竹中工務店、建設現場の風を予測するソラビュー実用化、タワークレーン作業を支援

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、2025年10月14日に、建設現場上空の風速・風向を予測するWEBアプリ「ソラビュー」を開発したことを発表しました。このシステムは、レーザー光を使った観測技術と人工知能による解析を組み合わせたもので、高層建築物の建設に欠かせないタワークレーンを使った資材の吊り上げ作業をより安全に実施できるように設計されています。すでに同社が担当する工事現場での運用が始まっています。

従来の観測方法が抱えていた課題

高層建築物の建設工事では、タワークレーンを使って資材を高所へ運ぶ作業が日常的に行われます。従来は、地上やタワークレーンに風速計を設置し、10分間平均風速で毎秒10メートルを基準に作業継続の可否を判断していました。

しかし、この方法には限界がありました。測定できるのは機器を設置した一箇所の情報だけで、これから先の風の状態を知ることができませんでした。工事の計画を立てるには今後の風の状況を見通す必要があり、風による危険性をどう評価するかが大きな問題となっていたのです。

新システム開発に至った経緯

こうした状況を改善するため、竹中工務店は次の3つのポイントに注目しました。

・様々な高さでの風の状態を把握し、作業を実施するかどうかの判断をより正確にする

・あらかじめ作業の計画を立てたり、資材が風で飛ばされないよう対策を講じたりするための予測情報を充実させる

・地表近くと上空での風の違いを正しく理解し、適切な判断を支える仕組みをつくる

これらの課題解決を目指し、同社は吊り上げ作業における安全性と作業効率の両面を向上させるため、WEBアプリ「ソラビュー」の開発に取り組みました。

システムの技術的な仕組み

ソラビューの中心となる技術は、ドップラーライダーと呼ばれる観測装置です。この装置はレーザー光を空中に向けて照射し、大気中に漂う細かい粒子から跳ね返ってくる光を観測します。光のドップラー効果という現象を利用することで、離れた場所の風速や風向を測定できます。従来型の風速計とは異なり、複数の高さの風の状況を同時に把握することが可能です。

システム構築の具体的な手順は以下の通りです。

・特定の場所で1年間にわたりドップラーライダーによる観測を実施

・同じ期間の気象台による観測データを収集

・これら2種類のデータを組み合わせて機械学習を実施

・風の状況を予測するAIモデルを構築

・WEBアプリにこのモデルを組み込み、気象台の最新データを自動的に取得

・利用者が指定した高さと時間帯における風速・風向の予測値を画面に表示

実用面での利点

ソラビューを導入することで、建設現場では次のような効果が期待できます。

短期的な予測として、10分ごとに10分後から60分後まで、また1時間ごとに2時間後から8時間後までの詳しい風の状況を知ることができます。建物が風の流れに与える影響も考慮されており、高層建物(~1,000m)への風速・風向予測が可能です。

これにより、作業の計画をあらかじめ立てやすくなるほか、強い風が予想される場合には事前に資材が飛ばされないよう養生などの対策を講じることができます。WEBアプリの画面では、地表付近と上空で風速が大きく異なる様子を視覚的に確認できるため、より適切な判断が可能になります。

今後の展開計画

本システムは2024年4月から東京都内の当社工事現場にドップラーライダーを設置し、データ収集・分析を進めてきました。本システムは2024年4月から東京都内の当社工事現場にドップラーライダーを設置し、データ収集・分析を進めてきました。今後は他の場所でも観測を行い、データを蓄積していく予定です。そして最終的には、全国の同社の拠点に導入を広げていく方針を示しています。

なお、このシステムは気象予報の業務を目的としたものではありません。あくまでも竹中工務店が請け負う工事現場において、安全管理のための参考情報として活用されるものです。

建設業界のデジタル化推進

竹中工務店は、この技術によって建設現場における安全性の向上と工程の効率化を実現するとしています。人工知能とレーザー技術を活用した建設業界のデジタル化を推し進める取り組みの一環として位置づけられており、社長:佐々木正人のもと、建設現場の安全性向上と工程効率化を実現し、AI・レーザー技術を活用した建設DXを推進しています。

同社は今後も、最新の技術を用いた革新的な解決策の開発を通じて、持続可能で安心して暮らせる社会の実現に寄与していく考えを明らかにしています。建設現場での安全管理は常に重要な課題であり、このような技術の発展が業界全体の水準向上につながることが期待されます。

高層建築物の建設においては、天候条件が作業の進行に大きく影響します。特に風の状況は、高所での作業の安全性を左右する重要な要素です。ソラビューのような予測システムの導入により、作業員の安全を守りながら効率的に工事を進めることが可能になると考えられています。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,建設現場上空の風速・風向予測WEBアプリ「ソラビュー」を開発 レーザー観測とAI分析により高所の風を精度よく予測し揚重作業に活用,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/10/04/