TOKYO CROSS PARK構想とは|ビル群建て替え ゼネコン清水建設の新技術も解説

トレンドワード:TOKYO CROSS PARK構想(内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業)

「TOKYO CROSS PARK構想」は、築50年を迎えるビル群の建て替えを行う大規模プロジェクトです。日比谷公園に隣接するエリアで、帝国ホテル、NTT日比谷ビル、みずほ銀行、東京電力などの老朽化したビルが再整備されます。

この記事では、「TOKYO CROSS PARK構想」3街区の詳細や、プロジェクトのポイント、工事を手掛ける清水建設が開発した新しい解体工法について解説します。

TOKYO CROSS PARK構想とは|事業概要

出典:PR TIMES,都心最大級延床約110万㎡、日比谷公園と一体となった比類なき街づくり「TOKYO CROSS PARK構想」を発表,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000098559.html,参照日2025.10.06

ここからは、「TOKYO CROSS PARK構想」の事業概要について、本プロジェクトの公式サイトや、千代田区の資料等からわかりやすくご紹介します。

所在地

出典:PR TIMES,都心最大級延床約110万㎡、日比谷公園と一体となった比類なき街づくり「TOKYO CROSS PARK構想」を発表,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000098559.html,参照日2025.10.06

「TOKYO CROSS PARK構想」の所在地は、東京都千代田区内幸町一丁目1000番 他です。具体的には、日比谷通りと日比谷公園に挟まれた約6.5haのエリアです。本エリアは大手町、銀座、新橋などの中心に位置し、都心の主要拠点とつながる重要な地域であることから、駅・まち・公園が一体となったまちづくりを目指しています。

「TOKYO CROSS PARK構想」では、開発地区を北地区・中地区・南地区の3街区に分割し、それぞれの地区で複合ビルの建設が計画されています。さらに、3つの街区をすべて地上・地下で接続し、エリア全体の回遊性を向上させる歩行者ネットワークの形成を行います。

「TOKYO CROSS PARK構想」3街区の構造・規模

出典:PR TIMES,都心最大級延床約110万㎡、日比谷公園と一体となった比類なき街づくり「TOKYO CROSS PARK構想」を発表,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000098559.html,参照日2025.10.06

「TOKYO CROSS PARK構想」の建物の構造は、以下をご参照ください。

建物構造
北地区
新本館
地上29階(高さ約145m)、地下4階
北地区
ノースタワー
地上46階(高さ約230m)、地下4階
中地区
セントラルタワー
地上46階(高さ約230m)、地下6階
南地区
サウスタワー
地上 鉄骨造、地下 鉄骨鉄筋コンクリート造
地上43階(高さ約230m)、地下5階

北地区

出典:千代田区ホームページ,内幸町一丁目街区 概要,
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/26246/hibiyachiku-siryo4.pdf,参照日2025.10.06

北地区は、帝国ホテル 本館(築50年)、帝国ホテルインペリアルタワー(築37年)が解体され、新本館とノースタワーが建設されます。ノースタワーでは、オフィス・住宅などの賃貸施設、新本館では帝国ホテルの客室やレストランが整備されます。

中地区

出典:地方創生2.0,内幸町一丁目北特定街区 内幸町一丁目北地区再開発等促進区を定める地区計画 都市計画(素案)の概要,https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyotoshisaisei/dai19/siryou1.pdf,参照日2025.10.06

中地区は、NTT日比谷ビル(築58年)、日比谷U-1ビル(築35年)が解体となり、セントラルタワーが建設されます。セントラルタワーには帝国ホテルの大型宴会場が設置されるほか、100室規模のスモールラグジュアリータイプのホテルとして、新ブランドのホテルが開業します。

南地区

出典:第一生命,「内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業」着工,
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2025_002.pdf,参照日2025.10.06

南地区は、みずほ銀行 内幸町本部ビル(築39年)、東京電力 本社ビル(築48年)が解体され、サウスタワーが建設されます。サウスタワーには、ウェルビーイングをテーマにしたホテルが開業します。

面積

主な面積は、以下をご参照ください。

  • 敷地面積:約6.5ha
  • 延床面積:約110万㎡

竣工予定日

竣工予定日は、以下の通りです。

  • 着工日:2022年
  • 第一期完成:2030年度
  • 全体完成、街びらき:2037年以降

2022年から中地区と南地区の解体、2023年からは新築の着工が進められています。北地区は2024年から解体着手となり、2026年から新築着工予定です。

北地区のタワー、中地区、南地区とも、2030年に竣工予定ですが、北地区の新本館の解体着工は2031年から、全体完成は2037年の予定となっています。

ゼネコン|清水建設

「TOKYO CROSS PARK構想」で施工を担当するのは、清水建設です。開発事業者は10社の共同で、NTTアーバンソリューションズ、公共建物、第一生命、中央日本土地建物、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力ホールディングス、NTT、NTT東日本、三井不動産となっています。

マスターデザインは、ロンドンを中心に活躍する建築設計と研究者のグループ「PLP アーキテクチャー」が行います。また、都市計画・基本計画などは、日建設計となっています。

「TOKYO CROSS PARK構想」のポイント

「TOKYO CROSS PARK構想」は、「日比谷公園と街をつなぐ」、「都心の主要拠点との結節点」、「事業者10社の共創」の3つの「クロス」を実現するプロジェクトです。ここからは、本プロジェクトの特徴となる3つのポイントを見ていきましょう。

①都心最大級のスマートシティプロジェクト

出典:PR TIMES,都心最大級延床約110万㎡、日比谷公園と一体となった比類なき街づくり「TOKYO CROSS PARK構想」を発表,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000098559.html,参照日2025.10.06

「TOKYO CROSS PARK構想」は、総延床面積約110万㎡と、都心最大級の規模となる大規模再開発事業です。主な施設は、ホテル、オフィス、商業施設となりますが、一部にウェルネス促進施設や賃貸住宅も整備され、スマートシティとしての機能も充実する計画です。

また、北地区、中地区、南地区のそれぞれが道路上空公園や地下通路で接続され、一体化した歩行者ネットワークを形成します。

②事業者10社が共創するまちづくり

「TOKYO CROSS PARK構想」は、次の10社の事業者が共創するまちづくりプロジェクトです。10社それぞれが持つ強みを活かし、持続可能な次世代のスマートシティづくりを目指します。

事業者特徴
NTTアーバンソリューションズ街のデジタル化を進める
公共建物快適な空間の提供
第一生命QOL向上に貢献
中央日本土地建物持続可能な未来の共創
帝国ホテル「おもてなし」の追求
東京センチュリー新しい金融・サービスの創出
東京電力ホールディングス安心・快適なエネルギーの提供
NTTDXによる課題解決
NTT東日本ICTサービスの提供
三井不動産人が主役の街づくり

③マスターデザインはロンドンの設計事務所「PLPアーキテクチャー」

出典:PR TIMES,都心最大級延床約110万㎡、日比谷公園と一体となった比類なき街づくり「TOKYO CROSS PARK構想」を発表,
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000098559.html,参照日2025.10.06

「TOKYO CROSS PARK構想」のマスターデザインは、ロンドンの設計事務所「PLPアーキテクチャー」が担当します。PLPアーキテクチャーは、世界43か国から建築家や学術研究者など多様な人材が集まった設計事務所で、ロンドン、シンガポール、東京の3つの拠点で展開されています。

メンバーの約60%が女性やマイノリティであり、ダイバーシティの推進にも積極的に取り組んでいます。これまで世界中の大規模建築物を手掛けてきたPLPアーキテクチャーにとって、「TOKYO CROSS PARK構想」は日本初となるプロジェクトです。

出典:PR TIMES,都心最大級延床約110万㎡、日比谷公園と一体となった比類なき街づくり「TOKYO CROSS PARK構想」を発表,
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000098559.html,参照日2025.10.06

PLPアーキテクチャーのデザインテーマは、「生命中心のまちづくり」です。日比谷公園の緑をつなげる形で広大な道路上公園を整備し、多様なパブリックスペースを配置することで、人が主役のまちづくりを目指します。

清水建設の新しいブロック解体工法「グリーンサイクルデモリッション」

「TOKYO CROSS PARK構想」には、清水建設が開発した新しいブロック解体工法「グリーンサイクルデモリッション」が採用されています。グリーンサイクルデモリッションは、これまでのブロック解体工法に最新のデジタル技術を取り入れた工法で、作業時間の短縮やCO2排出量の削減を実現しています。

「グリーンサイクルデモリッション」はこれまでの工法と比べて安全性が高く、周辺環境への負荷となる騒音や粉じんなども抑えられることから、環境配慮型の工法として活用されています。ここからは、「グリーンサイクルデモリッション」に使われている最新技術についてご紹介します。

自動プラズマ切断装置「シミズプラズマカッター」で作業時間を3割削減

出典:清水建設株式会社,超高層ビルの環境配慮型解体工法を開発・実用化,
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023051.html,参照日2025.10.06

「グリーンサイクルデモリッション」では、自動プラズマ切断装置「シミズプラズマカッター」を使用して、鉄骨の先行切断を行います。鉄骨にあらかじめ切り込みを入れておくことで、作業員による最終切断の作業時間を最小限にし、生産性向上を実現しています。

プラズマカッターは高温プラズマを使用するため切断スピードが速く、これまでのガス切断と比べて作業時間を3割削減できます。また、プラズマカッターは200V電源で使用できることから、ガス切断のためのガスボンベが不要です。具体的には、切断機ユニットをセットし、タブレット端末で操作するだけで自動切断が可能です。

ARシステム「Shimz AR Eye」で鉄骨の切断箇所をカメラで確認

出典:清水建設株式会社,超高層ビルの環境配慮型解体工法を開発・実用化,
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023051.html,参照日2025.10.06

「グリーンサイクルデモリッション」では、鉄骨切断箇所をタブレット端末で確認できるARシステム「Shimz AR Eye」を使用します。

タブレット端末のカメラで切断箇所を写すと、あらかじめ用意していたBIMデータが投影され、切断箇所を可視化できるようになります。こうして、鉄骨の切断箇所を目で見て確認できるようになることから、切断作業の効率化につながっています。

点群データ・少水量型超高圧ウォータージェット・墨出しロボットで生産性向上

出典:清水建設株式会社,超高層ビルの環境配慮型解体工法を開発・実用化,
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023051.html,参照日2025.10.06

現地調査や施工計画では、点群データとBIMデータによるAR表示を行い、タブレットでよりリアルな奥行方向の確認ができるようになります。

出典:清水建設株式会社,超高層ビルの環境配慮型解体工法を開発・実用化,https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023051.html,参照日2025.10.06

また、アスベスト除去作業には使用水量を最大1/10まで削減できる少水量型超高圧ウォータージェットシステム「S-Jet」を使用します。

出典:清水建設株式会社,超高層ビルの環境配慮型解体工法を開発・実用化,
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023051.html,参照日2025.10.06

床スラブの切断位置の墨出しは「自動墨出しロボット」で行い、作業時間の短縮と省人化を図っています。

まとめ

「TOKYO CROSS PARK構想」は、日比谷公園隣接の広大なエリアで、都心最大級のスマートシティの実現と、周辺地域の拠点としての整備を目指す大規模プロジェクトです。マスターデザインは本件が日本初プロジェクトとなるロンドンの設計事務所が担当し、人が主役のまちづくりをテーマにしています。

全体完成と街びらきは、2037年以降の予定です。豊かな自然を内包するスマートシティが都心をどのように変化させていくのか、注目していきましょう。