竹中工務店が新技術ソイルミエール®開発、建設現場で配合割合を30分測定し施工品質管理を向上

株式会社竹中工務店(社長:佐々木正人)が、建設現場におけるソイルセメントの成分配合を迅速に測定できる画期的な技術を開発しました。2025年10月15日に発表されたこの技術は「ソイルミエール®」と名付けられ、蛍光X線を活用した分析手法を採用しています。

ソイルセメントとは、土にセメント系固化材と水を加えて混合した改良土のことです。この新技術により、土・セメント・水という3つの成分がどのような比率で含まれているかを、現場で約30分という短い時間で確認することが可能になりました。

従来は専門の分析機関に依頼する必要があり、結果が出るまでに1週間から1ヶ月もの期間を要していました。しかし、この技術を導入することで、杭工事や地盤改良工事、流動化処理土など、目で直接確認できない地中での作業における品質管理が大幅に向上します。

開発に至った経緯

建設工事の現場では、軟弱な地盤を補強する目的でソイルセメントが広く使われています。地盤の状態は現場ごとに異なるため、土質にばらつきが生じることは避けられません。

このような状況下で、より速やかな品質チェックを実現したいという要望が高まっていました。建設現場ごとに土質のばらつきがある中で、現場でより迅速な品質管理を行うべく2021年から開発に着手しました。

技術的な特徴

本技術の中核となるのは、持ち運び可能なハンドヘルド型の蛍光X線分析装置です。この装置は小型かつ軽量で、元素ごとの質量比率を測定できる優れた機器です。

具体的には、採取した試料にX線を当てることで発生する蛍光X線を検出し、カルシウムの含有量を把握します。カルシウム量が分かれば、セメントがどれだけ含まれているかを正確に算出できる仕組みです。

蛍光X線を用いた分析手法には、測定する環境や試料の状態による影響を受けにくいという利点があります。そのため、安定性の高い分析データを得ることができます。

試料の前処理工程

蛍光X線分析で正確な数値を出すためには、試料を適切な状態に整える必要があります。具体的には、乾燥させることと細かく砕くことが求められます。

本技術では、作業員が容易に運搬できる小型の機器を使用して、これらの前処理作業を実施します。乾燥と粉砕の工程を経ても高い測定精度を維持できる手法を確立したことで、建設現場という限られた環境でも30分程度での測定が実現しました。

試料は採取直後の状態から、調整を経て測定に適した形状へと変化します。この一連のプロセスを効率化したことが、迅速な測定を可能にした要因です。

測定プロセスの詳細

施工が進行中のソイルセメントから未固結の試料土を採取した後、以下の手順で分析を進めます。

・まず、加熱水分計を200℃に設定し、試料を乾燥させて水分の含有量を計測します。次に、乾燥させた試料土を小型ミルで微細な粉末状に加工し、圧力をかけて成形します。

・成形が完了した粉体試料にX線を照射し、カルシウムの量を高い精度で測定します。得られたカルシウムの重量比率データから、乾燥状態の土粒子と固化材料の量を計算で求めます。

・最後に、最初に測定した水分量のデータも加味して、土粒子・固化材料・水分という3要素の配合比率を算出します。

導入による効果

蛍光X線を活用した分析により、ソイルセメントの配合比率が数値として明確に示されます。これにより、施工が設計通りに行われているかどうかを、より確実に確認できるようになります。

■工事の効率化

セメントミルクの注入量や施工の仕様を、データに基づいて合理的に決定することが可能になります。また、早い段階で判定結果が得られることで、工事全体のスケジュール管理も最適化できます。

■環境への配慮

必要以上に材料を注入することを防げるため、資源を効果的に活用できます。さらに、廃棄物の発生量を抑制することにもつながります。

今後の展望

竹中工務店は、この技術を通じて資源の有効な利用と廃棄物の削減を推進し、環境への負荷を軽減していく方針です。同時に、顧客に対してより信頼性の高い品質を提供することを目指しています。

建設業界では、施工の透明性と品質保証がますます重要視されています。「ソイルミエール®」は、こうした業界のニーズに応える技術として、今後の普及が期待されます。

現場での迅速な測定が可能になることで、問題が発見された場合も早期に対応できるようになります。これは工事の安全性向上にも寄与する重要な進歩といえるでしょう。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,ソイルセメントの配合割合を建設現場で短時間測定する技術「ソイルミエール®」を開発,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/10/05/