大成建設、トンネル坑内から外周地盤を調査するT-iGeoViewer開発、維持管理を効率化

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、2025年10月15日、シールドトンネルの外周にある地盤の状態を、トンネルの内部から安全に調べることができる新しい調査技術「T-iGeoViewer(ティーアイジオビューアー)」を開発したと発表しました。この技術を使うことで、調査結果をその場ですぐに確認することができます。
目次
地上に大型機器を設置する必要がない調査方法
この新技術では、小さくまとめられた計測機器と、セグメントに備わっているグラウトホールという穴を利用します。グラウトホールとは、トンネルを造る際に外周の地盤とセグメントの間にできる空間を埋めるために使われる設備です。地上に大型の測定機器を置く必要がないため、地下水の水位より下にある場所でも、土の試料を集めたり、詳しい土質の試験を行ったりすることができます。すでに使われているシールドトンネルの修理や補強の工事にも使うことが可能です。
老朽化が進むシールドトンネルの現状
日本国内にある鉄道や道路、上下水道、共同溝といったシールドトンネルの大部分は、使い始めてから30年以上が経っています。長い年月の間に、トンネルの外側にある地盤が変化したり、地下水の水位が変わったりすることで、トンネルの劣化が進んでいます。そのため、補修や補強を必要とする事例が増えているのが実情です。
補修や補強の工事を行う際には、トンネルの外周にある地盤がどのような状態になっているのか、正確な情報を得ることが非常に重要になります。
従来の調査方法における課題
これまで、トンネルの外周地盤を調査する場合、地表からボーリング調査や物理探査を行うのが一般的でした。物理探査とは、人工的に振動や電磁波を起こして、地盤の性質を調べる技術のことです。
しかし、都市部では調査のための場所を確保することが難しいという問題がありました。そのため、調査が必要な場所で詳しい地盤の情報を正確に、そして素早く把握することが困難だったのです。
開発の背景と目的
こうした課題を解決するため、大成建設はセグメントに設けられているグラウトホールを活用する方法を考案しました。トンネルの坑内から外周地盤の性質を安全に、そして迅速かつ正確に調べることができ、さらに調査の結果をリアルタイムで確認できる技術の開発に取り組みました。
この新技術により、調査を行う場所の地盤で地下水が流れ込んでくるのを抑えながら、土の試料を採取したり土質試験を行ったりすることが安全に、そして正確にできるようになります。シールドトンネルの維持管理をより高度なものにし、長く使い続けられるようにすることに大きく役立つと期待されています。
新技術「T-iGeoViewer」の主な特長
計測装置を小型化したことにより、都市部であっても地表に調査用の場所を確保する必要がなくなりました。調査の準備にかかる期間を短くでき、作業の負担を減らし、費用も抑えることができます。トンネルの坑内から、調査したい場所の詳しい地盤情報を効率よく集めることが可能になりました。
地下水位より下の環境でも安全に調査できる
独自に開発した止水の仕組みによって、地下水の圧力をコントロールします。これにより、トンネルの坑内に地下水が入り込んでくるのを防ぎながら調査を進めることができます。調査する場所で地盤の試料を採取したり、その場で土質試験を実施したりすることが、安全かつ正確に行えるようになりました。
地盤の特性をその場で確認して対策に活用
二重管サンプラーという道具を使って土の試料を採取し、電気式コーン貫入試験という方法で地盤の支持力や間隙水圧などを連続的に測定します。砂や粘土といった土の層の構成や硬さなど、地盤が持つ性質をすぐに把握することができ、リアルタイムで見える形にします。
測定した結果は、水漏れや損傷などの問題が起きたときに原因を調べたり、適切な対策工事を素早く検討したりするのに役立ちます。
今後の展開と期待される効果
大成建設は今後、この「T-iGeoViewer」を活用することで、地盤の性質を迅速かつ正確に把握していく方針です。得られた地盤の特性を反映させて最適な設計を行うことで、シールドトンネルの修繕や補強など、適切な維持管理を推進していきます。
これにより、安全で持続可能なインフラの実現に貢献していくとしています。老朽化が進むインフラの維持管理において、この新技術が果たす役割は大きいと考えられます。
まとめ
シールドトンネルの維持管理における課題を解決する新しい調査技術「T-iGeoViewer」は、従来の方法では難しかった調査を可能にします。トンネル内部から外周地盤の状態を安全に、そして効率的に調べることができるこの技術は、インフラの長寿命化に向けた重要な一歩となるでしょう。
今後、この技術がさらに普及し、多くのシールドトンネルの維持管理に活用されることで、私たちの生活を支える社会基盤がより安全で信頼できるものになっていくことが期待されます。
出典情報
大成建設株式会社リリース,シールドトンネル外周地盤の調査技術「T-iGeoViewer」を開発-トンネル坑内から安全・迅速に地盤性状の調査が可能に-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/251015_10671.html