【2025年最新版】建築士事務所協会とは?建築士会との違い・会員メリットまで徹底解説

建築士事務所協会は、全国の建築設計事務所が集まる専門団体であり、業務の信頼性向上や法令対応、技術者の支援を行う建築業界の裏方です。では、加入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
この記事では、建築士事務所協会の概要や他団体との立ち位置、会員になるメリットまでわかりやすく解説します。
目次
建築士事務所協会とは?基本概要をわかりやすく解説
建築士事務所協会は、建築士法にもとづいて都道府県知事の登録を受けた建築設計事務所が加入できる団体です。
(出典:e-Gov法令検索「建築士法」)
建築物の設計・監理に関わる業務の質を高めるために、法令順守・技術向上・社会的信用の確立や情報発信を実施している団体になります。
なお、建築士法について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください▼
建築士事務所協会の役割と目的
建築士事務所協会の目的を一言で表すなら「建築士事務所が安心して正しい設計業務を行えるように支援すること」です。以下に、具体的な活動内容をまとめました。
- 建築士法・建築基準法・省エネ法などの法改正情報を提供する
- 講習・研修会を開催している
(管理建築士講習、省エネ講習、技術セミナーなど) - 建築士賠償責任保険の加入サポートをしている
- 業務報告書・契約書式などを提供している
- 災害時の被災建築物判定支援・地域貢献活動に取り組む
これらの取り組みを通じて、行政・民間双方から信頼される「建築士のネットワーク」として機能しています。
建築士事務所協会・建築士会・日事連の違い
建築士として働いていると、「建築士会」「建築士事務所協会」「日事連(日本建築士事務所協会連合会)」という似た名称を耳にすることがあります。しかし、それぞれの目的や会員層が次のように違います。
- 建築士事務所協会
建築設計事務所単位で登録・法令対応・実務支援を行う団体 - 建築士会
建築士個人のスキルアップ・倫理啓発・地域交流を目的とする団体 - 日事連(日本建築士事務所協会連合会)
全国の建築士事務所協会を束ねる上部組織
つまり、建築士事務所協会は日事連に所属し、建築士会のように個々人への支援ではなく、建築設計事務所向けの支援を提供しているのが特徴です。
なお、建築士事務所協会と、建築士会の違いを詳しくまとめたのが以下の表です。
比較項目 | 建築士会 | 建築士事務所協会 |
会員単位 | 建築士個人 | 建築士事務所(法人・個人事務所) |
主な活動 | 倫理啓発・交流・スキルアップ | 法令対応・業務支援・保険制度 |
主体法令 | 特になし(任意団体) | 建築士法(第23条以降) |
会員特典 | CPD講習・地域活動・会誌 | 登録支援・契約書式・賠償保険・法改正情報 |
所管 | 日本建築士会連合会 | 日本建築士事務所協会連合会(日事連) |
以上より、両者は対立関係ではなく、建築士がより健全に業務を行うための「補完関係」にあります。実際、多くの建築士が両方に加入しています。
(出典:日本建築士事務所協会連合会公式サイト / 日本建築士会連合会公式サイト)
建築士事務所協会・建築士会の両方に加入する人が多い理由
実務上、建築士事務所協会と建築士会の両方に加入している人が大勢います。以下にその理由をまとめました。
- 建築士会でスキルアップ・人脈形成ができる
- 建築士事務所協会で業務支援・法令対応が受けられる
- 「信頼力」が上がる
まず、建築士会に所属すれば、若手・ベテラン問わず、CPD(継続職能開発制度)やセミナーを通じて知識を更新できます。対して、建築士事務所協会では建築士法・省エネ法・改正建築基準法など、行政連携情報を最速で入手可能です。
それぞれ役割の異なる団体であるため、それぞれに加入している人が多いイメージです。特に法人事務所の場合は、協会加入が業務受託時の安心材料になります。
建築士事務所協会の会員制度と入会方法
ここでは、建築士事務所協会への入会を希望している人向けに、会員制度の概要と入会の方法を解説します。
※説明情報の統一のため、以下からの情報は、福岡県建築士事務所協会に記載の情報もとにしております。
会員種別(正会員・準会員)の違い
建築士事務所協会には、会員種別として「正会員」「準会員」の2種類があります。以下に、種別の違いを整理しました。
会員区分 | 対象 | 主な資格条件 | 入会金 | 年会費 (福岡県例) | 主な特典 |
正会員 | 建築士事務所の代表者 | 建築士事務所登録済みであること | 30,000円 | 50,400円〜57,600円(所属建築士数により変動) | 法定団体会員としての社会的信頼、各種保険利用、講習割引 |
準会員 | 若手事務所・構造/設備設計事務所 | 登録済みで、50歳未満の若手または専門分野事務所 | 免除 | 13,200円 | 入会金免除・講習参加・情報提供・将来的な正会員への昇格制度あり |
参考:福岡県建築士事務所協会「ご入会について」
また、入会後には以下のような「会員特典」が受けられます。
- 協会主催講習・研修の受講料割引
- 日事連機関誌「日事連」・県協会誌「建築福岡Quarterly」の定期配布
- 建築士賠償責任保険や業務災害補償制度への加入優遇
- 名刺・看板等への「建築士事務所協会会員」表記可(信頼の証)
特に、正会員になると、「法定団体所属事務所」として建築主や行政からの信頼度が大きく高まります。
入会手続き・必要書類・審査の流れ
入会の流れは都道府県によって若干異なりますが、一般的な手続きは以下の通りです。
- 入会申込書の提出
協会HPから申込書をダウンロードし、必要事項を記入。
地域会・支部の事務局宛に郵送または持参。
- 推薦者の署名・押印(正会員の場合)
すでに所属している会員の推薦を1名得る必要がある。
※福岡県では必須項目。
- 審査・承認
協会理事会などの審査を経て、入会が正式に承認される。
- 請求書送付・年会費の納入
承認後に請求書と振込用紙が送られてくる。
会費を納付することで会員資格が発効される。
- 会員証・ステッカーの交付
入会後、会員証や会員標識ステッカー、バッジが交付される。
「信頼の証」として名刺や事務所看板にも掲示可能。
会費の目安と支払い方法(都道府県別の事例)
会費は協会ごとに異なりますが、一般的には「所属する建築士の人数」「会員区分」に応じて設定されます。たとえば、福岡県の例では以下のような体系です。
所属建築士数 | 年会費(税込) | 入会金 | 備考 |
1名 | 50,400円 | 通常30,000円 (キャンペーン中10,000円) | 年度:4月〜翌年3月 |
2〜4名 | 54,000円 | 同上 | 会員推薦者1名が必要 |
5名以上 | 57,600円 | 同上 | 建築士数に応じ変動 |
準会員 | 13,200円 | 免除 | 2年試行後の昇格時も免除 |
なお、支払いは、原則として年1回の口座振込方式です。一部の協会では、年度途中入会の場合は月割計算で対応しており、4月1日現在の登録建築士数を基準に年会費を決定しています。
建築士事務所協会に加入するメリット
建築士事務所協会に加入すれば、設計事務所は次のようなメリットを得られます。
【メリット1】業務支援・法改正情報の共有
建築士事務所協会では、建築士法改正や省エネ基準などの最新情報がいち早く共有されます。
国交省や自治体からの通知も迅速に届けられるため、法令対応の遅れを防げるのがメリットです。また、会員限定の業務マニュアルや書式データも入手可能で、設計業務の効率化にもつながります。
【メリット2】講習会・セミナー・CPD制度の活用
建築士事務所協会では、管理建築士講習や耐震診断、省エネ講習など、業務に直結するセミナーを多数開催しています。
受講料の割引や参加補助もあり、CPD(継続職能開発)制度に対応しているのが魅力です。スキルアップと資格維持を両立できるため、建築士にとって最適な学びの場として役立ちます。
【メリット3】賠償責任保険や相談制度などの安心サポート
建築士事務所協会が提供する、会員限定の「建築士事務所賠償責任保険」では、団体割引により個人加入よりも安価で手厚い補償が受けられます。
たとえば、弁護士による無料相談や苦情対応制度も整備されており、トラブル発生時も安心です。業務リスクを最小限に抑える仕組みが整っています。
【メリット4】社会的信用・取引先からの信頼性向上
建築士法に定められた法定団体の会員になれば、発注者や自治体からの信頼を高められます。
たとえば、名刺や看板に「建築士事務所協会会員」と明記できるため、事務所のブランド価値と社会的ステータスの向上を見込めるでしょう。
【メリット5】地域建築相談・復旧支援など社会貢献活動も
建築士事務所協会では、一般市民向けの建築相談会や耐震診断の支援、災害時の被災建物判定などを実施しています。
地域に根ざした活動に参加すれば、イベントや復旧支援などを通じて、建築士の社会的責任を果たすことが可能です。このような活動が将来的な、人手不足の解消や社会的知名度の向上につながるかもしれません。
全国の建築士事務所協会エリア一覧
建築士事務所協会は、全国47都道府県に支部があり、それぞれ地域の建築士事務所を支援しています。以下に、各エリアごとの一覧表を整理しました。
ブロック | 対応都道府県・協会名 | 連絡先の例 |
北海道・東北ブロック | 北海道/青森県/岩手県/宮城県/秋田県/山形県/福島県 各建築士事務所協会 | 北海道建築士事務所協会:011-788-7650/hokkaido@do-kjk.or.jp |
関東・甲信越ブロック | 茨城県/栃木県/群馬県/埼玉県/千葉県/東京都/神奈川県/新潟県/長野県/山梨県 各建築士事務所協会 | 東京都建築士事務所協会:03-3203-2601/jimu1@taaf.or.jp |
東海・北陸ブロック | 富山県/石川県/福井県/岐阜県/静岡県/愛知県/三重県 各建築士事務所協会 | 愛知県建築士事務所協会:052-201-0500/jimkyo@aichi-jimkyo.or.jp |
近畿ブロック | 滋賀県/京都府/大阪府/兵庫県/奈良県/和歌山県 各建築士事務所協会 | 大阪府建築士事務所協会:06-6946-7065/jtc@oaaf.or.jp |
中国・四国ブロック | 鳥取県/島根県/岡山県/広島県/山口県/徳島県/香川県/愛媛県/高知県 各建築士事務所協会 | 広島県建築士事務所協会:082-221-0600/info@h-aaa.jp |
九州・沖縄ブロック | 福岡県/佐賀県/長崎県/熊本県/大分県/宮崎県/鹿児島県/沖縄県 各建築士事務所協会 | 福岡県建築士事務所協会:092-473-7673/fukuokjk@violin.ocn.ne.jp |
出典:日本建築士事務所協会連合会「入会のご案内パンフレット」
なお、入会を希望する際には、所属地域の協会に直接申し込みするのが一般的です。エリアごとに公式サイトが用意されているため、まずは対象エリアのサイト情報をチェックしてみてください。
建築士事務所協会で活用できる主な支援制度一覧
以下に、建築士事務所協会(日事連)で利用できる支援内容を一覧表に整理しました。
制度・サービス名 | 概要 |
建築士事務所賠償責任保険 | 設計・監理業務に伴う損害賠償リスクを補償 |
業務災害補償制度 | 業務中の災害・事故などに対応する補償制度 |
インスペクション賠償責任保険 | 既存住宅状況調査業務に特化した保険 |
休業補償制度 | 病気やケガで就業できない期間を補償 |
企業年金基金・団体年金制度 | 中小事務所でも加入可能な年金制度 |
JAAF-MSTツール提供 | 業務報酬算定・プロジェクト管理支援ツール |
講習・研修支援制度 | 各種法定講習・技術セミナーを定期開催 |
行政連携・情報提供 | 国交省・自治体との連携による最新情報発信 |
上記の支援は、個人事務所から中堅設計事務所まで、規模を問わず活用可能です。法改正対応、CPD制度、各種補償をワンストップで完結できるため、上記のサポートが必要なら会員として入会するのがおすすめです。
建築士事務所協会についてよくある質問【FAQ】
建築士事務所協会に入会しないといけない?
入会は義務ではありませんが、加入することで法改正情報・講習・保険など多くの支援を受けられます。特に事務所経営やリスク管理の面で安心が得られるため、多くの建築士が加入しています。
建築士会との両方に所属しても問題ない?
問題ありません。建築士会は「個人の研鑽・交流」を目的とし、事務所協会は「法人としての業務支援・保険・行政連携」が中心です。両方に加入することで、より幅広い活動と学びが可能になります。
業務報告書を提出しないと罰則はある?
建築士法第23条の7に基づき、業務報告書の未提出には指導や罰則が科される可能性があります。協会では提出方法や様式の相談に応じており、手続きミスを防ぐサポートも行っています。
入会には資格や実績が必要?
登録済みの建築士事務所であることが前提ですが、設立間もない事務所でも加入可能です。若手や構造・設備事務所向けの「準会員制度」もあり、キャリア段階に応じた支援が受けられます。
退会・更新の手続き方法は?
退会や会員更新は、所属支部の事務局に書面で申請します。更新時には所属建築士数に応じた年会費が必要です。退会後も再入会可能で、会費の月割精算にも柔軟に対応しています。
まとめ
建築士事務所協会は、設計事務所の業務支援・情報共有・社会的信用の向上を目的とした専門団体です。入会することで、法改正情報の提供や保険制度、講習会など多面的なサポートを受けられます。
特に独立間もない事務所や若手建築士にとっては、業務基盤を安定させる重要なネットワークとなるため、入会を検討してみてはいかがでしょうか。