大成建設が単一センサー式建物診断システムを開発、地震後の構造安全性を簡易判定

大成建設株式会社(代表取締役社長:相川善郎)が、革新的な構造安全性評価システムの開発に成功しました。このシステムは、建物の最上階付近に取り付けた単一の加速度計測装置から得られるデータを活用し、地震後の建物の構造健全性を簡易に判定できる画期的な技術です。この新技術は、同社が2019年から提供している構造安全性監視システム「測震ナビ」の製品群に新たに加わったもので、建物の特性や利用目的に応じて、お客様が最も適したシステムを選択できる環境が整いました。

相次ぐ大地震が示す構造安全性診断の重要性

わが国では1995年の阪神・淡路大震災を皮切りに、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、そして2024年の能登半島地震など、深刻な被害をもたらす地震が断続的に発生しています。今後も南海トラフ巨大地震や首都圏直下型地震の発生リスクが指摘される中、災害発生時の迅速な被害評価と復旧作業の効率化が重要な課題となっています。

特に強い揺れを記録した地域では、建物の構造的な安全性を素早く判断することが、その後の復旧計画や避難対策を決定する上で不可欠です。

従来システムの実績と新技術開発の背景

大成建設では、複数の超小型センサー装置を使用して地震時の建物の振動を詳細に計測・解析し、構造安全性を「安全/要点検/危険」の3段階で迅速に判定する監視システム「測震ナビ」を2019年に開発しました。現在までに約225の建物への導入が完了しており(2025年8月現在)、確かな実績を積み上げています。

今回開発された新システムは、従来技術に加えて、より導入しやすいソリューションとして位置付けられています。単一のセンサーを設置するだけで建物の構造安全性を評価できるため、「測震ナビ」の選択肢が大幅に拡がりました。

単一センサー方式の主な特徴

新しいシステムでは、建物上部に設置した1台のセンサーで地震時に観測された加速度データを基に、振動解析モデルを使用して1階部分の揺れを予測計算します。これにより建物全体の傾斜程度(層間変形角)を算出し、事前に設定した判定基準値と照らし合わせて構造安全性を評価します。

センサーから得られた情報は無線通信を通じてクラウドシステムに自動送信されるため、配線作業が一切不要となります。設置作業も数時間程度で完了するため、導入の手軽さが大幅に向上しました。また、従来必要だった地上階部分へのセンサー設置も不要となったため、テナントビルなどでも占有エリア内だけでシステム運用が実現できます。

建物特性に合わせた柔軟な選択

この新システムは、既存の「測震ナビ」と同一のプラットフォーム上で動作するため、運用面での統一性が確保されています。超高層建築を含む大規模建物には従来の高精度システムを適用し、比較的シンプルな構造の中低層建物には、複数センサー方式と比べて精度は若干劣るものの、従来システムとほぼ同等の機能を持つ単一センサー方式を適用するといった使い分けが可能です。

複数の建物を管理するお客様においては、各建物の規模や用途に応じてシステムを選択することで、地震発生後の迅速な構造安全性評価を通じて、事業継続計画の早期策定が実現できます。

第三者機関による技術認定を業界初取得

本システムは、15階建てまでの中低層建物を対象として、第三者機関である一般財団法人日本建築防災協会から「応急危険度判定基準に基づく構造モニタリングシステム技術評価」の認定を受けています。単一センサー構成の監視システムとしては、この評価を取得した初めての事例となります。

今後の展開計画

大成建設では、建物の規模や利用目的、設置環境をはじめ、多数の建物に短期間での導入を希望する場合など、建物所有者の多岐にわたるニーズに対応するため、充実したラインナップを持つ「測震ナビ」の最適な活用方法を積極的に提案していく方針です。

システム概要と技術仕様

加速度センサーについて:

単位時間当たりの速度変化(加速度)を測定する装置で、1軸から3軸タイプまで様々な種類があります。3軸タイプでは建物に発生する振動を立体的に検知することができ、「測震ナビ」では3軸タイプを採用しています。

構造健全性モニタリングシステム「測震ナビ」について:

建物に生じる微細な変形や振動変化まで正確に測定できる超小型の「MEMSセンサー」を建物の複数箇所に配置し、地震発生前後の振動やその変化を高精度で把握・分析することにより、迅速に建物の健全性を評価できる監視システムです。2022年5月に建築防災協会の技術評価を取得済みです。

出典情報

大成建設株式会社リリース,1つのセンサーで建物の構造健全性を簡易に判定できるシステムを開発-「測震ナビ®」のラインナップ拡充により、ニーズに合わせた選択が可能に-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250902_10268.html