルールを認知している企業は全体の約60パーセントに達しましたが、小規模企業では37.6パーセントにとどまっています。契約変更条項のある請負契約は60.23パーセントとなり、前年より10.23ポイント増加しました。価格変動を受けて契約変更の協議を実施した企業は約40パーセントでしたが、すべての契約で変更に至ったのは約20パーセントに留まりました。
今後の展望
調査結果から、建設業界における働き方改革は確実に進展していることが確認できました。一方で、小規模企業への制度周知、ICT活用の促進、価格転嫁の円滑化など、解決すべき課題も残されています。業界全体でこれらの課題に取り組み、持続可能な労働環境を構築していくことが求められています。
出典情報
国土交通省リリース,令和 6 年度「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」調査結果(建設企業),https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001964944.pdf