竹中工務店など4社、木曽の廃校2校を合板工場に再生、小径木を高付加価値建材へ

2025年9月25日、Tree to Green、ソルトターミナル、竹中工務店、丹青社の4社が共同で、長野県の木曽地域において注目すべき取り組みをスタートさせました。その名も「(仮称)シンゴーハン」プロジェクトです。このプロジェクトは、これまで使い道が限られていた小径木を、建築や内装、家具などに使える質の高い合板へと生まれ変わらせることを目指しています。

廃校を活用した二拠点での事業展開

4社はこのプロジェクトを運営するため、新たに株式会社ツミカサネを設立しました。事業の拠点となるのは、塩尻市の旧楢川中学校と木曽町の旧上田小学校という2つの廃校です。旧楢川中学校は「第一工場」として丸太から単板を作る拠点に、旧上田小学校は『第二工場』として単板から合板を製造するとともに、内装材加工の拠点として整備されます。

株式会社ツミカサネの本社は長野県木曽郡木曽町新開に置かれ、代表は青野裕介氏が務めます。事業内容は単板および合板の製造・販売となっています。

・第一工場(塩尻市・旧楢川中学校):塩尻市奈良井1037-3(丸太から単板を製造)

・第二工場(木曽町・旧上田小学校):木曽郡木曽町新開1942(単板から合板・内装材加工を行う)

木曽森林グランドサイクル構想とは

このプロジェクトは、「木曽森林グランドサイクル構想」という大きな構想の中心的な事業として位置づけられています。この構想は、木曽地域が持つ豊かな森林資源を活用し、循環型の経済システムを作り上げることを目標としています。

竹中工務店が提唱する「森林グランドサイクル」という考え方では、森林資源と地域経済が持続可能な形で循環していく仕組みを目指しています。この実現に向けて、同社は林業に携わる事業者や各地の自治体など、さまざまな関係者と協力を進めてきました。

森と都市をつなぐ資源循環の仕組み

木材に関する新しい技術によって、森林資源が建設市場で広く使われるようになれば、経済と資源がより活発に循環することが期待できます。林産地を中心にこうした好循環が生まれることで、都市はよりサステナブルな構造へと変わっていくでしょう。また、木材への需要が高まることで、林業の復活や森林の再生が促され、富と資源の循環が実現すると考えられています。

「木曽森林グランドサイクル構想」は、こうした理念を、豊富な森林資源を持つ長野県木曽地域において実際の形にしていく取り組みです。小径木や使われていない材木を、価値の高い建材へと変えていく流れを作り出し、森林の健全な再生、地域経済の活性化、地域で採れる材木の活用を同時に進めていきます。

各社の参画目的

このプロジェクトに参画する各社は、それぞれ異なる目的を持っています。

Tree to Greenは、木曽地域を中心とした森林や木材、木工産業への貢献を目指しています。ソルトターミナルは、森林資源や雇用の機会といった地域が抱える課題に取り組むことを促進することを目的としています。

竹中工務店は、森林グランドサイクルを推進することで地域を活性化させ、森林資源を有効に活用して高い価値を生み出すことを狙っています。丹青社は、商業施設などの人々が交流する空間において内装の木質化を進めること、そして社内外に環境への意識を高める機会を作り出すことを目的としています。

プロジェクトの特徴と意義

「(仮称)シンゴーハン」プロジェクトは、木曽から都市へと木材が流通していく出発点となり、森と都市が持続可能な形でつながるモデルを実際に形にすることを目指しています。

これまで、直径の小さい小径木は有効に活用することが難しいとされてきました。しかし、このプロジェクトでは、そうした小径木を建築や内装、家具などに使える高い品質の合板へと再生します。これにより、木曽地域における森林資源の新しい価値を創り出し、地域経済の活性化につなげることを目標としています。

これからの計画

2026年秋に第一工場と第二工場を本格的に稼働させることを目標に、現在は施設の改修作業と製造ラインの設計が進められています。各社は今後も、それぞれが持つ専門的な知識やネットワークを活かしながら、自社のプロジェクトや関係する企業への導入を通じて、「森林グランドサイクル」の考え方に基づいた建材の普及と実用化を推進していく予定です。

なお、第一工場となる旧楢川中学校については、合板工場としての機能だけでなく、林業や木工などに関わる企業や人々が交流し、新しいアイデアを生み出す「森林ハブ拠点」とすることも計画されています。この取り組みについては、塩尻市、塩尻市森林公社、ソルトターミナル、竹中工務店の間で既に着手されています。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,木曽地域の廃校2校を活用し、合板製造・内装材加工工場を新設~小径木を高付加価値建材に再生する共創プロジェクト「(仮称)シンゴーハン」始動~,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/09/06/