国土交通省発表、7月建設受注額10兆6千億円、2.5%減で明暗分かれる業界動向

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国土交通省が9月10日に発表した建設工事受注動態統計調査によると、2025年7月の建設業界全体の受注額は10兆6,229億円となり、前年同月と比べて2.5%の減少となりました。前月の増加から再び減少に転じており、業界全体の不安定な状況が続いています。

受注構造を詳しく見ると、元請工事が7兆2,430億円で前年同月比0.4%の微増となった一方、下請工事は3兆3,799億円で同8.2%の大幅減少となりました。元請工事は10か月連続の増加を維持していますが、下請工事は4か月連続の減少となっており、業界内での格差が拡大している状況です。

業種別では明暗が分かれる結果

業種別に分析すると、3つの主要分野で対照的な動きが見られました。

総合工事業については5兆9,878億円で前年同月比10.6%減となり、3か月連続の減少を記録しています。職別工事業も1兆4,017億円で同17.4%減と4か月連続の減少が続いており、これらの分野では厳しい状況が継続しています。

一方、設備工事業は3兆2,334億円で前年同月比29.5%の大幅増加となり、11か月連続の増加を維持しました。この分野での好調さが業界全体の落ち込みを一部相殺している形となっています。

元請受注の内訳と特徴

元請受注7兆2,430億円の内訳を発注者別に見ると、公共機関からの受注が2兆1,631億円で前年同月比2.8%減となり、8か月ぶりの減少となりました。これに対し民間等からの受注は5兆799億円で同1.9%増加し、10か月連続の増加を記録しています。

工事種類別では、土木工事が1兆7,836億円で前年同月比3.2%減となり、前月の増加から再び減少に転じました。建築工事は4兆3,674億円で同7.1%減となり、10か月ぶりの減少を記録しています。

注目すべきは機械装置等工事で、1兆920億円と前年同月比63.0%の大幅な増加を示し、3か月連続の増加となっています。この分野での活況が業界全体を下支えしている状況です。

公共工事の動向分析

公共機関からの受注工事(1件500万円以上)は2兆111億円となり、前年同月比7.7%減で5か月ぶりの減少となりました。

発注機関別では、国の機関からの受注が4,094億円で前年同月比22.2%減と4か月連続の減少となっています。内訳を見ると、国からの受注が2,372億円で28.3%減、政府関連企業等からも1,274億円で22.3%減となっており、国関係の発注抑制が顕著に現れています。

地方の機関からは1兆6,017億円で前年同月比3.1%減となり、7か月ぶりの減少となりました。都道府県からの受注は6,202億円で16.9%増加した一方、市区町村からは7,748億円で14.5%減少しており、地方自治体レベルでも明暗が分かれています。

工事分類別では、「教育・病院」関連が4,154億円で最も多く、「道路工事」の4,070億円、「治山・治水」の2,064億円が続いています。

民間工事の二極化現象

民間等からの受注工事では、建築工事・建築設備工事(1件5億円以上)と土木工事・機械装置等工事(1件500万円以上)で対照的な結果となりました。

建築工事・建築設備工事は1兆1,443億円で前年同月比30.7%の大幅減少となり、10か月ぶりの減少を記録しました。発注者別では、製造業からの受注が2,253億円で43.1%減、不動産業からも3,280億円で28.9%減となっており、主要な発注者からの需要が低迷しています。

これに対し土木工事・機械装置等工事は1兆1,960億円で前年同月比86.3%の大幅増加となり、10か月連続の増加を維持しています。特に電気・ガス・熱供給・水道業からの受注が3,893億円で227.9%増と著しい伸びを見せており、インフラ関連投資の活発化が読み取れます。

今後の展望と課題

7月の統計結果は、建設業界が複雑な状況に直面していることを示しています。設備工事業や機械装置等工事での好調さがある一方で、総合工事業や建築工事では減少傾向が続いており、業界内での二極化が進んでいます。

公共工事の減少と民間工事の明暗が分かれる状況は、今後の業界動向を占う上で重要な指標となりそうです。特に、インフラ投資の増加と建築需要の低迷という構造的な変化が、業界全体の方向性に大きな影響を与える可能性があります。

出典情報

国土交通省リリース,建設工事受注動態統計調査報告(令和 7 年 7 月分)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kakuho2507.pdf