大和ハウス工業・リコー・NTTアノードエナジーが次世代太陽電池開発、軽量で設置自由度向上

2025年9月10日、エネルギー技術の分野で大きなニュースが発表されました。株式会社リコー(社長執行役員:大山晃氏)、大和ハウス工業株式会社(代表取締役社長:大友浩嗣氏)、NTTアノードエナジー株式会社(代表取締役社長:岸本照之氏)の3社で構成されるグループが進めているペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた技術開発・実証事業がNEDOのグリーンイノベーション基金に採択されました。
この共同プロジェクトでは、各社が持つ専門技術を組み合わせることで、インクジェット印刷を活用したペロブスカイト太陽電池の製造技術と、その設置・電装に関する技術を同時に開発していきます。太陽電池の製造から建物への設置、電気設備の設計まで一貫して手がけることで、早期の実用化を実現する計画です。
目次
従来の太陽電池では困難だった場所での利用が可能に
現在広く使われているシリコン系太陽電池は重量があるため、耐荷重に制限がある建物や垂直な壁面への設置が困難でした。しかし、軽量で柔軟性のあるペロブスカイト太陽電池なら、こうした場所にも設置できるようになります。これにより、再生可能エネルギーの普及を大幅に促進できる画期的なソリューションの提供が期待されています。
各社の技術力を結集した開発体制
リコーは複合機メーカーとして培ってきた豊富な技術を活用します。具体的には、有機感光体の技術、インクジェットヘッドの技術、インクと供給システムの技術、印刷システム全体の技術、そしてロール・ツー・ロール方式の搬送技術を組み合わせることで、ペロブスカイト太陽電池の性能向上と製造コスト削減を同時に実現します。
インクジェット印刷の採用により、以下のメリットが期待できます。
・高精度なパターン形成が可能
・任意の場所への機能層積層が実現
・デザイン性の向上
・サイズのオーダーメイド対応
これらの特徴により、太陽電池のさらなる普及拡大につながると予想されます。
大和ハウス工業の建築技術による施工開発
大和ハウス工業は住宅建築を中心として、賃貸物件、マンション、商業ビル、産業施設、環境・エネルギー関連設備など、多岐にわたる分野で事業を展開しています。これまでもゼロエネルギービル(ZEB)やゼロエネルギーハウス(ZEH)の普及、太陽光発電システムの設置推進など、再生可能エネルギーの導入拡大に積極的に取り組んできました。
今回の実証実験では、同社がこれまでに蓄積してきた環境配慮型設備の導入ノウハウを生かし、大規模な物流倉庫の屋根部分やデータセンターの外壁などへのペロブスカイト太陽電池設置技術を開発します。様々な建築物に対する最適な設置方法の提案実現を目指しています。
NTTアノードエナジーの電装設計技術
NTTアノードエナジーは60年以上という長期間にわたって太陽光発電システムの導入業務に携わり、電装設計分野で豊富なエンジニアリング技術を蓄積してきました。2023年からはペロブスカイト太陽電池の発電特性測定も開始しており、この分野での知見を深めています。
同社が注目するのは、曲面屋根や壁面への設置時に発生する課題の解決です。不均等な日射条件下では発電量の低下が問題となりますが、これに対してモジュールの配置方法やストリング設計の改良、さらに独自開発のパワーコンディショナの活用による解決を目指しています。
5年間の長期計画で社会実装を目指す
今回の採択決定を受けて、3社は屋根材、外壁材、防水材などの関連部材メーカーとの連携を強化しながら、研究開発の段階から将来の社会実装を想定した計画を進めていきます。
実証事業の期間は2029年度までの5年間を予定しており、ペロブスカイト太陽電池のBIPV(建材一体型太陽光発電)およびBAPV(建物据付型太陽光発電)に向けた技術確立を目標としています。
具体的な目標数値
2030年度には以下の目標達成を掲げています。
・年間製造能力:300MW以上
・発電コスト:14円/kWh
これらの数値目標が達成されれば、ペロブスカイト太陽電池の本格的な商業利用が現実のものとなり、日本の再生可能エネルギー普及に大きく貢献することが期待されます。
今回の3社連携による技術開発は、従来の太陽電池では対応できなかった設置場所での発電を可能にし、日本のエネルギー自給率向上と脱炭素社会実現に向けた重要な一歩となりそうです。
出典情報
大和ハウス工業株式会社リリース,リコー、大和ハウス工業、NTTアノードエナジーのコンソーシアムによるペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた技術開発と実証事業がNEDOのグリーンイノベーション基金に採択,https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20250909142558.html