【2025年版】建築設備士の受験資格とは?|学歴・資格・実務経験を徹底解説

「建築設備士」は、空調・給排水・電気など、人が快適に過ごすための設備を設計・調整する国家資格です。ただし受験資格がやや複雑で、「自分は受けられるのか?」「実務経験は何年必要?」と迷う方が多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、2025年最新の受験資格を学歴・資格・実務経験別にわかりやすく解説します。
目次
建築設備士とは?どんな資格?
建築設備士とは、建物に備わる設備、つまり建物の「中身」を設計する専門家です。
建築士が外観や構造を設計するのに対し、建築設備士は「空気」「水」「電気」の通り道を整え、建物全体が快適かつ省エネに動くように設計します。主な担当領域は以下の通りです。
- 空調・換気・給排水・衛生設備
- 照明・電気・通信設備
- 防災・セキュリティ設備
- 省エネ・ZEB(ゼロエネルギービル)設計
建築基準法の第27条にもとづき、設備設計図書の内容確認ができる唯一の資格として有名です。
(出典:e-Gov法令検索「建築基準法」)
また、建築設備の概要から知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください▼
他の建築系資格との違い(2級建築士と比較)
「建築設備士」とよく混同されやすいのが「建築士」という資格です。以下に、2つの資格の比較表をまとめました。(参考として、2級建築士を取り上げました)
比較項目 | 建築設備士 | 2級建築士 |
主な仕事 | 空調・給排水・電気など設備設計 | 建物本体の構造・意匠設計 |
主な対象 | 建物の“内部環境” | 建物の“外観・構造” |
登録機関 | 国土交通大臣登録 | 都道府県知事登録 |
実務要件 | 学歴+実務経験が必要 | 学歴による年数制限あり |
法的根拠 | 建築基準法第27条 | 建築士法第3条 |
つまり、建築設備士は、建物の快適性を担う裏方の専門職という位置付けです。設計士が建物を“形”にすることに対し、設備士はそこに“命を吹き込む”存在です。
(出典:e-Gov法令検索「建築士法」)
試験の概要と日程|建築設備士試験の流れ
受験資格と一緒に確認しておきたいのが、試験の日程です。以下に主なスケジュールをまとめました。
区分 | 試験日 | 合格発表 | 主な内容 |
第一次試験(学科) | 令和7年6月22日(日) | 7月24日(木)予定 | 建築一般・法規・建築設備の知識を問う筆記試験 |
第二次試験(設計製図) | 令和7年8月24日(日) | 11月6日(木)予定 | 建築設備の基本計画・設計製図 |
- インターネット申込受付
令和7年2月25日(火)10:00 ~ 3月14日(金)16:00
- 資格判定(4月上旬〜5月上旬)
学歴・実務経験の内容に基づき審査されます。
- 受験票の発行(5月23日〜)
- 第一次試験(6月22日) → 合格発表(7月24日)
- 第二次試験(8月24日) → 合格発表(11月6日)
- 資格取得(登録は任意)
受験手数料は、36,300円(税込)が必要です。年に1回の開催であるため、手続きで失敗しないように注意してください。
建築設備士の学歴別の受験資格【早見表付き】
建築設備士の受験資格は、「学歴」「資格」「実務経験」の3要素で決まります。
初めて受験を考える人にとっては少し複雑に感じるかもしれませんが、実は以下のように整理するとシンプルです。
- 建築・設備・電気・機械の学科を卒業している人は有利
- 他資格(1級建築士や施工管理技士)を持っている人は実務期間が短縮
- 学歴がない場合でも、長い実務経験で受験可能
以下に、学歴・資格に応じた、実務経験年数をまとめました。
学歴・資格 | 必要な実務経験年数 | 備考 |
大学(建築・電気・機械系)卒 | 2年以上 | 建築設備関連課程が対象 |
短大・高専卒 | 4年以上 | 準学士・専門士を含む |
高校(建築・機械系)卒 | 6年以上 | 職業訓練校併修で短縮可 |
専門学校(4年制・120単位以上) | 2年以上 | 指定科目修了が条件 |
専門学校(2年制・60単位以上) | 4年以上 | 建築・設備系限定 |
一級建築士/1級施工管理技士/電気主任技術者 | 2年以上 | 資格取得後の実務期間 |
実務のみ(無資格) | 9年以上 | 建築設備に関わる実務が必要 |
この表を見れば、「あと何年で受けられるか」がわかります。
(出典:建築技術普及センター「建築設備士試験」)
以下より、それぞれの学歴別に求められる実務経験や注意点を解説します。
大学・短大・高専卒の場合(必要年数・注意点)
大学・短大・高専などで「建築・機械・電気」分野を専攻していれば、建築設備士試験を短期間で受験できます。
学歴 | 必要な実務経験年数 | 注意点 |
大学卒(建築・電気・機械系) | 2年以上 | 指定学科に該当しているか要確認 |
短大・高専卒(同系統) | 4年以上 | 準学士・専門士も対象 |
なお大学卒の方の場合は、指定学科に注意しましょう。「建築学科」「建築設備工学科」「機械工学科」「電気電子工学科」など、建築設備に関連するカリキュラムを修めている学科が対象であり、それ以外の学科の方は対象に含まれません。
専門学校卒(4年制/2年制)の場合
専門学校のなかでも、文部科学省認可の職業実践専門課程や専門士(高度専門士)の資格を取得していれば受験資格があります。
区分 | 修業年数 | 必要実務経験 |
4年制(高度専門士) | 4年以上 | 実務2年以上 |
2年制(専門士) | 2年以上 | 実務4年以上 |
ただし、修業年数と単位数によって必要な実務経験が変わるので注意が必要です。なお、学校によっては「設備設計」科目がなく対象外となる場合があるほか、「デザイン系」「インテリア系」のみでは対象外になることもあるため、事前確認が欠かせません。
高卒+職業訓練校卒の場合
高校卒業後に職業訓練校(公共職業能力開発施設など)で設備・建築系の訓練を受けた場合も受験可能です。
学歴区分 | 必要実務年数 | 備考 |
高卒(建築・機械系) | 6年以上 | 職業訓練未受講の場合 |
高卒+職業訓練校修了 | 4年以上 | 訓練内容が建築設備関係に限る |
また、対象のなるのは「建築設備科」「空調設備施工科」「電気設備施工科」「給排水衛生施工科」です。職業訓練校出身者は、現場経験が豊富な即戦力ですので、設備士資格を取ると設計側にも回れるのでキャリアの幅が広がります。
該当学科一覧・同等と認められる課程とは?
「自分の学科が対象かわからない…」という人向けに、国交省・建築技術教育普及センターが定める該当学科の例を紹介します。
まず、次のような名称の学科を卒業している場合、自動的に受験資格の対象となります。
分野 | 主な学科名 |
建築分野 | 建築科/建築学科/建築工学科/建築設備科/建築設備学科/建築設備工学科/設備工業科/設備システム科/建築設計科/建築設備設計科/建設科(建築コースに限る)/建設学科(建築コースに限る)/建設工学科(建築コースに限る) |
機械分野 | 機械科/機械学科/機械工学科/生産機械工学科/精密機械工学科/応用機械工学科/動力機械工学科/機械システム工学科/機械・電気工学科 |
電気・電子分野 | 電気科/電気学科/電気工学科/電子科/電子学科/電子工学科/電気・電子工学科/電気システム工学科/電子システム工学科/電気電子システム工学科/電気・機械工学科/電子・機械工学科/電気通信工学科/電子通信工学科/通信工学科 |
続いて、履修科目が以下の表に示す主要科目のうち5科目以上一致している場合には、「正規の建築・機械・電気課程と同等」として認定されます。
系統 | 区分 |
建築系 | 建築法規/建築計画/環境工学/構造関連/材料関連/施工/設計・製図/設備/実験・実習 |
機械系 | 力学・熱学/計測・制御/機器・設計/材料・加工/実験・実習 |
電気系 | 基礎理論/物性・材料/回路・制御/機器・電力/実験・実習 |
(出典:建築技術教育普及センター「令和7年建築設備士試験 受験総合案内書」)
受験資格を満たしていない人はどうすればいい?
建築設備士は「すぐに挑戦できない資格」ですが、計画的にキャリアを積めば確実に近づけます。
ここでは、必要な実務経験を積むための職種・会社選びのコツや、未経験から資格を取るまでのステップを紹介します。
必要な実務経験を積むためのおすすめ職種
建築設備士の受験では、建築・電気・機械いずれかの「設備設計・施工・管理」に関する実務が対象となります。そのため、以下のような職種・会社で経験を積むのが近道です。
職種 | 主な仕事内容 | 経験がカウントされる理由 |
設備設計職 | 建物の空調・給排水・電気設備などの設計 | 設備の計画・設計経験が直接的に関連 |
施工管理職(建築・設備) | 工事現場での設備施工や品質・安全管理 | 設備施工・監理の実務として認められる |
設備保守・メンテナンス職 | 空調・電気・給排水設備の点検や修繕 | 実際に設備に関わる管理業務が対象 |
建設コンサルタント・設計事務所 | 設備計画や設計補助など | 建築設備分野の企画・設計経験としてカウント |
ゼネコン・サブコン(設備工事会社) | 設備設計から施工・保守まで一貫対応 | 設備関連の幅広い経験が積める環境 |
特に重要なのが、「設備」に関わる仕事であることです。書類で実務経験を証明できるよう、担当業務・期間を記録しておきましょう。
未経験から資格を目指すステップ
「まだ業界経験がない」「建築と関係のない職種から挑戦したい」という人でも、以下の3ステップで受験資格まで到達可能です。
- 関連学科で基礎知識を学ぶ
・建築・電気・機械系の専門学校や通信制大学で必要な単位を取得
- 設備系の会社で実務経験を積む
設備設計事務所、施工管理会社、ビル管理会社などに就職・転職
- 資格取得を目指して学習スタートする
実務を積みながら、建築設備士の専門学校・通信講座で試験対策を進める
建築設備士は知識+実務経験の両方が求められる専門資格ですが、未経験でも正しい方向でキャリアを積めば、3〜5年ほどで受験資格を得られるケースも多いです。
「今どの段階にいるか」を把握しながら、学歴・実務・学習をバランスよく積み上げていきましょう。
また、建築設備設計の業務で経験を積みたい人は、以下の記事で成功のコツを抑えておくと安心です▼
建築設備士の受験資格についてよくある質問【FAQ】
建築設備士と2級建築士、どちらが難しい?
試験の範囲と難易度は異なりますが、合格率は建築設備士の方がやや低めです。設備の専門知識に加え、建築全般の理解も必要なため、総合力が求められます。
実務経験がないと受験できないの?
建築設備士は一定の実務経験が必須です。ただし、資格や学歴により必要年数が短縮される特例があります。未経験の人は設備関連職で経験を積むのが近道です。
学歴証明書や証明書類はどうやって取得する?
最終学歴の学校に卒業証明書や成績証明書の発行を依頼します。郵送でも手続き可能です。実務経験証明は勤務先の証明書が必要なので、退職前に準備しておくと安心です。
建築設備の確認申請に設備士資格は必要?
確認申請には必ずしも必要ありません。ただし、設備設計の内容確認や法適合性を担保する役割として、建築設備士の資格があれば信頼性・専門性が大きく向上します。
建築業界で一番難しい資格は?
一般的に1級建築士が最難関とされています。幅広い知識と実務経験、製図スキルが必要です。建築設備士はその次に位置し、専門分野での高度な実務力が問われます。
まとめ
建築設備士は、建築と設備の両方を理解し、建物の安全性・快適性を支える専門資格です。
受験資格のハードルはやや高いものの、一度取得すれば生涯活かせる“国家資格”**として強力なキャリア資産になります。
資格を取るまでに時間はかかりますが、計画的に実務を積み、早めに勉強を始めれば着実に合格に近づけるため、この機会に翌年の資格試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。